一幕 2
「ねえ、オープニング、格調高すぎない?
私、昭和の少女アニメ風味がいいんだけど。」
思いきって希望を言ってみた。
メフィストは上から私を見下ろして、肩をすくめる。
「昭和の少女アニメのオープニングですか?」
なんだか、懐疑的に聞かれて、少し不機嫌になる。
「悪い?」
ちょっと、不満げに聞いてみると、メフィストは明るい笑顔で気軽に了承した。
「仕方ないですね。じゃ、やりますか!」
メフィストは、そう言って、回れ右をしながらオーケストラの精霊達に声をかける。
「皆さん、変更来ましたよ!」
その声と共に、メフィストの手にはエレキギターがΣ( ̄□ ̄)!
ビーンって、ちょっとぉ…ロックンロールなお話じゃないわよ。
私は叫びたかった。
が、ドラムが軽快に鳴り響き、曲が始まった。
そして、なすすべも無く1曲聴いた。
それは昭和のアニメソングで、懐かしさと共に、自分の少女アニメの記憶が随分と美化されている事に気がついた。
そう、そうだ、昔のアニソンは、確かに、こんな感じだった…
エレキギターとラッパの、軽快なリズムに主人公の自己紹介の歌詞が踊っていた。
「確かに、そうかもしれないけれど…私は、もう少し、アコースティックな雰囲気のオーブニングがいいのよ。」
私は、上手く説明できない事を歯がゆく感じた。
そう、なんと言うか、私の頭の中のオープニングは、もう少し、ニューミュージックな甘い恋の歌。
ロックンロールではない。
メフィストは、そんな私の顔をマジマジと見つめて、肩をすくめると、再び、バックバンドに声をかける。
「はい、作者さまから変更来ましたよ。次いきまーす。」
と、メフィストが手にしたのはマラカス…
と、同時に、少し太めの風の精霊が、『ウッ、ハッ』と、気合いを入れた。
マンボ?えっ…(°∇°;)
驚きながら、剛の話を思い出していた。
アーコースティックはね、電気を使わない楽器の事だよ。
チャカチャカとリズミカルに踊りながらマラカスを鳴らすメフィストを見ながら、マラカスもアーコースティックなのかな?と、自問した。
って、そこじゃない(>_<。)
そうよ、年と共に美化された少女小説の世界観、これをメフィストと共有してない事、それが心配なんだわ。
唾を飲み込んだ。
これから、長い…剛の青春までの道のりを…上手く描いてゆく事に不安を感じた。
強い緊張を感じる私の目の前で、陽気に踊るメフィストと、ラッパの音が騒がしく耳に届いた。




