プロローグ 2
「ふっ、そのような事、出来るはずがありません!
剛さんは、このワタクシが、依り代に選びし怠惰の化身。
恋などと、この世で一番の面倒事など、出来るはずがないのですっ。」
ベルフェゴールは、断言した…
ベルフェゴール…魔王、7つの大罪の一柱、『怠惰』の悪魔…
その悪魔に…そこまで怠惰を誉められる剛って…
否定も出来ない剛の性格に、この先の執筆活動が…心配になる。
「いいえっ!剛さんは、きっとやり遂げます。
彼の魂は、本来、素直で純粋なのですっ。
幼女を愛し、ビーズ細工を愛し、やるときは、やる魂ですっ。」
うわっ(°∇°;)、言い切っちゃったよ…メフィスト、それは地雷だよ…
私は、剛を信じて失敗した色々を思い出した。
失敗する度に、剛は言った。
『そんな事を言われても…出来ないものは出来ないんだよ。』
キレぎみに言われる度に喧嘩したけれど、剛も嫌だったろうなぁ。
『俺がもう少しまともだったら…』
この口癖が胸をつく。
環境が、全てが違ったら、剛は、剛ではなく、美しく気高く生きて行けるのだろうか?
ふと、少女漫画の気高い王女を思い浮かべた。
でも、私には魅力を感じなかった。
剛は、剛のままで魅力的で、ラノベなら、ささるキャラなのだ。
ダメ人間に育ち、どうしょうもない環境で、でも、素直な欲望と夢を子供のように持っていた。
喧嘩をする度に、雨にうたれるし、フリマに誘うと晴れる。
ハンバーガーを奢ると、雨がやむ。
そこに、人ならざる何かの存在を感じた。
剛は、剛のまま、色々とあっても、なんとか生きていた。
それは、生きづらい世の中で、それでも、何か、善玉と言うものが、この世にある証明みたいに思えた。
バン!
いきなり、テーブルを叩く音がして、ビックリしてスクリーンを見上げた。
ベルフェゴールの、美しい怒りの顔がアップになる。
「それなら、魅せて、証明してごらんなさい! 」
「はい!」
メフィストは、ラーメンの注文でも受けるように、気楽に返事をする。
「出来なかったら、あなたたちの命であがなって貰います!」
「うそっ、なに、あなたたちって!」
私は叫んだ。『たち』って、サラッと私も、仲間に入れられてるじゃん。
嫌よ。全く。
叫ぶ私を知らずに、メフィストは、「かしこまり」とか、気楽に返事をして歌劇『ジャンニスキッキ』を鼻唄で歌う。
もうっ、フェレンツェがどうとか、歌ってる場合じゃないでしょ(T-T)




