第二話 再会 出会い
新たなイベントを前にメフィストが私に説明をしてくれた。
この世界には4人の姫がいる。そして、ゲームをプレイする女官長役のプレイヤーが4人。今回はガニメデが入ったので3人いる。
で、姫ごとに物語は基本、独立している。まあ、独立してないと、他の姫の王子に手が出せるようになってカオスになるから仕方がない。というか、それはやめてほしい。
まあ、そんな感じで、ローズマリー家の物語はガニメデを相手にディアーヌの兄王子と、4人の従士が攻略対象として現れるんだそうだ。
で、王子の前に、4従士との絡みになってゆくんだそうで、記録、歴史を担うローズマリー家では4賢者と言われる美青年がディアーヌをサポートする。
で、この四人は同じ土のエレメントに加護を受けてるけれど、そこから、火・土・風・水の4つのエレメントの加護を二重に受けている設定なんだそうだ。
「サトゥリヌスは水の精霊が加護をするから『土の水』の加護を受けてるのね。何だか、クロウリーの魔術を思い出すフレーズね。」
私は自分の脳みそから出てきたとは思えない面倒な設定にうんざりしながら言った。
「クロウリーは関係ありませんよ。乙女ゲームですから、出来るだけ事前に性格を把握できるようにつくられてるのですよ。」
メフィストは上品に笑った。
「そう、そうね。土の水のサトゥリヌスなんて、何だか優しそうだもんね。穏やかな恋愛を楽しめそうな予感がするわ。」
相手がガニメデでなかったら。と、私はため息をつく。
「そうでしょうか?そうですね、まあ、新たなイベントを楽しみましょう。」
メフィストが言うと13才くらいの元気のいい少年がやってくる。
金色の髪と青い目のザ・昭和の少女漫画って感じの長いまつ毛の美少年である。星占いの挿絵に出てくるような古代ギリシアの服 キトンから伸びるカモシカのような足がとても綺麗だった。
「こんにちはサトゥ。新人の指導役に任命されたんだって?」
少年は気さくにサトゥリヌスにそういった。
彼の名前はメルクリウス。付箋にメルクって呼んでくれって書いてあるのでありがたくメルクと呼ばせてもらう。
メルクの家はサトゥルヌスの家より位が上なので年下だけどタメ口でいいらしい。
「ああ、相変わらず早耳だね。メルク。そう、彼はガニメデ。10歳の少年だよ。仲良くしてくれたまえ。」
サトゥルヌスは穏やかにそう言ってガニメデを呼んだ。ガニメデは少し照れながらゆっくりとサトゥルヌスの方へとやってくる。
「初めまして、メリクリウス様。ガニメデと申します。」
ガニメデは優雅に膝を負って挨拶をする。その優雅な動きにメルクは感心したように口笛を吹いた。
「こんにちは。僕のことはメルクと呼んでくれていいから。よろしく。」
メルク、案外気さくな少年である。ガニメデは『はい』と、照れながら頷く。その様子を可愛いものでも見るように目を細めるメルクに、乙女ゲームの色々を見たような気がした。少し、混乱する私を知らずにメルクはこもいだしたように大きな声をあげた。
「ああ、そうだった。我が姫を探していたんだった!ねえ、ディアーヌ様を見なかった?」
メルクは慌てたように言って、ガニメデはディアーヌの言葉に反応する。
「見てないな。一体、何があったのかな?」
サトゥリヌスはゆっくりと落ち着いてメルクにきいた。メルクはそう言われて少し冷静になって肩をすくめた。
「また、1人でどこかへ行かれたようなんだ。敷地内だから安心だと思うけれど、あんなことがあったばかりだからね。」
メルクはため息をつく。ディアーヌ、結構、自由人なのだろうか?
「そうだな。私も水の精霊に聞いてみよう。」
サトゥリヌスがそう言うと、どこからともなく美少年ズが水がめと鉢を持って現れた。そして、サトゥリヌスの近くで鉢を床に置いて水を流し込む。
それを見て、メルクは両手を開いて言った。
「僕も加勢するよ。その方が見つかりやすいからね。」
メルクがそう言うと彼の頭に花冠が現れた。赤い木の実で飾られたその花冠はイチイの枝や実でできていた。