プロローグ
赤い頭巾にコス変した私は、なんだか、高級ホテルのようなだだっ広い庭の向こうの西洋の屋形…邸宅?を見つめた。
歩く…遠い一本道を…
「なんか…カウントダウンコンサートに行った事を思い出すわ。」
私は、長く広い一本道を歩きながらボヤいた。
子供になっているせいで、いくら歩いても進まない。
「コンサートですか。素敵ですね。そんなに期待されると、ちょっと照れちゃいますね。」
メフィストは私の背後から明るく答えた。
「期待…どちらかと言うと不安だよ。」
ため息が出る。
我々のバットエンドが『サン・バルテミの惨殺』クラスの惨事だと言われた事を思い出した。
回れ右して後ろ歩きでメフィストを見た。
「ねえ、剛、と、言うかディアーヌ、今の状況はどうなってるの?」
私の質問に、メフィストはにんまりと笑った。
「ご自分で調べてみたらどうでしょう?
我々は、現在、ステルス中ですから、屋敷を調べ放題ですよ。ふふっ、ゲームっぽくなってきましたね。」
「ステルス?」
飛行機にそんなものがあった気がしたけど。
「隠密です。私たちは人間に見えませんから。」
そう言われて、少し、がっかりする。
「じゃあ、剛にも私は見えないのよね。」
ため息と共に切なくなる。
見えないんじゃ、幽霊と一緒だ。
ただ、影で剛を見守るだけなのだ。
「いえ、ちゃんと見つけてもらえますよ。」
メフィストの言葉に、私は止まった。
「どうゆうこと?」
私の質問に、メフィストは歩みを止めて目線を合わせて説明してくれた。
「『準備』を済ませたら、キャラ設定をするからです。ゲームの世界観が出てきたでしょ?」
メフィストの説明に、昔やったゲームを思い出した。
ゲームのアバターで物語を展開するのだろうか?
「う、ん…でも、育成ゲームって、やったことないんだよね。」
素直に不安を伝えた。
昔のゲームは、大体、キャラクターは男女の二拓程度で、細かく好きなキャラなんて作れなかったし、作れても面倒くさかった。
「そんなに心配しなくても…子供だって遊べるのですから。」
と、上品にイケメン笑いを浮かべられても…どうして良いやら。
ああ、ため息が出るけれど、まずは、それはいい。
アバターより面倒くさいのが、脚本…
ゲーム風味、ゲームではない。
元の脚本を書き換えるのだ。
バットエンドの回避…どうしたらいいのか…
『サン・バルテミの惨殺』をディアーヌにさせない事か、サン・バルテミを回避するのか…
もし、サン・バルテミの惨殺をまるまる阻止するとなると…とんでもなく、膨大な情報とキャラが登場する(T-T)
「私…大河を作れるスキルはないよ…」
ああ、華々しいコスチューム時代劇…ルネサンスの…
あーあ、そんなもん、書けないのはわかってる。
予定10万字、少女から、乙女にかわり、初恋に揺れるそんなラブロマンスの話でも、完結できるか心配なのに…
「別に、大河なんて作らなくても…ラブロマンスがあれば、私は、ご機嫌ですよ。」
本当に、嬉しそうに笑っちゃって…他人事の人は良いわよね。
「バットエンドを『サン・バルテミの惨殺』を止めないといけないでしょ(T-T)」
私は、恨めしくなってにらむ。
「別に…良いんじゃ無いでしょうか…」
メフィストは面倒くさそうに答えるけど、作者の私は、心配だわ。
「良くないわよ、読者に嫌われたらやだもん。」
そう、こういう、細かいところまで読者は読む。
作者になると、途中で力尽きてそこまで考えられなくなる。
趣味で書いてるだけだから、時間も資料も足りないし、書くのって…50メートル泳ぐようなものなのだ。
泳げる人は、100mだってゆうゆう泳ぐけれど、素人の我々は、経験不足で最後の5mの息継ぎみたくなって、完結まで上手く行き着けなくなる。
でも、息がどんなに苦しくても、惨殺を放置とかで終わらせたら、絶対、なんか言われる。
創作前にわかるなら、何とかした方が良いんだ。
「まあ、まだ、遊戯前ですよ。まずは、屋敷に行きましょう。それから、考えても遅くないですから。」
気がつくと、屋敷についていた。
正面玄関は、メフィストが進むと、門番が恭しく開け、本当は見えているんじゃないかとビビる私をメフィストは、愉快そうにエスコートをした。
門番は、自分で扉を開け、そして、何をしたのか不思議そうに左右の扉の係りが顔を見合わせていた。




