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第一話 いとしのローズマリー宿命


 「仕方がないじゃ、ありませんか!貴女の世界の中で、剛さんを本当に愛していたのはガニメデさんだけなんですから。」

メフィストはあからさまに私を責める。

「そんな事、ないとは言わないけれど、でも、私が失敗したBL短編を使わなくてもいいじゃない。」

そう、ガニメデの話は私の欲から始まった。

なんとしても小銭が欲しかった私は、新規参入者に優しくて評価も貰いやすいという、怪しい噂に縋り付いてBLもどきを書いて失敗した。

と、いうか、BLにもなる前に短編は終わっていた。黒歴史である。

「失敗したと、中途半端に完結されたからこそ、ガニメデさんは、転生してでも剛さんを追ってきたんじゃありまさんか!」

「はぁ?なんで、私の創作が勝手に動いてんのよ!」

「勝手になんて、ここはアストラル界ですよ。貴女の空想をベースにしたWEBラノベのゲーム世界。使えるものは私と共有です。そして、私は悪魔大公メフィストフェレス。

 作者めがみの失敗で完結しんだキャラが再起復活するのは、むしろ、テンプレって事ですよ。」

メフィストは自信満々に言った。ああ、こういう時って、私はどうしたらいいんだろう?確かに、色々と問題はあったとは思うけれど、あれはあれで、あの完結で良かったと私は思うんだけれど。

「そんなテンプレ、いらないわよ。大体、この話、ちゃんと終わるんでしょうね?」

と、強気で行ってみたが、私が作らないと完結しないんだよな。

と、突っ込まれるんじゃないかと、少し、ビビる私を見下すようにメフィストは失笑した。

「ふっ、いいですか、ラノベには完結より大事なことがあるんですよ。」

「完結より大事なこと!はあ?何よ、そんなもん、あるわけないじゃない!」

私は叫んだ、完結より大事なもんが本当にあるなら、私はこんなに未完で悩んだりしない。

 メフィストは、怒る私を憐れむようにみてから、どこからか流れるバイオリンのステキBGMに合わせて話し始めた。


 「ありますよ。これは、今をときめく人気ジャンル『異世界恋愛』です。異世界の恋愛ものなんですよ!!。」

「知ってるわよ。」

ああ、面倒臭い。メフィスト、そんなに偉そうに何が言いたいんだか。

そんな事、わかってる。私がテンプレに混乱してる間に、ラノベのトレンドは異世界恋愛になってしまったのよね。私の書き初めの頃は異世界ファンタジーが人気だった。

 でも、私だって、少女時代に流行った少女漫画の新作が見たいから、頑張ってるんじゃない。と、文句を言いたい私の顔を、メフィストはため息をつきながら首を振って否定する。


 「ああ、わかっていらっしゃらない!いいですか、ここは『異世界恋愛』のジャンルなのですよ。ここで いの一番に必要なのは『恋心』です。」

「こ、恋っ!(◎_◎;)」

「そうです。皆さん、『萌え』を求めていらっしゃるのです!」

「も、萌えっ、ですか( ;∀;)」

萌えって、萌って言われても、そんなん、どうしたらいいんだろう?

「そうです。萌え、それを生み出すのは、私のようなイケメンを描写するの手ですが、それだけではお客様は毎更新時には来てはくれません。」

「は、はい。」

「次も来ていただきたいなら、本物の、『恋する人』が必要なのです!」

その通りだとは思った。メフィストの言い分は正しいと思う。でも、何だか、納得できない自分もいる。

「それはわかるわ。でも、だからって、なんでガニメデが出てくるのよ。」

そう、ここは『異世界恋愛』である。基本、このジャンルでは、男女の恋が主流で、BLを嫌う人もいるから、混ぜてはいけない気がするのだ。

 メフィストは、観察するように私を上から下まで睨み、そして、大袈裟に肩を落とし、嘆かわしい、と、言わんばかりにため息をひとつついて、マジレスした。


 「勿論、貴女のこの広い心の中でただ一人。彼だけが、剛さんにガチラブしているからです!」

メフィストは自信満々に言い放った。

「ガチラブですか…」

「ガチ、マジ、ラブですっ。」

メフィストはキッパリと私の瞳をガン見しながら言った。

「でも、BL、だよ?」

諦めたように私は聞いた。BLって、色々と面倒だから、ジャンルが分かれていたり、BLの読者が優しかったりするんだと思う。それなのに、ここで私が異世界恋愛ジャンルでBL描いたら、やはりマズイと思う。

 が、私の心配をよそに、メフィストは不適な笑いを浮かべて言った。

「大丈夫です!剛さんはTSしてますからっ。」

ぐっ。と、親指をつきたてられても私はどうしたらいいんだろう?

「剛のTSって…あ、ああ!そうか、現在、剛って、美少女ディアーヌなんだっけ!え、ええっ、でも、じゃあ、剛、女だよ?女に生まれ変わったんだもん。それでいいの?ガニメデ、男の剛が好きだったんじゃないの?」

確か、太めの男が好みで好きって、そんな事を言ってたことを思い出す。

でも、メフィストは慌てず、漫画だったら真剣な感じの編みかけ線で囲まれるような重厚な表情でこう言った。

「卯月さん。人は、容姿で恋をするわけでもないのですよ。ガニメデさんは、どんな姿に変わり果てようと、剛さんを、彼を魂で愛しているのです。」


 変わり果てるって、なんか違う気も、だって、太ったおっさんから、超絶美少女になったのに!!

 それに、魂の恋って!魂の恋って、なんか違う気がする。少なくとも、私の読んだ少女漫画ではもっと、崇高でドキドキして、あああっ。


 私は混乱していた。

そんな私に、メフィストは嬉しそうにガニメデの話をした。

現在10歳の少年ガニメデ。不幸フラグが立つものの美少年。

勿論、転生前の記憶はない。

でも、魂に刻まれた剛への想いだけは今でも健在なのである。

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