攻略メモ5
ジオと私は、なごみの国について話した。
海岸の方面にオリーブ畑、そして、ドングリの林には豚を放し飼いにした。
その林ではトリュフが収穫できる。
何だかんだと豊かな国だと思った。
剛は…きっと、甘やかされて育っているのだろう…
それは嬉しくもあり、ヤレヤレ気分にもさせた。
ファンタジーを描く場合、地球の植物は使わずに現地の植物を考えるのが筋らしいが、テラフォーミングの火星モデルなので、この辺りは結構、自由に作り上げられる。
しかも、21世紀の技術なども、いい感じに混ぜることが可能なのを理解した。
例えば、服飾のデザインが、今風でも、雰囲気が合えば使えるし、遺伝子を組み替えて、トマトと他の野菜が収穫できるような野菜や、トマト味の茄子何て言うのも作れるらしかった。
ただ、10歳推奨の作品にすることと、保護者が解説できるように作らないといけないようだった。
面倒くさいから、遺伝子組み換えとかは触らずに、地理の知識をいれてふんわり作ろうと決めた。
そう、目的は高評価ではなく、剛を幸せに…完結させるのが一番なのだから。
そこまで決める頃には、スタンプが5つ集まり、私は、魔女の帽子をゲットすることが可能になった。
ジオにスタンプカードを渡すと、ジオは笑って私をみた。
「おめでとう。僕も嬉しいよ。これからも宜しくね。」
ジオは、そう言うと謎の光に包まれた。
気がつくと私の手には可愛らしい髪止めのような小さな三角帽子が乗っていた。
『おめでとう。やっと、プロローグに迎えるね。僕は帽子になって、君の側にいるからね。』
そんな声を風に聞いた。
「ジオ…」
なんだか寂しい気持ちで帽子を見つめた。
「おめでとうございます。今日から貴女は魔女見習いに昇格しましたよ。」
メフィストが髪止めの帽子を私につけてくれた。
が、ほろりとしている場合じゃない、ななによ、魔女見習いって…
「ねえ、私、いつ、魔女見習いになったのよっ。」
叫ぶ。昭和の人気テンプレだけど、そう言うのは主人公がなるものだ。
が、メフィストは幸せそうに微笑む。
「おや、約束しているのですよ?貴女は私、メフィストフェレスの使い魔になる事を。」
「いつしたのよ?」
記憶に無かった。が、何となく、そんな事もあった気もする…これだから、中年は嫌だわ。
メフィストは、イラつく私の後頭部から左の腕を回して、私の頭を触りながら、なんだか場違いに甘い声でこう言った。
「ここに来る前の事です。」
メフィストが触ったところに違和感を感じて、自分の頭を触った。
軽くふくれている感じがする。
不安な私の耳元でメフィストが囁く。
「それは悪魔のキス…悪魔と魔女の契約のあかし。」「はぁ?」
なんか、気にくわないが、そう言われると、なんか、そうなんだと思わされる、魔力のようなものを感じた。
混乱する私をメフィストが抱き締めて囁く。
「貴女は…私のもの。」
げっ、耳元に息がかかったよ。
私は、右の耳を軽く触って不機嫌にメフィストを見た。
「ふざけないでよぅ。魔女見習いって、恥ずかしい設定、作者の私に必要?」
ああ、恥ずかしい。
確かに、魔界から少女が人間界を旅する話は、昭和に流行った…
悪戯者の星の妖精や
お転婆な魔女
魔法の国の王女が女王になるための修行をしに来た。
確かに、昭和風味の少女漫画の新作を読みたいとは思ったけれど、自分はあくまで読者ポジションが良い。
「貴女が願ったのですよ。」
メフィストは私を抱き上げて優しげな困り顔で続けた。
「ロリババァになりたいって。」
「は?何よ、その言いぐさ!ロリババァって、失礼ねっ。」
と、叫びあげ、何かが頭の中で引っ掛かる…
確かに、同じような事を…昔、叫んだような気もしてきた。




