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幼馴染もの

俺の幼馴染は殺意マシマシのツンデレ系

作者: テル

 俺の幼馴染こと桜木 朱音(さくらぎ あかね)は一般的にみたらツンデレという部類に入るのだと思う。

 しかし俺はそうは思えない。朱音はツンを超えてたまに俺を殺しにかかってくるのである。

 まあもちろん比喩表現で本当に殺されるかと言ったらそういうわけではないのだが、朱音は本気で急所を蹴ってこようとする。

 だから何かを褒めることだったり、その服に似合ってるね、なんて言ったりすると照れ隠しで蹴られる。


 まあ長年の付き合いなので、別に何も思っていない。......急所を蹴るのはやめてほしいけれども。

 向こうは俺が何かを褒めたりする時だけ蹴っている。他の人に危害がない分セーフだ。

 照れ隠しと思うと少し可愛い。


 俺と朱音は幼稚園からの付き合いで、高校も一緒だった。

 

 俺とて男子高校生。朱音を異性として意識してしまう。

 朱音のことを好きかどうか聞かれたら間違いなく恋愛的に好きなのだろう。

 ぶっちゃけ自分でもよくわかっていない。

 

 ちなみに告れば朱音との関係がどうなるかはわからない。

 なので告る気はない。無論、朱音から告られたら普通にオッケーする。


 ***


 朱音とは長年のお付き合いである。今もこうしてよく朱音と遊んでいる。

 

「ん、そういえば今日の服いいな、それ似合ってるぞ」

「......」


 俺はそう言うと、足を思いっきり踏まれた。

 思いっきり踏まれたのでなんとも言えない痛さが走った。


「......照れ隠しで踏むのやめてくれ」


 そう言うとさらに足を踏む力を強めた。


「痛い! ごめんなさい!」

 

 ***


「なあなあ、如月 楓(きさらぎ かえで)さんよ、今度お前の幼馴染の朱音を俺に紹介してくれ」


 平野 大智(ひらの だいち)から手を合わせてそうお願いされる。

 朱音は学校でかなりモテている方である。俺からみても普通に可愛いと思う。

 なのでこうして友達から紹介してくれと言われることは少なくない。


「なぜ?」

「いやー、俺、朱音がめちゃくちゃタイプなんよ」


 とまあこう聞くと、大体、可愛い、と言うのが理由である。

 好き、と言うより、可愛いからあわよくば付き合いたい、である。

 本気で好きと言うなら紹介してやらなくもないが、そんな人たちに紹介するのは俺自身気が引ける。

 朱音にはもっといい男がいるはずである。と思ってしまうわけだ。

 まあ彼氏なんて朱音が選ぶものだし、俺にそう言う権利はないのだが。


 ......正直なところを言うと誰でも朱音のことを紹介したくない。

 なんというか、他の男子と仲良くしてもらっても俺が嫉妬するというか。


 ......って何考えてんだ俺。


「えー」

「頼むよ......あっもしかしてあれか朱音のことが......」

「それはない」

「じゃあいいじゃないかよ、親睦会という名目で俺とお前と朱音の3人で遊ばせてくれー!」


 こういうのは本人に決定権がある。面倒くさいが友人の頼みだ。とりあえず聞いてみよう。

  

「......えー、まあ聞いてみる」

「さんきゅー! 持つべきものはやっぱり友だな!」


 なんとも強引な。......朱音と遊ぶなら2人で遊びたい。


 最近自分自身でもおかしいとは思う。

 朱音のことを考えると少し顔が赤くなるし、朱音が他の男子と話しているのをみると嫉妬する。

 これが好きという感情なのだろうか。こういうのには疎い。

 

 まあ俺なんかに好意を持たれても向こうは迷惑かもしれない。


 朱音はおそらく俺とは親友の関係だと思っているので、それに恋という感情が邪魔してしまったら関係が危うい。


 はあ、と俺はため息をつき、机にもたれかかった。


 朱音は俺のことをどう思っているのだろうか。


 ***


 その日はあいにくの雨だった。

 朝は晴れだったのだが、天気予報では午後からが雨マークになっていた。

 そしたら案の定である。

 

 傘を持ってきていてよかったと思いつつ、俺は傘を開き、帰路につこうとした。

 

 かなりの雨である。ザアザアと降りしきっている。

 傘差しても濡れるかもな。


 そんなことを考えていると、朱音が降りしきる雨を眺めてぼーっと突っ立っていた。


 バッグを持って明後日の方向を見ている。


 傘忘れたのかな。


「朱音、傘忘れたのか?」

「......うん」


 朱音はコクコクと頷いた。


「傘入るか?」

「いいの?」

「ああ、当然だろ」

「ありがと」


 嬉しかったのか腹を軽く殴られた。

 みぞじゃなかったらセーフである。


 あー、これ相合傘になるのか? まあいいか、よくやってるし。


 と俺は朱音を傘に入れて一緒に歩き出した。


 右肩に雨が当たっているが仕方ない。朱音の方は濡れていないようなので安心である。


「あっ肩......」


 朱音が申し訳なさそうに呟いた。


「気にするな、朱音に風邪引いてもらっても困る」

「あっありがと、楓のそういうところ好き」


 そう言うと朱音は頬を赤らめて視線を下にやった。

 てっきり殴られるのかと思ったが、大丈夫だったらしい。


 そして、好き、とさらっと言われて俺も自然と顔が赤くなる。


「そういえば、楓さ、好きな人いるの?」

「俺? ......別にいないけど」


 朱音からそんなことを聞かれる。

 朱音のことが好きなんて本人の前で言えるわけがないし、正直不確定な感情ではある。

 いない、と言うのが無難だろう。


「......そっか」

「急にどうした?」

「いや、なんでもない」


 朱音はニヤッと笑って前を向いた。

 そして俺は気づいた。さっきから心臓がおかしい。少し速くなっている。


 俺はそんな自分をはぐらかすように別の話題に変えた。



「今度大智っていう俺の友達と遊ぶんだが、朱音も来るか?」


 あくまで自然体で話す。しかしジト目で朱音に見られる。


「......なんで私?」

「あー、えっと、いやー、聞いてみただけだ」


 しまった、下手すぎた。明らかに不自然だ。


「......私遊ぶなら楓と2人きりで遊びたい」



 俺は突然のデレに思いっきり顔を赤くしてしまった。

 心臓の鼓動もさらに速くなる。急なデレは本当に心臓に悪い。


 朱音の方も自分で言って恥ずかしかったのか視線は別の方向に向いている。


「......そうか」

「うん」

「あのさ......楓」

「どっどうした?」


 朱音が急に立ち止まったので俺も足を止める。


「私と付き合ってって言ったら楓は付き合ってくれる?」


 少し上目遣いで朱音は聞いた。

 俺の返答は決まっている。


「......ああ、普通にオッケーすると思うぞ」

「ん、そっか、あっえっと勘違いしないでよね、別に好きとかそんななんじゃ......」


 俺は昔から鈍感だと言われる。ただ......これに関してはわかると思う。


 少し揶揄うように俺も聞いた。


「俺が付き合ってって言ったら朱音はオッケーするのか?」


 少し目を逸らして朱音は答えた。


「うっうん」

「......そうか」


 少し気まずい空気が流れる。......雨と自分の速くなった鼓動の音だけが聞こえる。

 俺は1呼吸置いて言った。


「じゃあ、好きだ、付き合ってくれ」

「......ん、いいよ」


 そう言うと朱音はあっさりと答えた。表情は明るい。

 しかし後になって恥ずかしくなってきたのか、ツンのセリフを吐き始めた。


「あーでも勘違いしないでよね、別に好きとかそんなんじゃなくて、可哀想って言うか仕方なくっていうか......」


 俺は空いている片方の手で朱音の手を掴んだ。


「本心は?」

「......好き、私も楓のことが好き」


 そして俺は雨の中、朱音に口付けをした。

 






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