TS転生
「私は、地獄大公メフィストフェレス…人は私をチャラい最低の悪魔と言いますが…果たして、人はどうでしょうか…
TS転生…性別を逆に新たなキャラへと改変する…
人の欲望の醜さに…人はなぜ気がつかないのでしょう?」
メフィストは、あまり興味の湧いてない私をチラ見して、なんだかあわててBGMを追加する。
ショパン…『別れの曲』
この曲は、ショパンの有名なピアノ曲でトレンディドラマの挿入曲としても使われている。
はいはい、ちゃんと著作権は切れてますから
と、そんな面倒くさがるメフィストの心の声が聞こえるようだ。
私が呆然としていると、メフィストは話を続ける。
「昔、むかし…ここに仲の良い二柱の女神がフェニキアと呼ばれた国におりました。
二人はアンとダイアナの様に仲良しでした。」
メフィスト、あの電工掲示板を出現させ、なんか、古代の壁画の様な女神の画像を写し出した。同じような姿の下にカタカナでペオル、アスタロトとかいてある。
「この二柱の女神は、時代の変わり目と共に一度は消滅しますが、暇なキリスト教の坊主に悪魔としてTSされるのです。」
どん!とばかりに画像に触れると、壁画の画像が回転しながら消えて、昭和の少女漫画の巻頭カラーのイラストのようなスーツのイケメンと、裸の悪魔の画像が渦を巻きながら登場する
テレビショッピングみたい…
なんか、早朝の外国のテレビショッピングが脳裏を突き抜けて行く…
と、同時に、イケメンには『アスタロト』
裸のオヤジ…コラン・ド・フランシーの『悪魔の辞書』の挿し絵のベルフェゴールの絵に『ベルフェゴール』と赤字で点滅させながら文字が登場して消える…
なんか、今風ではないけど…あの異世界の電光掲示板、使いこなしてるなぁ…
なんか、昭和のビジネスマン根性をメフィストに感じながら、暗い気持ちになる。
「著作権は…切れてるけどさぁ…『赤毛のアン』を例えに使うの止めようよ…」
私は、ベルフェゴールの画像を渋い顔で見た。
確かに、一神教のキリスト教では、異教の神を悪魔にみたてたりもしたようだけれど…
その時、確かに、この二柱の女神は男の悪魔に変えられたと聞いたけれど…
便器に座る裸のオッサン悪魔のベルフェゴールと昭和の美麗イラストのアスタロトって…それを…アンとダイアナに例えられるのは…複雑な気持ちになる。
メフィストは、そんな私の心につけこむ。
「あああっ…そうですよ、アン…女の心は砂糖菓子とレースに包まれたデリケートな代物。生まれつきの髪の色が気に入らないだけで、悲劇のどん底にいるようなのに…」
ばぁぁーん
メフィスト、電工掲示板から、ベルフェゴールの画像を3Dで私の目の前まで持ってくる。
「わかったわよ…もうっ。ベルフェゴールの登場は仕方ないとして…だからって、剛が女になる必要ないじゃん!」
と、叫んで、嫌なことを考えた。
「メフィスト!ま、まさか、その転生した少女って…ベルフェゴールが乗っ取ってないわよね!」
ああっ…異世界転生の世界観が…悪魔付きのホラーに染みて行く…