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天文単位


それは、地球のようで地球ではなく、海がある、青い火星の姿だった。


「よく分からないけど、凄いね?」

私は、沈み行く美しい太陽を見つめた。

「太陽がオレンジに見えませんか?」

「夕方だから。」

「ここは火星ですよ?」

いちいち、耳元で囁かないで欲しい。

「うるさいなぁ〜確かに、火星の夕日は青いそうだけれど、テラフォームしたんでしょ?」

私は不満だった。全く、夕日も満足に見ていられない。

雲とスレスレくらいまで上った気球から見る空はとても美しいかった。が、小さくなった私には、地上の様子は見えない。


空は青く…鈍い火星の空をここまでスッキリと青く見えるまでには、どれだけ長い年月が掛かるんだろう?


「空が青いのって、フィトンチットが多いからなんでしょ?」

私は、この惑星に植物が溢れて大気が変わって行く様子を思い描いた。

地上は…どんなになっているのだろう?

きっと、深い森が広がっているのだろう。

「空が青いのは、青い光が吸収されずに拡散するからですよ。」

「え?そうだっけ?」

じゃあ、フィトンチットはなんなのよ?ふと、そんな説明を偉そうに私に教えた奴は誰か、思い出そうとした。

「はい。海が青いのも、青の光が吸収されずに水の中を進むから、と、言われています。」

メフィストの説明を聞きながら、地上の様子が見たくなる。


海…火星の海!見たい。

が、下を(のぞ)こうとする前にメフィストに下ろされた。


「仕方ありませんね。地上は後でお見せしますから、太陽について説明を聞いてください。」

と、メフィストに言われて頷く。

「現在、太陽の半径は0.7auです。」

「は?なによ、メートルで言ってくれる?」

auって、勝手に単位を作られても分からない。

「1auは、地球から太陽の距離です。」

メフィストが少し困りながら説明する。

「そんな、勝手に単位を作らないでよ〜auとかさ、なんか、色々、大丈夫なの?」

私は、商標とか、著作権とか、そんなものが心配になる。

「大丈夫もなにも…天文単位ですよ。」

「だからぁ、天文単位とか恥ずかしいなぁ(///-///)これは、SFじゃないのよ?異世界恋愛だから、そんな、科学っぽい単位とか作らなくていいんだよぅ。」

もう、メフィストったら、恥ずかしい。

宇宙世紀とか、天文単位とか、確かに作りたくなるけれど、主に、女性読者の異世界恋愛では、そんな単位、誰も褒めてはくれない。

auとかさ、なんか、絶対に突っ込まれるわ。


メフィストは、そんな私をみて、なんかムカつくヤレヤレ顔をする。

なんなのよ?と、口を尖らせて応戦する。


「それは、人間の偉い人に言ってください。

ついでに、現在の太陽の大きさは、子供達に自然に金星と太陽の距離を記憶してもらうために合わせましたから、児童小説を書いている我々に批判する人間は、我々のユニーク数を見ても皆無だと思いますよ。」

メフィストの偉そうな態度に、なんか、本当に使われてる単位じゃないかって気がしてきた。

マズイ、バカがバレてしまう(^^;)

「じ、じゃあ…金星って、地球と太陽の距離の約7割の位置にあるってこと?」

と、大袈裟(おおげさに)に叫んでごまかしてみる。

「まあ…そう言うことです。メートルより分かりやすいでしょ?ついでに、書きやすい。」

メフィストが優しげに笑いかける。なんか、バカにされたような複雑な気持ちになる。


でも、auなんて、そんな単位、知らない人の方が多いんだから。多分。


と、ここで、嫌な考えが頭に浮かんだ。

金星と太陽の距離=0.7

今見えてる太陽の距離=0.7


って、太陽膨らんでない!?

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