第二話 再会花冠
その麗人の名前はサトゥルヌスと言った。
メフフィストがクリスチャンネームを嫌ったのと、どうせなら、さまざまな名前を覚えてもらおうという趣旨でこうなった。
サトゥルヌスは、別名サターン。魔王サタンとは関係ない、ローマの農業神である。
で、一般的に最近のラノベでは髪の色で個人を識別するらしいのだが、ジオの意向と昭和の少女漫画のテンプレを参考に、ここぞのところで花冠を被り、バックを埋めることで個性とすることになった。
サトゥルヌスは太陽神アポロンの推し植物、月桂樹が与えられた。
「月桂樹も地中海が原産なんだよ。でも、肥沃な土地も好物で、殺菌作用のある香のいい精油が取れるんだ。料理はもちろん、男性用の整髪料の原料としても古代、人気があったらしいんだ。」
ジオは楽しそうに話した。暖かいところの植物のイメージがあるけれど、イギリスや日本なんかでも植林されてるらしい。
まあ、それはともかく、スポーツの大会でもモチーフにされる花冠だから、やっぱり、これを被ると格好良く言える。
でも、基本、アポロンは詩人や学者の神らしくて、ローズマリー家のシンボルとしてはいい感じのようだった。
「そうなんだ。私も、一度、カレーに入れたことがあるよ。」
私は音楽とともにくるくると回転するサトゥルヌスのイメージ動画を見つめながらぼんやり呟いた。
なんだろう?この、えも言われぬ恥ずかしさ。
そして、いつか、自分だけがここにとり残されて、この続きを書かなきゃいけない、そんな地獄のビジョンを見てしまう。
「そうだね。ローリエは殺菌作用と、香りづけ、食欲増進の効果があると昔から言われているよ。カレーは、それだけで食欲が湧くから、効果はよくわからないかもしれないけれどね。」
ジオは楽しそうにそういった。そんな説明を聞いているうちにサトゥルヌスは穏やかに普通の姿に戻り、私はローリエの言葉ばかりで、サトゥルヌスのことを全く理解してない自分に驚いた。
「これから、お前の世話係になったサトゥルヌスだ。足を崩すが良い。」
サトゥルヌス、声はいいが、地べたにガニメデを座らせるんかと、少し文句を言いたくなったが、おつきの美少年が東屋へと誘い、シルクのクッションがあるところに座らせてくれた。
ガニメデは少し緊張気味に中に入り、その絢爛豪華な敷物や調度品に少し驚いた。そして、あんなに丹念に自分を磨かれた真相を悟った。
そう、偉い人に会うというのは、偉い人のすごい調度品と接触することにもなるので、汚い普段着で汚すわけにはいけないのだった。
「ねえ、ここって、防水スプレーとかはあるの?」
私は思わずジオに聞いてみた。
「スプレーは使われてないよ。環境に配慮してるんだ。」
ジオの言葉に、他の現在の便利グッッがどこかにあるのか気になる。
が、まあ、それはともかく、私もサトゥルヌスと一緒にガニメデの身の上話が聞きたくなった。
ガニメデは、少し、不安そうにしていたが、ゆっくりを自分の話を始めた。
ガニメデは、少し前の戦いで親を亡くした孤児である。
どこにも行くところがなく、この狩場で自然と共に暮らしていたところを見つかってしまう。そして、ディアーヌのお母さんに助けてもらい、この屋敷の管理の手伝いをしていた。
運動神経は割とよく、庭の管理はある程度できるようにはなっていた。
サトゥルヌスは笑顔でガニメデの話を聞いていた。
そして、しばらくすると、彼はガニメデをディアーヌの庭番とすることに決定した。