第二話 再会スキル
私たちが色々喚いているうちにガニメデは自分の居場所を確立してゆく。
サトゥルヌスは大きな陶器の鉢を持ってくると美少年ズに水を入れさせる。
そして、自分の花冠のローリエの葉っぱを一つむしるとガニメデの額に当ててそれを鉢に浮かべた。
それから、なんかアニメで魔法を出すときのように大袈裟な、ああ、ここはダイナミックと言うべきか、な動きで両手を広げ、鉢に両手のひらを向けていった。
「すべての担い手を守護する恵み深き大地の精霊よ。この者の職能を我に伝えよ。」
それはとても詩的なセリフだった。なんだか怪しくなってきた少女漫画チックな雰囲気が、この一言で持ち返してくるのを私は感じた。
鉢の水はサトゥルヌスの言葉でむずいろに輝きながら人の姿に変わり、5センチくらいの大きさで鉢の真ん中あたりの水に登場した。
「麗しきローズマリーの庭の守り手、そなたの問いに答えよう。」
おおっ。と、私は思わずジオに抱きついた。
それは、グラスのフチで奏でるグラスハープのような、よく響く透明感のある声で、あまりにもファンタジーな感じに少し驚いたのだった。
「ひどいな。私も混ぜてくださいよ。」
メフィストが私に抱きついてくる。
「もう、寂しがりやさんなんだから。でも、すごいね、なんか、本当にファンタジーっぽくなってきたよ!もう、ゲームだ機械人間だとか言われた時は、PVのない中で1人更新の地獄のビジョンがうっすら見えちゃったよ。」
私はリラックスしていった。本当に、あれは一度経験するとすごく辛い。
怖いところに行く動画とかがあるけれど、あの人たちもきっと、明るい街でPVのない投稿より、暗く不気味なところに1人でも、P Vが爆上げした方が嬉しいんだろうなって、今なら思う。
「機械人間じゃなく、機械生命体ですよ。それに、スキルなら、ジオくんも出せますよ。」
メフィストは不満そうに言う。
「え?出来るの?」
私は驚いた。すると、ジオが頷く。
「うん、この世界では僕が君のエメラルドタブレットだから、スキルやアイテムを表示したり、ヘルプも検索可能なんだ。」
ジオの言葉に、何か、現実にひき戻される寂しい気持ちになりながら、それでも聞いてみた。
「ねぇ、それ、今出せるの?」
「うん。じゃあ、僕の瞳を見つめて『スキルオープン』と、唱えてみて。」
ジオに言われて、私は少し恥ずかしくも感じながら、好奇心に押されるように唱えた。
「スキル、おーーーぷん!」
思わず右の腕を振り上げてしまったけれど、これは特には意味がない。
が、その言葉でジオが光りながらエメラルド色に輝くタブレットに変わり、日本語が箇条書きで並んで出てきた。
社交性 丙
知識 乙
体力 甲
「って、これ何?」
私は理解できずにタブレットにぼやく。確かに、私は最近のラノベの数値はわからない。が、漢字ばかりでも、なんの事だかわからなかった。
「甲、乙、丙…ああ、これ、成績表ですよ。数字がわからなって文句を言ってたから、分かりやすく小学校の通信簿に合わせたんですね。」
メフィストは感心しながら言った。
「いつの成績表よっ、いくらなんでも私の子供時代は数字だったわよ。」
私は文句を言う。
「ふふ。いいじゃないですか。十干なんてあまり使われなくなりましたけれど、覚えておいて悪いものではありませんから。」
メフィストは嬉しそうにそういった。