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第二話 再会 好感度


 昼下がりの貴族の屋敷の2階で、美青年が悩ましく微笑むのを見つめていた。サトゥルヌスである。


 “好ましい…あのひたむきな姿に目が離さなくなるのはどうしてだろう?“


 心の声が美声でダダ漏れなのはゲームのお約束だけれど、なんだか恥ずかしい。そして、この好意を向けられるのは10才の私の少年キャラだというのも、いたたまれない。


 「ねえ、あれ、私の選択が違っていたら、私があそこで立たされてたの?」

なんだかそれも嫌だなと、思った。

 乙女ゲームでやるなら、この、なんとも嬉し恥ずかしのサトゥルヌスの悩ましいシーンもそれなりに楽しめると思う。でも、コントローラー片手に画面を見るのと、同じ次元で見つめられるのは、やっぱり違う気がした。

 もやる私を背後から抱きつきながらメフィストが少し責めるように言った。

「もしかして、プレイしたかったのですか?」

私はそんなメフィストから離れる。

「もう、違うわよ。それにしても、近未来のゲームって、こんな感じなのかな?なんだか気恥ずかしくないのかね?」

私はため息をつく。それを見てメフィストが優しい顔になる。

「ふふ。気恥ずかしいですか。そうですか。」

「何よ。悪い?」

私はバカにされた気持ちがして少し腹が立つ。が、メフィストはもっと嬉しそうに笑って私を揶揄からかった。


 「まあ、いいわ。そんな事は!私の事なんて、どうでも良いのよ!ねえ、私の初めての、そして、最後になるかもしれない異世界恋愛作品を、普通に終わらせたいの!その為にはガニメデがサトゥルヌスに告られるわけにはいかないのよ。」

そう、恋愛ジャンルには不問のお約束がある。男女以外の恋愛展開の場合は、それと分かるようにタグ付けするのがお約束なのだ。

「良いんですか?そんな差別的な言い方。最近では男同士の恋愛ものも人気みたいですよ?」

メフィストのニヤニヤ顔が私をイラつかせる。

「いいのっ。恋愛なんて究極の差別なんだから。世界にたった1人、この人って決めたら、他の人物はどんなにイケメンでも、どこの民族でも、想い人以外は受けつけない、そんな世界なんだから。

 恋愛は、感情移入するんだから、自分の性癖に合うものかどうかを事前に調べておきたいものなのよ!」

私は叫んだ。それをメフィストは驚いたように、まさしく上から目線で見つめた。

「世界にただ1人の想い人。ですか…貴女らしい。」

メフィストは切ない顔で私を見てた。その顔はなんか、精神的優位者の顔で私はムカついた。

「な、なによ?」

「気分をがいされましたか?すみません。でも、乙女ゲームをした事がないのですね?」

ふふふとメフィストが笑う。

「し、したこと、あると思うよ。恋愛シュミレーションなら。」

男性用のやつだけど。とは言わなかった。何が違うんだろう?

「そうですね、カセットの時代はそのようなゲームがあったのかもしれませんが、現在は逆ハーは当たり前の設定ですから。」

「逆は?」

なんだか聞いた事があるけれど、頭に来ていて思考が止まってしまう。

「逆ハーレムもの。男子みんな私のものでキャッキャうふふのエンディングです。」

メフィストはよくわからないが嬉しそうだ。が、私は口が尖ってくるのが止まらなかった。

「それって、友達エンドったやつでしょ?バットエンドじゃない!」

と叫んだ途端にメフィストが爆笑して、代わりにジオがサトゥルヌスのパラメーターを見せてくれた。


好感度 丙↑ 彼の貴女への気持ちはまだ、貴女を手のかかる部下のように見ているようよ。

       


「大丈夫。好感度は甲↓までなら告白はされないし、サトゥルヌスは成人してるし、ガニメデは未成年だから、コンプラ的に恋愛関係にはならないんだ。ゲームを一度以上クリヤーしてキャラが成人、隠れアイテムを手にしないと、容姿と違って実直なサトゥルヌスは攻略できないんだ。頑張って。」

ジオの言葉に色々と突っ込みたくなった。へいって、十干の設定、残ってたんだ。それに、コンプラとか攻略とか、なんだか嫌だな。

「あ、ありがとう。それは安心だね。」

私はなんとなくそう答えた。


 最近流行りの悪役令嬢ものって、バットエンドを回避するんだよね、いや、確かにサトゥルヌスに告白されるのもバットエンドには違いないけれど、なんか根本的な何かが、全く違うんじゃないか、と、不安になってくる。


 私の心配など知らないサトゥルヌスは自分の気持ちに混乱していた。まあ、そうだよな。本来ならヒロインに感じる特別な感情をガニメデに感じてるんだから。


 時間は穏やかに流れてゆく。恋のバランスゲームは派手なアクションは特にない。何だかいい感じの音楽と共にサトゥルヌスが代わりに恥ずかしいくらい素敵な心の声を囁いてくれるけれど。


 私とメフィストとジオはそれをしばらく見つめていた。

 お互い、何も言わなかった。どんなコメントをしたらいいのか分からなかった。が、この、甘酸っぱい、間抜けな時間は長くは続かなかった。

 第2のイケメンが登場したからである。


 

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