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一幕 5


美しい朝日に妖精が紫に染まった薄雲のリボンを飾り、男女混声のなんか、上品なコーラスをBGMにセイレンがナレーションする。


〈昔、昔の物語。

妖精が人間の近くに住んでいた時代がありました。

錬金術を研究する先生がいました。

名前をファウスト先生と言います。

獅子亭と呼ばれた宿屋に泊まった先生は激しい光と共にこの世を去りました。

その日、空の境を越えてきた星が直撃したのでした。


天使の間違いで亡くなったファウスト先生の魂を憐れに思った神様は、先生の願いを1つ、叶えて生まれ変われるようにしました。

ファウスト先生は言いました。

「もしも、人生がやり直せるなら、そして、願いが叶うと言うなら、大好きな人と結ばれて幸せな家庭が欲しい。かわいい娘と愛する人と、穏やかに美味しい食事を食べたい。」


神様は、その願いを叶えてくださいました…


ファウスト先生は、貴族として幸せに生まれ変わりました。ただ、1つ、誤算をのぞいては…


ファウスト先生は、魔王の呪いで女の子として生まれたのです。〉




なんだか軽快な音楽と共に、ファウストで剛の生まれかわりのディアーヌの3年の可愛らしいスナップ写真が動画再生で流れてゆく。


「さて、我々も出番ですよ。」

メフィストに肩を叩かれて緊張した。

「剛に…ディアーヌにあえるのねっ。」

ああっ、緊張でドキドキしてきた。


何を話そう?

どうやって声をかけよう?


混乱する私を抱き上げて、メフィストは微笑む。


やっぱり…朝日に白い歯がキラリンって輝くのね。


なんてバカな事を考えた瞬間、気球のバスケットの底が抜けたΣ( ̄□ ̄)!


火星の重力は、地球より少ないんだそうだ。

で、大気が少ないから、抵抗が少なく落っこちる…

が、テラフォーミングのお陰なのか、アストラル界の…私の豊かな創造力のお陰なのか、

ともかく、激しい風に煽られながら、私は、直立姿勢で落ちるメフィストに抱かれ、こちらからもしがみつきながら高速で落ちる。

告白すると、私は、ジェットコースターは苦手である。

特に、直角に落ちるやつは!


なんで、こんなふざけた降り方するんだろう?


文句をぶちかましたいけど、舌を噛むといけないから、歯を食いしばった。


メフィストは、なんかいってるようだけど、聞こえない。


死ぬっ、もう、こわい(>_<。)


下を見る余裕が無かった。こわいから空をみた。


空はすっかり青く輝いていて、なんか、軽快なBGMが意識の遥か上の方で鳴っていた。


昭和の少女アニメのオープニングの様なエレキのイカしたなんばーぁぁ〜


ああ、今なら気絶が出来そうだ。と、思った所で落下速度が遅くなり、軽快なリズムに(おど)るようにメフィストが空を蹴る。


グンと、上昇し、そこで、なんか、衛星画像のような地上をちらりとみた。


不思議と怖くは無かった。

体が上昇していたから。 そして、ゆっくりと速度が落ち、頬に雲が軽くかかって恐怖に体を巡った。


「どうです?素晴らしい眺めでしょ?」

メフィストの声が鮮明に聞こえた。

「ねえ、ねえ、あたな、あなたは羽とか無いの?

私、落下するの?」

泣きそうになりながら聞いた。

メフィストは笑う。

「羽…ですか?でも、火星に着陸は『シオリ糸』で行きたいのではありませんか?」

速度が落ちて話が出来ると、それはそれで怖い。

シオリ糸って、なに?

回らない頭で考える。

「おかしいですね?火星に探査機を着陸させるのに、シオリ糸で雲のように落ちるとか、考えてましたよね?」

メフィストに言われて、昔、そんな事を考えたことを思い出した。


子蜘蛛は、巣立ちのとき、シオリ糸で風に飛びながら遠くへとゆく。


小型の探査機を雲のように飛ばし、着陸させる…そんな妄想をした事を思い出していた。

「そんな、カテ違いな話、今はいいから。」

と、言いながら、自分にもシオリ糸がついているのかと、体を確かめる。

シオリ糸で繋がっていたら、少しは安心な気がした。

「しかたありませんね。じゃ、のりもの呼びますよ。」

メフィストはそう言って、あの宙に浮かぶ電工掲示板を開く。

落下しながら考えることではないけど、わりとメフィスト、使いこなしているな。と、思った。

そして、メフィストはスマホでタクシーを呼ぶように何かを召喚する。


しばらくすると、我々の上空から、ペガサスが飛んできた。


白馬Σ( ̄ー ̄)


「じゃあ、飛び乗りますから。」

メフィストは私を抱いたまま、なんか、下で待っている馬に落ちるようにドッキングした。


「じゃあ、振り落とされないようにつかまっていてくださいよっ。」


「ハイヨッー」

と、威勢良くメフィストが馬に声をかけた。

馬は、穏やかに空をすべるように飛んだ。

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