第二話 再会 発表
ああ…やっちまった。
私はため息と共に床に倒れ込む。少し前に、『義美人草』の一章のプレゼンをした。
もう、どうにでもなれって気分である。でも、あれしかやりようがなかったんだから仕方ない。
ああ。思い出すだけで泣きたい気持ちになる。
私は夏目漱石が新連載の初めての作品ということで、連載作家の色々をラノベ作家のものと比べて話す事にした。
ネットなどの情報によると、夏目漱石は秀才で、帝大で小泉八雲の後任で先生になる、が、八雲の人気の為に学生に酷い評価をされたらしい。
この辺りを、ラノベのテンプレ、追放勇者に例えてみた。
スキルはある。だって、のちのお札になった夏目漱石なんだから。
でも、当時の学生には、その能力が分からなかったのだ。漱石に英語を教えてもらえるなんて、凄いことなんだけれど、当時の学生はその価値がわからなかった。で、いろんな問題が起こって、奥さんとも別れたり、大変だった。
そんな漱石は、気持ちの平穏も兼ねて小説を書き始める。
ここから、スキル発動!!と、いうわけではないが、『吾輩は猫である』などの名作を発表する。
この辺りをスローライフの勇者に例えて前置きで話した。
で、ここから、新聞連載をゲットして、そこからの解説を推理小説の解答編っぽくやってみた。
ここにきて、推理ショーのような雰囲気でやろうと、生きの良いモダンジャズ風味に『時には母のない子のように』を改変して演奏を入れてもらった。
そのために、私はジオから、ジャズの始まりの街、ニューオリンズの色々を聞いた。
〈ニューオリンズは、アメリカのルイジアナ州にあるんだ。
ミシシッピ川の河口に位置してるんだよ。
冬は過ごしやすく、夏は湿度があるんだ。ガンボという料理が人気みたいだよ〉
という風な説明を聞いて、BGMを手に入れた。
で、明智小五郎よろしく魔女探偵見習いって感じで変身までやってのけた。
が、乙女バージョンの私のボディと、多分、メフィストのいたずら心もあって、何だか、お色気ポリスみたいになってしまった(//∇//)
で、漱石ファンが聞いていたら、色々と言われるだろう、ラノベの連載の落とし穴を、漱石の連載小説に重ねて偉そうに話した。
先生として不人気だったリベンジを兼ねて、青年を読者層に私の漱石は話を作ったことにした。
80、90年代、車のブームだった話をしながら、登山を当時のトレンドに違いないとか言い切ってみた(//ー//)本当はどうかなんて知らないわ。
で、京都と登山、そして、大原女という若い女性の行商の団体を現在のご当地アイドルのような立ち位置で話した。
子供の頃、三角形の壁飾り、ペナントというものが流行ったことがある。
それは、旅先の観光地や特色が描かれているもので、『おばこ』という文字と、若い娘の印刷された東北のペナントを見て、お父さんに言葉の意味を聞いた思い出まで話した。
おばこというのは、秋田地方の若い娘のことを示す方言なんだそうで、小野の小町を持ち出して、秋田の女性の麗しさを私の父は鼻の下を長くしながら話した。と、いうエピソードはメフィストの爆笑を誘った。
何が可笑しいのか分からなかったが、私も、肌色成分がたくさんの衣装と、変な話に流れていって頭に血が上ってメフィストを気にしてる余裕はなかった。
ともかく、そんな『おばこ』と『大原女』を合わせて話をして、明治時代のアイドル的存在に違いない!って、言い切ってみた。右の人差し指を天井に向けて。知らんけど、と、心の中で呟きながら。
そして、ここで楽しげに登山をする2人の青年
甲野家と
宗近家の青年で、この2家の人物から物語が展開してゆく。
この時の夏目漱石のドキドキと、なんとか人気を取ろうと必死に物語に青年の憧れを入れ込もうと頑張る漱石を想像して話した。
そして、甲野家には物語を翻弄するヒロインが登場を待っている。
続きはどうなるか?
と、いうところまで頑張って話した。
不思議な事に、このプレゼンは結構、好評のようだった。
まあ、上を見れば遙かに高く先はあるけれど、私にはこの評価で十分、満足できた。




