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第一話 いとしのローズマリー伝道師


 怖かった。3歳児の少女の背中に声をかけるだけなのに。

 剛と会いたかった。

 そして、あんなふざけたメールを送ったことを謝りたかった。

〈生きてる?〉なんて、送るべきじゃなかった。

そして、私、本当に一緒に名古屋に行きたかったんだって、2万円貯めたし、小説で五百円勝ち取ったって、言ってやりたかった。


 「剛…」

おろるおそる声をかけた。でも、返事がなかった。

「剛?ねぇ、剛!」

少し大きく言ってみる。が、振り向かない。

普通、声がすれば反応するんじゃないだろうか?これは、まさかのシカト?

私は生前の剛が面倒くさくなるとよくメールをシカト地ていた事を思い出していた。一度は昼の再放送の女優さんに見惚みとれて2時間遅刻してきたことを思い出した。

 剛、まさか、私と会うと美人の母親にデレる事が出来なくなる事を恐れてシカトしてるんじゃないだろうか?

 そう考えると、つい、少女の肩に手を置いて叫んだ。

 「ちょっと!剛、返事しなさいよっ。ネタは上がってるのよっ。あんたが剛だってメフィストが言ったんだからっ、もう、お母さんのおっぱいをまだ飲んでるわけじゃないいでしょう!!!!」

私の叫びに答えるように少女は振り向いた。そして、私の顎のあたりに平手を一発打ってきた!!


 はぁっ((((;゜Д゜))))))) 言葉を失った私に、少女は美しい、マジで、バラのオーラを画面いっぱいに咲き散らかして私をキッと睨んだ。


 「アタクシの肩から手を離しなさい、狼藉者。わらわはローズマリー公爵の第一公女、ディアーヌ・ド・ローズマリー。4才のアタクシはおっぱいなど所望しません!そして、お前のような下賎なものなど知らぬ。」

デイアーヌは努めて穏やかにでも、敵意丸出しで話しかける。が、声が少し震えているのは分かった。

きっと、恐ろしいのを抑えながら淑やかに私というモンスターと対峙しているのだろう。そう思うとすごく健気な気がした。

 そして、私はなごみの国の太陽に照らされた美少女の大きな目から視線を離せなかった。


 少女時代、ヒロインに平手打ちをされて恋に落ちる、そんなテンプレの少女漫画を馬鹿にしていたことを思い出していた。

 私がそんな事をしたら、男子は迷わすボコボコに殴り返してきたから。

 殴られるのは痛い。男でも、女でも。

 私なら、殴ったやつはいつまでも覚えていても、恋ではなく復讐するな違いないと。


 でも、この歳になってそんなテンプレのリアルを体感していた。

 叩かれたと言っても、小さくて柔らかい可愛い手が軽く私の顎のあたりに少しキツく触れたに過ぎなかったし、信じられないけれど、美少女は怒った顔も劇可愛いのだ。

 この顔は、きっと私だけが目撃したレアな顔なんだと思うと、なんだかドキドキした。

 そして、攻撃したディアーヌの方が心の中で怯えているのを感じて微笑ましくも思ってしまう。


 これがっ、これが、昭和少女漫画の王子様の恋ゴゴロなのねっ(T-T)


苦節、数年、やっと恋愛小説の何かを掴んだ気がした。

そして、私は思わずディアーヌの前に膝をつき、そして、右手を心臓に当て、彼女に敬意を表した。

 「失礼しました。ディアーヌ様。わたくしは…」

と、ここで自分が何者なのかわからなくなってきた。混乱する私の目に付箋が2枚現れる。

 [魔女見習い]

 [姫様付きのガーディアン]


 選べ、と、いうのだろうな。

ガーディアンって、お庭番、つまり、忍者みたいなもんよね?

こういう時、どうしたらいいんだろう?

一瞬、考えたけれど、魔女見習いを選んだ。

「わたくしは、貴女を見守る魔女見習い。名前はウズキサンです。よろしくねっ。」

付箋を選ぶと勝手にセリフが飛び出てくる。

「ウズキサン…本当に魔女なの?」

ディアーヌ、あからさまに疑っている。

「う、うん。多分。」

私はしどろもどろにそう言った。と、ここで私は旋風に吹き飛ばされる。

そして、気がつくとメフィストの腕の中にいた。

「メフィスト!どうしたのよっ。」

私が叫ぶと、メフィストがやれやれ顔になる。

「どうしたって、いきなり物語の世界にとびこにのですから驚きましたよ。

本来は、ディアーヌの基本設定をしなきゃいけないのに。」

「は?ディアーヌって、基本設定できるの?」

私は叫んだ。

「はい。一応、これは育成シュミレーションですから。初期設定でエンディングも変わってきますよ。」

「そんなもんなの?」

ここで、私は恋愛シュミレーションと育成シュミレーションが違う

カテゴリーだと悟った。

「そうです。まあ、幸せになるだけですから、この辺りはこれでいいのかもしれませんが。」

困ってるメフィストを見て、私は聞いた。

「ねえ、確認したかったんだけれど、あれ、本当に剛なんだよね、TSした。」

そう、あの、美しいブルーの瞳の美少女が、気高い感じのあの少女が、剛だなんて何かの間違いに思えたのだ。

「そうですよ。」

「嘘だぁ。じゃ、なんで、私を覚えてないのよっ。大体、普通のラノベって、前世の記憶があるじゃない。それとも、なんとかチートで誤魔化されてるの?」

私が喚くので、メフィストは少し耳を抑えてから、ため息をついて私が落ち着いた頃合いを見てから話し始めた。


 「それは、これはアストラス界の貴女の作り出した世界だから、貴女の法則で世界は回ります。」

「私の法則?」

「はい、少女時代の、輪廻転生の法則が優先されるので、生まれ帰った場合、ほとんどが記憶を失います。」

メフィストの言葉は、少し切なく、そして、ディアーヌのためにはよかったと思った。

「そう、なんだ。」

でも、やはり、剛に会えなくなるのは悲しい。

「まあ、何かの拍子に思い出したりするとは思いますよ。」

「え!(◎_◎;)」

「安心してください、前世の記憶なんて、思春期によく思いだしますから、すぐに剛さんの記憶が蘇りますって。」

「はあ?」

なんか、嫌な予感がする。あの、麗しいディアーヌに、思春期の乙女のディアーヌに、あの剛が憑依するって事??

メフィストは私が剛に会えなかったから慰めてくれるように私を後ろから抱きしめる。

「私がいるのです。大丈夫。剛さんの魂をしっかりと呼び覚ましますから。」

メフィストの腕の中で私は震えていた。


 思春期の美少女の体に、おっさん剛を蘇らせていいのだろうか?


 答えはもちろんNO


「いいわ。蘇らなくても!あんなに可愛いディアーヌに、嫌な思いはさせられないもん。剛は出てこない方に私頑張るわ。」

私はメフィストから離れてメフィストを見た。彼は驚いていた。

「え?剛さんに会えなくていいんですか?」

そう言われると、少し悲しいが、でも、あんな美少女。近年、稀に見る私の好みのお姫様に剛の精神がバックアップされるなんて嫌っ。

「会いたいわ。でも、ディアーヌに嫌な思いをさせたくないのよ。」

「嫌な思いって、本人ですよ?」

「本人って、生まれる前のことじゃない。」

「そうですよ。でも、自分のことだからみんな受け入れますよ。」

メフィストは気楽な感じで話す。でも、ラノベのテンプレを知り過ぎた私は心配になる。

「ねえ、前世を思い出したら、ディアーヌに剛の意識が憑依したりするの?」

言いながら、目の前にいるメフィストが悪魔なんだと再認識する。このままじゃ、悪魔祓いの、ホラーエンドになりそうである。

 それとも、ラノベのおっさん目線のお風呂実況とかのエロ路線か。

 どっちも嫌。

「憑依はしないと思いますよ。ただ、過去を思い出して少し、混乱するかもしれまけれど。」

メフィストは私を観察するように遠巻きにそういった。

記憶。剛の記憶なんて、ディアーヌに受け止め切れるんだろうか?

 それを聞いて私は自分の行く末を決めた。

「そう、分かったわ。私、ディアーヌから剛を除霊する。そして、幸せになってもらうわ。」

私に決意は固かった。メフィストは少し呆れたような顔で私を見て、それから、気持ちを変えて明るくいった。

「いいでしょう。私、貴女の夢を叶えるのは仕事ですから。そして、恋を教えてもらうんです。」

メフィストの言葉に私はギョッとする。

「こ、恋って!」

「何を驚いているのですか?異世界恋愛ものを描きたいのでしょ?読者に愛を届けるのが貴女の使命ではありませんか。」

メフィストの言葉に私は膝をついた。

そうだった。

これ、ジャンル、恋愛だった(//∇//)

愛の伝道師私、これからどうなるの!

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