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ウイリアムテル


ロビンフット…

イギリスの伝説のヒーロー…弓矢の名手だった気がするが…


「ロビンフットって…奥さんいるんじゃなかった?

息子の頭にリンゴを乗せて打つじゃん。」

私は少ない知識のロビンフットを絞り出す。

それを聞いてメフィストが笑い出す。

「それ、ウイリアム・テルじゃないですか?」

「え?ウイリアム・テル?あ、ああ…」

混乱する…ロビンフットって…ウイリアム・テルって…

混乱する私に、メフィストは嬉しそうに解説する。

「どちらも、弓矢の名手で義賊設定の有名人ですが、ウイリアム・テルはスイス、ロビンフットは英国。そして、昔の物語ですから、どちらも生まれてから死ぬまでには色々とありますよ。」

メフィストはあの電工掲示板で検索しながら教えてくれた。


「豆知識をありがとう。序曲が有名なのはウイリアム・テルなのね。あの曲…ロッシーニが書いたんだね。」

私は久しぶりに聞いたロッシーニ『ウイリアム・テル』に、なぜか昭和のテレビを思い出していた。が、そんな場合じゃない!


そうよ、そうだわ。もう、剛を…剛の魂を何とかしなきゃ、私はウイリアム・テルの序曲がおわるジジャーンの音に合わせて話を変える。


「さあ、ウイリアム・テルはもうおしまい。私達の話を始めなきゃ。」

「私…たち…素敵ですね。」

メフィストは少し、照れたように視線を下げる。

地中海を思わせる華やかな青い目を…黒曜石の繊細な彫刻のような長いまつげが縁取る。

一瞬、息をのんだ。


なんか…イケメン化してる


「ねえ、アンタ、ちょっと、イケメンになってない?」

私は心配になって叫んだ。

私はなんか身長が縮むし、メフィストはイケメン化するし…剛はTSだし(>_<)

ベルフェゴールの影響を強く感じる。

が、不安に思ってもいられなかった。メフィストが急にムギッと抱きついてきたからだ。


抱きつかれて…私はまざまざと思い知った。


子供になってる自分を!

「イケメン、そう思ってくれますか?ふふっ。では、このイケメン・メフィストと『私達の物語』をはじめましょう。」

メフィストは嬉しそうに私の耳元で囁いて、私が怒り出す前にサッと、上品に身をはなした。


「その…『私達の物語』って、もしかして、メタの世界にベルフェゴールが君臨していたりするの?」


そうだった…web小説では、異世界の転生者を見守る女神的存在がいる。

剛に憑依出来なかったベルフェゴールは、女神の役におさまった可能性がある。

嫌な予感しかしない。


神的主観(メタ)ですか…ふふっ。随分、web小説にも慣れてきたじゃないですか。」

メフィストに上から目線で評価される…複雑。

が、そんな不満をいってる場合じゃない。

「知らないわ!なに、この世界観!

ベルフェゴール、今、どこよ?私、なんで子供なの?剛はどうなるのよっ(>_<)」

が、結局、不満をぶちまける。

メフィストは、そんな私に優しく笑いかける…

正確には、自分好みの美少女に変身させた私に。


「そんな、泣きそうな顔をしないで…あまりの可憐さに、抱き締めてしまいたくなりますから。」

メフィストは切なげに私に、正確には、美少女の私を見た。


「メフィスト…あんた、ロリコン?」

私が心配になって聞くと、メフィストはクスクスと上品に笑いだした。


その端正な顔立ちに、不覚にもキュン…と、なった。

あの、爽やかな笑いかた…私は昭和の少女漫画を思い出していた。


そう、あの頃のテンプレは…小さな少女と、年配で金持ちの…今風で言うところのスパダリと言うやつが結ばれる。そんな感じだった。

一瞬、見たことの無いセレブの世界に憧れた少女の私を思い出し、引き出物のカップと紅茶を手に夢見た時代にときめいた。


が、ときめいている場合じゃない。

主人公は私じゃない。

この、多分、異世界恋愛ジャンルの主人公は…TS剛なんだから(>_<)


「いえ、今は、貴女のとりこ、です。」

メフィストの台詞に『はっ(゜ロ゜)』とした。


そうよ、馬鹿みたいに喜んでいられないわ。

大体、メフィストフェレスは、あの堅物ファウスト博士をダメ人間にしちゃう悪魔。

コイツの一挙一動(いっきょいちどう)に惑わされてどうするのよ。

そう、ここは、私の空想の世界であって、アストラル界。


私は…結構、無茶をしてこの世界を変えている。


失敗したら…リアルに病んでしまう可能性も否めない…


ほほを叩いて気合いを入れる。

そう、見てくれの優しさに惑わされちゃ、ダメなのよ。

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