TS剛の家庭
つ、剛の家庭(T-T)
ああ、やっと、やっとここまで来た…。
私はうれしくなる。
「ねえ、剛、いつ生まれるの?お母さんは美人?」
はっ( ̄□ ̄;)!!
ああ、ここで、嫌なことを思い出した!
そう、webファンタジーでは、赤ん坊の時から意識があって、前世の記憶もあり、母親のオッパイを…オッサン目線で解説したりするらしい!
あれ、まさか、剛、やるのっ!?
い、嫌よ、気持ち悪い。
それに、生前、色んな誤解をされ、私も幼女が店に来ると、店番剛をからかったりしたけれど…
奴は、結局、綺麗に人生を終えたんだから、死後に、そんなおかしげな役をやらせて剛のプロフィールを汚したくはない。
「現在、3才位でしょうか…とても可愛らしく成長されています。」
メフィストが、あんまりあっさりと、そう言うので悪い力が抜ける。
「さ、3才…」
「何をガッカリしていらっしゃるのですか?
別に、出産なんて、それほど感動的ではありませんよ。むしろ、居なくて正解です。」
メフィストが、あからさまにガッカリしてる。
「何があったの?」
私の質問に、メフィストは底から上がる掲示板の光に怪しく揺れながら、甘えるような切ない顔を私に向けた。
「何かどころか…出産数日前から、お嬢様と剛さんの魂が…騒がしいわ、誕生時には、転生出来なかったお嬢様が暴れるわで、全く、疲れましたよ。」
メフィストは目を閉じて上品に笑った。
剛の誕生日は、明け方近くまで母親が産みの苦しみを味わう事になった。
悪魔大王ベルフェゴールが降臨するんだから、ゴジックロマンな雰囲気の不気味な事が起こり続ける。
激しい雨、大切にしていた皿が割れるなどの小さな不幸…
父親は不在。誕生の床を祝福するはずの祭司は、陣痛が始まった辺りで心臓発作で亡くなった。
享年70才、この世界では大往生である。
祭司が、まに合わない事に使用人は動揺したが、異教徒で、産場の清浄を心配する私からすれば、気にはならないエピソードだ。
剛の誕生は…悪魔的な不幸にみまわれた。
が、明け方には雨も止み、透き通った清らかな朝の風をつれて剛は、この世界で大きな産声をあげた。
「みっちゅ…かぁ…」
あの、webファンタジーのテンプレ展開については考えない事にしよう。
私は込み上げる不快感を飲み込んだ。
TS転生
知り合いのオッサンの…そんなもの、なんで私が書かなきゃならないのか。
「可愛らしい盛りですよね?
剛さん、とても可愛らしいですよ。」
メフィストは嬉しそうに話しかけてくるけれど、私は複雑な気持ちだ。




