第二話 再会 呪文2
私は異世界の平原で3つの画面を見ていた。
スキルオープンというと、なんかひかる画面が飛び出してくる。今の所、私が使える唯一の魔法のようだった。
しかし、この魔法、呪文が違うと少しレベルが違ってくる。
「ねえ、メビ子の魔法って、大画面になるだけなの?」
私は大きなサイズの画面を見ながら不服に言った。
「すごいじゃないですか。60インチサイズですよ。若い頃、街の家電店で見ては憧れていたじゃないですか。」
メフィスト、何で私の過去の行いまで知ってるんだろう。
「憧れてたんじゃなくて、どんな人が買うんだろうって呆れてたんだよ。だって、60インチだよ。こんな大きなテレビ、置ける家なんてお金持ちのお屋敷みたいな所でしょ?」
私は画面を見ながら60インチのテレビの記憶を思い出していた。
「そうでもないですよ?普通のマンションの壁なら何とかなるんじゃないでしょうか?でも、考えてみてください。この呪文を唱えたら、どこでもこの素晴らしい大画面で画像を見られるんですよ?」
メフィストはCMの俳優のように優雅に言う。
「じゃあ、スキルオープンは40インチくらい?」
私は我が家の1番大きいテレビ画面を思い出しながら言った。
「35インチですね。これだと。」
メフィストは昭和の電気屋の様に言った。
「これで35インチなの。」
私は自慢げなお父さんの笑顔を思い出して悲しくなった。
「そうです。」
「そうなんだ。でも、画面が大きいだけなんてしょぼいわ。」
私は負け惜しみを言った。でも、確かにどうでもいいとも思った。自分のスキルとか評価とか、そんなものは上位ランカー以外はあまり見たいと思うもでもないのだ。
「そうでしょうか?推しを見る時は解像度の良い大きな画面のほうがいいでしょ?」
メフィストに言われて頭の電気がひかる。そうだった、これでガニメデと、あああ、王子、ダイヤお王子様が見られるんだったんだ!!
「ねえ、じゃあ、王子様出してよ。ねえ、早く。」
私は少女に戻ってメフィストを急かせた。が、メフィストは肩をすくめてこう言った。
「残念ですが、ダイヤの王子はクエストをクリヤーしないと登場しません。」
「出たわね、クエスト!ゲーム用語!!!面倒臭いなぁ。でも、あるんでしょ?プロフィールイラストみたいなのっ。」
私は叫んだ。そう、何であれ、女性用の恋愛ゲームなら、販促用の王子のイラストは絶対あるはずなんだから。私はメフィストににじりよる。メフィストは少し嬉しそうに一歩ひるむ。
「ふふ。可愛らしい。餌の時間のレギオンさんの様に欲望全開で。」
メフィストは愛おしそうに私を見るけれど、何か違和感がある。
「レギオンってアナタのペット?」
私は質問しながら地獄のモンスターを想像する。レギオンなんて名前からすると爬虫類関係だろうか?
「違いますよ。豚の悪魔と言われるものです。」
メフィストは懐かしそうに目を細める。
「ああ、豚の悪魔なんだ。で、ダイヤの王子はどうなのよ。」
私はもっと強烈な悪魔を想像していたのでスルーした。そう、そんな事より、王子よ。ダイヤの王子。ここは、やっぱり御尊顔を拝んで執筆のエネルギーをいただきたい所である。
「そんなに見たいですかぁ?こんな美青年の私がそばにいるのに。卯月さんはハーレム肯定派なんですね。妬けちゃうな。」
メフィストはふざけたように私に言った。
「意味わかんないわ。ゲーム用語使わないで、中高年でもわかるように説明してよ!」
私の苦情をメフィストはやれやれ顔で受け止める。
「ゲーム用語なんて使ってないですよ。もう。でも、ダイヤの王子は『虞美人草』をレビューしないと登場しませんから。頑張ってください。」
メフィストの言葉に、どうしても読まなきゃいけないんだと頭が痛くなる。でも、王子を見たいから仕方なく従った。




