オープンワールド14
「つまり、4貴族は、配信元のグループ企業を想像すればいいですね。」
ジオは、日焼けした顔に最高に爽やかな笑顔でそう言うと、サラサラと書き始めた。
成人映画館の話なんてしなきゃよかった(///ー///)
私は、自分の思考回路があまりにも少女漫画してない事にドキドキした。
ジオは、参考書の妖精で、参考書の初めの持ち主も既にオッサンに違いないとは思うけど、汚れを知らない無垢な瞳で一心に書記をしてくれる姿を見ていると、成人映画館の昔話なんてしてしまった自分が恥ずかしくなる。
「そうね( 〃ー〃)うん、たぶん。で、パセリとセイジとタイムは、3人の少女で、ディアーヌの取り巻きなのよ。」
私は照れ隠しと、話を変えたい一心で少女漫画を思い返していた。
悪役令嬢
昭和の少女漫画をモデルにした雰囲気があるけれど、あんなキャラクター、私には記憶が無かった。
パンをくわえた少女が道の角で美少年にぶつかるくらいあり得ない話だわ(-"-;)
良く使われる、昭和の少女漫画の朝のパンシーンも、実在の漫画が始まりでないと言われている。
正確には、パンはくわえていない、のだ。
悪役令嬢と言うのも、昔の漫画をイメージして作られた創作物で、
少なくとも、私の記憶にはない。
勿論、テンプレとして、三角関係
金持ちのお嬢様
一般人の主人公
イケメンヒーロー
が織り成す恋物語と言うのは人気があった。
が、キスすら描くのが大変だった昭和の少女漫画の世界で、お嬢様は気高く、美しく表現されていた。
意地悪は、取り巻き連中が勝手にする事で、主人公とお嬢様は後に友情を育むのが人気だった気がする。
私が、出版社に売りたいのは雰囲気と設定だ。
ターゲットは昭和少女。
売るのはイラスト集
今更、Webで無料で読める私の文章に1000円の値がつくとは思えない。
しかし、いかに電子が人気になろうとも、ネットで画像が流失しようとも、紙に印刷されたイラストと動議にはならない。
イラスト集…昭和レトロな雰囲気の美しい世界を本誌にして、
ある程度売れたら、電子画像を二次使用可能にしてもらい、我々の活動に自由に使わせてもらう。
利用料出世払いのWeb小説アイドルを作るのを目指そうと考えている。
私の狙いはそこにある。
こう設定すれば、イラストレーターは、結構、上のクラスの絵師を指名できる。
勿論、名のある漫画家さんとかには手が届かなくても、退職されて、気持ちに余裕のあるアシスタントさんなどは狙えるのではないか、と、考えている。
うん、小説なんだから、ここは、夢は大きく広げよう。
想像して、少し恥ずかしさが込み上げるなか、大きく深呼吸をした。
剛が生きていた頃、一次選考に通過した。
あのときは、あれが始まりだと…ここから先、もっと上にいけると考えて、読者賞とか、控えめな夢しか語らなかった。
でも、全ては一期一会で、バカにされたって、振り切って大きな夢を語れなきゃ、人生損をすると今は考えている。
少なくとも、批判されるにも、ステイタスがいるのがWeb作家なのだ。
「ディアーヌは、麗しくて気高い少女設定だわ。
しもじもの人間が、何と評価しようと、マリーアントワネットもディアーヌ・ド・ローズマリーも、美しき貴婦人なのよ。
思わず、イラスト集を買いたくなるような!」
と、口走り、少し驚いたように私を見たジオの優しい笑顔にキュンとした。
甘酸っぱい、少女時代がそこで笑っている気がした。そうよ、私、少女だったの!いけるはずなのよ!!
興奮する私に、少し、切なげにジオはこう言った。
「本当に…好きだったのですね、剛さんが。」
しまった…(○_○)!!
ジオの言葉に、現実がよみがえる。
そうだった。ディアーヌは剛の生まれ代わりなんだった…
で、Web小説の主人公は、高確率で記憶を保存したまま転生するんだった…




