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岩窟王


火星の自転が24時間

ポボスの公転も24時間


すると、火星の地上からみたポボスは止まって見えるの?

動いて見えるの?(-"-;)


太陽は…止まっているから…


あれ?星座って遠くの星だから、火星から見ても、地球から見ても、12しか無いわよね?

火星の一年を24ヶ月にしたら、星座ってどうなるわけ(T-T)?



「どうしましたか?」

必死に土の上に図形を書いて悩む私にメフィストが話しかける。

「どうしよう…このままじゃ、読者に私がおバカだって知られちゃうよ(>_<。)」

涙目になる。全く、人がうまく作れずに放置した設定を、勝手に使わないでほしい。

いや、その前に、webファンタジーって、こんなに面倒だっけ?

なんか、みんな、サクサク書いてる気がするよ〜あれはスキルの違いでそう見えていただけだと言うの?(○_○)!!


と、少年漫画のやられ役のモブのセリフみたいな悪態を心でぼやきながらメフィストを見る。

ヤツは、嫌らしいくらい上から目線で、綺麗な長い指を上品に折り曲げて口元を隠しながら、ムカつくような冷笑を私に浴びせる。

「いいじゃありませんか、web小説家で利口(りこう)だと思われた方が面倒ですよ?可愛いげのある、おバカキャラは理想型と言えるでしょう。」

メフィストは、そう言って私の手を綺麗なハンカチで拭いて立たせてくれた。


(///ー///)なんか、照れるんだよね…


メフィストは、調子に乗ったように綺麗になって行く。

少女漫画の王子さまが、10巻辺りから、物凄く画力が上がる事がある。少女時代、そんな作品の単行本購入サービスポスターを見て背筋がゾクッとしたことを思い出した。

見惚(みと)れる。こんな時の言葉だと思った。

やはり、キャラや俳優は見られてナンボなんだなぁ。なんて考えていると呆れたメフィストが私を椅子へとエスコートする。

それから、自分が膝まづいて私に目線を合わせると、保護者が説教する前の、なんか、難しい顔で私をみた。


「これから物語を始めますが、まず、約束して貰えますか?」

メフィストの真剣な顔に嫌な気持ちになる。

こう言う台詞が、こんな顔で言われる時は、面倒事を押し付けられる時なのだ。

「うん。」

が、これしか言いようがない。

「では、1000円の本を千人に売れる物語を目指してください。」


はあっ(○_○)!!


絶句した。評価すら、ほぼ貰えない私の作品で、千円なんてくれる人が…しかも、赤の他人が、一人でも買ってくれるなんて、あるわけないじゃんか!(いや、一人くらいなら、何とかしたいなぁ)


「無理だよっ、私、頑張って三万字の物語を出したって1円なんだよぅ〜」

ブー垂れた。子供に変身したからか、長い底辺生活にたまったストレスからか、駄々が止まらない。


メフィストは、呆れながら私を見つめる。

「全く、これからの作品、何かのコンテストに投稿するのですよね?」

「そうよ、大会期間に完結させるとPVが爆上がりするんだもん。

あの瞬間を餌に、私、書いているんだもん。

そんな事でもなきゃ、こんな…岩窟王(がんくつおう)みたいな孤独な作業耐えられないわっ。」

私はわめいた。

わめきながら、昔、『岩窟王』という物語を読んだ事を思い出した。


『岩窟王』

『三銃士』で有名な作家デュマの小説で、『モンテクリスト伯』と言う題名でも有名な作品だ。

基本はエドモンと言う主人公の復讐劇なのだが、飛んでもない監獄から脱獄するまでの壮絶な物語に、子供心に恐怖した。

たった一人、孤独に脱獄の道を作り続ける事なんて…私に出来るだろうか、と。

小説の投稿なんて、ほぼ、孤独な作業だ。

いや、誰かと話ながらなんて器用なマネは私には出来ない。

たまに、面倒くさくなったり、リアルに忙しくて投稿が空いてしまうと、ふと、こんな思いが込み上げる。


『私の作品なんて…どうせ読む人なんていないし、日が空いたから、もう、読んでた人も忘れてしまったに違いない。』


こう言う負の感情に包まれながら中途半端な自作を見る瞬間、極悪人にでもなったような気持ちに陥る。

で、気持ちを変えるためにもたまに、何かのイベントに参加する。

はじめの頃は、私の駄作なんて、こんな華やかな場所には似合わないとか、なんとか、悶絶(もんぜつ)したが、一度、完結して…見たこともないようなPVが私に降りかかった時、あの感動的な瞬間に思ったのだ。

やはり、完結は気持ちが良い。



「それ、イベントの趣旨から離れていますよ?」

メフィストの追求がイタイ。

「良いじゃん、参加者は多い方がイベントは盛り上がるんだし、書籍化なんて、本気で狙い続けていたら、辛すぎるんだもん。」

私は叫んだ。

そう、既に5年。いろんな夢を見て、そして、現実が見える位には成長したのだ。


とても悲しいけれど、私の話なんて、三万字で1円の価値なのだ。

それが覆るとしたら、それは私が亡くなって、誰か、読んでくれた人が、お布施がわりに買ってくれる時くらいだろう…

 文学フリマで友人が売る私の本を、物語を愛してくれた誰かが買ってくれる。

『ありがとう』草葉の陰で私はその人にそっと囁くのだ。

その時を思い、涙が出てきた。


「泣いたって駄目ですよ?貴女はこれから、未知の領域、『異世界恋愛』を目指すのですよね?」

メフィストの声が少しだけ優しくなる。

私は涙を拭いてお茶のおかわりをした。

「(そっちの意味で)泣いてなんてないわよ。それに、『異世界恋愛』だからなんだと言うのよ?

結局、どのカテゴリーに行ったって、私の作品じゃ、しれてるのよ。」

涙を見られて、恥ずかしさについ、反抗的になる。

メフィストはため息をついて、私に2番目のケーキを紹介した。


「ティラミス。これを食べて気持ちを落ち着けてください。」


ティラミス…90年代に流行ったイタリアのお菓子で、『私をアゲて!』もしくは『天国へ連れていって』などと言う意味があるそうな。

口に入れると、マスカルポーネの甘さとコーヒーの風味で癒される。


「確かに、うまいわ。」 食べ終わって、落ち着いている自分に気がついた。

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