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攻略メモ3


ジオグレピア…地理の意味を持つと言う、なんか美少年が私に笑いかける。

少女時代に(まぶ)しく見つめた、あの頃の王子さまのような真っ直ぐな視線で。


嫌だなぁ…(///-///)


「レディ、難しく考えることはないんだよ。

地理(ぼく)は、女の子には人気の無い授業だけど、家事をしていたら、身近なところにそれはあるんだ。」

ジオは、少年らしい話し方で私に笑いかける。

昭和だね…令和(いま)は、女子が家事をするとは限らないんだよ。

でも…そうだとしても、やはり、地理は不人気ジャンルなんだろうな。


不人気ジャンルで執筆している自分にジオを重ねて同情する。


「でも、ここは火星…をモデルに作られた異世界だよ、地球の地理なんて使えないんじゃないの?」

なんだか面倒くさくなる。

同情はするが、今更、大陸とか、コルホーズとか、そんなワードを覚え直すなんて。


「違うよ、テラフォーミングした火星だからこそ、地理の知識が必要なんだ!」

ジオの真っ直ぐで真剣な視線に、少女時代、熱心に読み込んだ漫画を思い出して照れてしまう。

でも、その台詞は眼鏡の科学好きの幼馴染みのキャラのセリフなんだよなぁ。残念。

「いいよぅ〜私、Web小説作家止まりだし、遅筆だから、面倒は飛ばしたいし。誰も気にしないし…」

思わずボヤいた私にジオは、悲しそうな苦笑を返す。

「でも…君は約束してくれたよね?

古本の100円コーナーで僕を見つけて…君は『二人で子供達に夢と知識の身に付く物語をつくろう』って…」

ああ、王子さまの憂い顔…栗色の髪とはちみつ色の瞳。薔薇色の頬…なんか、笑っちゃうくらい可愛らしいわ…

「私、記憶ないわ。」

そう、こんなキャラ、一度も書いたことがない。

「忘れてしまったんだね…君も…僕を買ってくれた彼の様に…」

ジオは、悲しそうに空を見上げる。

なんだろう…星を見つめる彼の横顔に…少女時代を思い出して胸が痛む。

「どう言うこと?」

つい、何とかしてあげたくて聞いてしまう…

ジオは、諦めを含んだ笑顔で話始める。


「君が僕を見つけてくれたのは5年前…君は小説を書きはじめたと、夢を語っていたね?」

「5年前…」

Web小説サイトに登録した頃か…ああ、私もルーキーだった…

頑張れば一万円くらい簡単に稼げるとか考えていたわ…

そして、確かに、なんか、偉そうな夢を見てたわ。

「うん。僕は中学生用の地理の参考書なんだ。」

「あ、思い出した!うん、あった、確かに、なんか買ったよ。」

ああ、思い出してきた。

私の創作活動の目的は金だった。

金が貯められない友人の旅費を稼ぐ。それが目的だった。

で、手っ取り早く人気と金が稼げると噂の人気ジャンル、ハイファンタジーを書こうとした。そんな時、100円の古本の棚で見かけた。中学生の参考書。

確かに、なんか、子供に知識がどうとら…なんて偉そうな事を考えたかもしれない。


「僕はね、ワンコインで学べるシリーズの地理の参考書として生まれたんだ。

安価に、子供達に必要な知識を身に付けられるように、少ないページをやりくりしてね、僕を作ってくださった先生は何度も検討をしてね。

でも、僕を買ってくれた主は、友達とファミレスに行くこずかいが欲しかったんだ。

お母さんから1000円貰って、500円で僕を買って、残りの500円をその為に使う目的で。

別に、僕はね、それで良かったんだ。動機は何でも、地理に興味を持ってくれたら。」


うわぁ…(゜゜;)


なんだろう?自分の昔の行いに塩を塗りたくられてるような気持ちになるのは…


いや、確かに、参考書で貰ったお金の差額がこずかいになる場合、確かに、安い本を選んだ…記憶はあるけれど…でも、私の話じゃ無いわよね?

メフィストを見た。彼は、肩をすくめて私を見る。

「僕はね、伝えたい事が沢山あったんだ。

先生たちの思いがこもった様々な世界について、でもね、主は、一度も僕を開くこともなく、本棚にしまったまま…大人になってしまったんだよ。

そして、主の母親が老人ホームに引っ越すことになって…僕は古本屋に売られたんだ。

だから、君が僕を見つけてくれて、僕を開いてくれたとき、とても、とても、嬉しかったんだ。」

ジオは、切なげに笑った。

ま、眩しい…


ああ、昭和の少女漫画の王子さまって…年老いたいま見ても…笑顔がまぶしいわぁ…


「そう、なんだ。」

ああ、そんな話をされたら、もう、使わないとは言えないわ。

私は、諦めと覚悟を決めた。

「いいわ。ジオ、私に地理を教えて頂戴。」

とはいったものの…剛に会えるのはいつなんだろう(>_<。)

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