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#1 経費は計算尽くで/Pay by credit

 返された愛用の携帯端末を手早く操作。飛ばしの番号にセットしてゴキゲンにCALLING、CALLING。

こんにちわ(Hello)〜、(I'll)定空(OPEN)いてる(your)よね(schedule)♪」

 そして繋がると同時に大層なご挨拶。東方の夏祭りに浮かれる女子供のようにマスクを側頭部に付け、笑ってしまうような明るい口調で語りかけた。

『Oh──K……問題ないわ。(My)言葉(keyword)(is)仕立て屋よ(Tailor)

 相手方は聴き及ばぬ声の主(Laughy)が近くに訃報を聞いた"お得意様"である事を見抜いた。多少、声の若さで戸惑ったが──そもそも、彼女(Tailor)への直通電話(Hotline)が繋がる相手は裏の世界でもそう多くない。需要から推測すればなんとも簡単な事。好きでもない胡麻の茶会を蹴って部屋の鍵を渡した。

ありがと〜(Thanks)おねーさん(sister)♪」

 どういたしましてという声を最後に通信を切る。飛ばしの番号はお役御免。データベースから抹殺してこのセーフハウスを出た。

「……って、何コレ」

 そのルンルン足を止めたのは一台のバイク。あからさまなリボンと、黒ヘルメットに貼り付けられたメッセージが目についた。

『"就職祝い"だ、お嬢さん(Laughy)

 達筆な筆記体で書かれたソレは──日本人らしいRookとジャンキーなAceでないとするなら──Grandからの贈り物なのだろう。

「……無職(NEET)じゃないし」

 ソフィアは自称プロゲーマー。生涯賞金は現在ゼロ。手癖レベルに染みついたメスガキ仕草が油断を読んでいつも勝ちきれない典型的アマプロ。そのモヤモヤが第二の趣味(クラッキング)へ繋がり、無事就職と相成った。

「エンジンスタート、ナビもオーケー。しかも新車だし」

 バイクに跨ってハンドルを回し、発進。彼女はデトロイトへと向かい──







 ──勿論、まだ白いままの彼女は何事もなくデトロイトまで到着。陽も落ちて暗くなる中、ソフィアはとあるビルの地下駐車場へ入った。

「此処は関係者以外立ち入り禁止だよ」

 立ち塞がるは青服の警備員。警棒と拳銃を持ったなんて事ない警備員。ヤンチャな子供がイタズラに来たのだろうと止めたのだが。

「"仕立て屋(Tyler)"に取り次いでくれるかな、おじさん」

 ニコリと笑ったソフィアの言葉に彼は驚いた。急遽来られる事になった"お客様"が、こんな小娘一人だったのだから。驚きのあまりフリーズしたおじさんは「早く」と急かされゲートを開ける。

「最上階で社長がお待ちです。良い取引を(Good luck)

ありがとね(You too)♪」

 名もなき愛車を来賓用に入れ、エレベーターを待つ間上にあるロゴが目についた。りんごに巻き付いた蛇を表すソレは、とある企業のシルシ。

「本当に"服飾業"をやってるとはね」

 それはグローバルに事業を展開するファッションブランド[Ivne]。恵まれない子供達への支援など積極的な公益貢献をアピールしているが、本当の所はコチラの仕事の為のカモフラージュ。空いたエレベーターもヤケにクリーンなのが如何にも悪の組織という風に見えてくる。

「……世界が(God)っく(is)り返っ(dead)たみたい(again)

 迷いなく最上階を押す。昇りながらガラス越しに見える景色は幾らだろう。彼女はもう戻れない。けれど戻る気もない。だって──楽しいから。こうやって、見下すのは。

ようこそ(Welcome),Ms.Laughy」

 ソフィアは掛けられた声の方へ振り向く。次に立っていたのは身なりの良い白スーツを着た女性。茶黒の髪はポニーテールに纏められ、眼は青の混じった灰色。ファッションブランドの社長であるだけあって顔立ちもスタイルも整っている。

「私が"仕立て屋(Tailor)"よ。へぇ……言葉と違って実物は可愛いみたいね」

爪先(I'm)から天(made)辺ま(of)でカワ(100%)イイけど(Kawaii)

 ぷくーっと頬を膨らませて不満げな表情をするソフィアは、(John)が選んだ人材にしては明るい雰囲気。先に居た何れの人物も何か陰りがあったのに、目の前の少女からは何も感じられない。

「……おーい(Hey)お姉さん(sister)私に(Are)見惚(you)れち(in)ゃっ(love)たの(me)?」

 ソレを知ってか知らずかソフィアは動きの止まった"仕立て屋(Tyler)"パメラ・セイルを煽る。「可愛すぎるから仕方ないかなー」なんて調子に乗っている。

「いいえ、あなたに似合う"ドレス"を考えていただけよ。カワイイから妥協はできないもの」

「ふぅ〜んそっかぁ〜……えへっ、ありがと♪」

 少女はそのまま応接間を無視して奥へ招かれた。今から行われるのは話し合いではないし商談でもない。帳簿に載せるまでもないごく個人的な"取引"。ただ少し、額と品が秘密なだけの。

必要(Which)なの(do you)(need)儀礼用(formal)(or)社交用(social)?」

 手を広げたソフィアの身体を測りながらパメラはお決まりの問いを洒落た隠語混じりに投げかけてみる。

「…………?」

 けれど幾ら賢くったって未知の世界の言葉はソフィアにだって難しい。鳩が豆鉄砲をヘッドショットされたようにこてんと首を横に傾げてわかりませんのポーズ。動きの止まったパメラは一瞬フリーズ、続けて少し低くなったトーンのまま問い直した。

「……潜伏用(Stealth)(or)乱闘用(Loud)

「Ah──両方(Both)(of)願い(them)♡」

 初の仕事は暴れること(Loud)前提の(Open)(the)強盗(sesame)。出来るだけ丈夫で動きやすいものがいいがいつか静かに奪う怪盗行為もするかもしれない。それなら先の為今頼んでおくのも悪くない。

「計測は終わりよ。あとは武器(Accessory)ね。見るからにそう(AR)(SG)(SR)(MG)(GR)は使わないでしょう?」

 机に隠されたボタンを押すとクローゼットが展開。新たな"ハンガー“が表れた。ゲームでしか見てこなかった"実物“達を目の当たりにし、目を輝かせて近寄るソフィア。彼女の筋力(STR)ならばここにある拳銃(HG)短機関銃(SMG)程度が精々。

うん(Year)楽しくて(Dual)可愛い(compact)武器(Arms)がいいかな〜♪」

「そうよね。ならここで十分よ、軽い銃火器なら──」

 そしてソフィアは両手に(・・・)武器を持って構えてみた。なるほど様になっている。(自称)プロゲーマーであるからか脳内学習(Tutorial)は十分らしい。沸かしていたコーヒーとココアを淹れて振り返ったパメラは……酷く驚いた。

「──え?(What's)二丁(Akimbo)!?」

 ソフィアはさも当然のように右手に一挺、左手に一挺のHGを携えていたから。

もちろん(Sure)!」

 嬉しそうにこうかな、いやこうかな、なんて鏡に向かってポーズを取り直しているが、実際のところ二挺拳銃はネタビルドの域を出ない。実際、彼女と付き合いのある裏の住人達の中にそんな事をする馬鹿は早死にするか大成せずに去っていったのが殆ど。

これにする(There'two)!」

 それを知って知らずかそもそもが遊戯派の命知らずなのか。十年来の相棒と再開したかのように嬉しそうにセレクトした銃達の名前は[P(Party)C(Crusher)-MKII]。"宴をぶち壊す者"の名を冠すこれは簡単に言えば大量殺人の為の銃。つまりハンドガンはハンドガンでも『機関(Machine)拳銃(pistol)』。そのためフルオートでありながら隠密性に優れ威力も人を殺すには十分と、前述したパラメータがなかなかに優秀な代わりに……集弾性が終わっている。初発一発目は最低限まっすぐ飛ぶが二発目からはそのじゃじゃ馬な本性を露わにしてくる。付いた渾名が"祝勝会の破壊者(ムードクラッシャー)"なあたりで連れ添った仏様の割合が知れてくる。

「……本当に?」

「知らないの?可愛い(Kawaii)(is)正義(Justice)って」

 しかしソフィアはそんな"ダメ"なところも含めてこの銃を気に入っているらしい。あまりの覇道っぷりに呆れ始めたパメラに言われるまでもなく自分用にデコレーション(custom)し始めたのでもう変わらないだろう。

消音器(Suppressor)消炎器(Flashhyder)はどこ〜?」

「あぁもう…」

 久しぶりに子供に振り回される感覚を味わいながらも、パメラは不思議と悪い気はしなかった。"仕立て屋(Tyler)"として、この面白い新人(Laughy)犯罪履歴(Black List)を"仕立て"ていけると思うと、尚更。

Tips キャラ紹介("仕立て屋" 1)

仕立て屋(Tailor)

本名:パメラ・セイル

年齢:34

場所:デトロイト

見た目:茶黒髪灰青眼白スーツ高身長

 表の世界では服飾業[Ivne]の社長だが、裏の世界では"パーティ"の為の"衣装"と"小道具“を取り扱う──武器商人。OPENER GANGに対してはお得意様としての関係以上に個人的な趣味の付き合いをしている部分がある。

「私の"服"を買わないから"流行"に乗り遅れるのよ」

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