第一話 いとしのローズマリー異世界
「確かにここは異世界です。『異世界』と言う意味合いなら、現在のラノベより昔からの概念の異界…アストラル界ですから。」
メフィストは穏やかに言う。
「で、生年月日ってどうして聞かれるの?」
と、渋い顔で聴きながら、割と神社とかでも長う時は心で生年月日を称えろと言われた記憶があることを思い出す。なんか、オカルト的な重大な意味でもあるのだろうか?
「大事だからです。」
「大事、なの?」
何だか、おどろおどろしい気持ちになる。メフィストはそんな私を楽しそうに観察する。
「はい。一応、この世界は四姫が統べる世界で、その四姫は4エレメントで分かれているので、生年月日でプレイヤーは振り分けられるのです。」
メフィストの説明に納得した。が、納得できないところもある。
「それ、必要な設定?」
私の質問をメフィストは微笑んで答える。
「必要ですよ。ゲーム由来のファンタジーは貴女の夢、ですよね?それを書いて読者に評価をもらうんでしょ?」
揶揄うようなメフィストの笑顔がいたいわ。
「今回は、評価とかはいいのよ。まあ、ゲーム由来ってのは少し考えたいけれど、別に物語が変でも何でもいいの。剛に会いたいの。そして、さよならを言うの。名古屋に行って、剛にモーニングをご馳走になるの。そう、伝えて、幸せな奴を見て、別れるの。それができれば、あとは何でもいいんだから。」
それは私の本心だった。メフィストはただ、静かに私を見て笑った。そして、少し、悲しそうにこういった。
「欲がないのですね。私、本当に悪魔太公なのですけれど。」
「そう見たいね。私、あなたには感謝してるのよ。多分、一人だったら、もう、こんな事、諦めてると思うから。アンタがいたから、まだ、呼んでくれる人がいて、何とか、続きを書いていられるんだもん。
あのね、多分、本当に、アンタのイケメン描写を増やすと、PV5は増えてる。うん。多分。」
私は正直にそう答えた。この物語を待っていてくれる人が、世界のどこかに一人はいると、今は信じていられる。メフィストフェレスって名前だけで、間違ってクリックしてくれる人も含めて、何か読まれてる気がする。
「PV5ですか…渋いですね。」
と、つぶやいてメフィストは、はっはっはっと、元気に笑って私を抱き上げてぐるぐる回った。
「ごめん、怒らないでよ。更新増やすからさ。今回は私のせいだと思うし、すぐに10何ていくんだから、そんなに怒らないでよ!」
私が目を回しながら言うと、メフィストは回るのをやめてグッと抱きしめる。
一瞬、従姉妹のアキコちゃんを思い出した。
小さい頃、私はアキコちゃんに人形扱いされ、馬鹿力でしめられていた。いや、本人は可愛がっているつもりなのだが、子供に可愛がられる不幸な犬のように痛くて泣きながら止めてともがいた事を思い出した。
メフィストもまた、なんか、ぎゅっと私を抱きしめる。多分、『さば折り』とか格闘技ではないと思う。でも、小さい体型に変わった私にはこれはプロレス技のように腰にヒットする。
抱きしめて、骨が折れるほど って、昭和の物語にはよく出てくるワードだったけれど、こんなのやられたくないわ。
「どうしたのです?」
元気のなくなった私に気がついてメフィストが私を見る。
「いや、ね、こんなにキツく抱きしめられたことはなかったな、と、思ってね。」
嫌味を込めて言ってやった。人が強く抱きしめられたいと思うのは、赤ん坊の時、母親に抱きしめられた記憶があるからだと、なんかで読んだ記憶が蘇る。
途端に、メフィストがものすごく嬉しそうな顔で私を見て、また、強く抱きしめる。