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2 状勢激動の巻 4

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。

アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

――ハイマウンテン国の大広間――


 サイシュウがサンタナ王に訊いた。

「で、使者を叩っ斬りましたかい」

「斬らんよ! 降伏はしない、そちらへ侵攻する意志は無い‥‥そう伝えて帰ってもらった」

 そう言って王は溜息一つ。ちょっと参っているようだ。

 首を傾げるソフィア。

「コリーン国じゃなくてこっちに攻めてくるのね」

 だがそれは大臣の一人に否定された。

「いや、コリーンへ先に使者を送ったそうだ。再度の恭順を要求してな」

「へ?」

 目を丸くするソフィアに、今度は王が溜息混じりで‥‥

「だがコリーン王が『我が国はハイマウンテン国の傘下にある。よって貴国の要求に従う事はできぬ。文句があるならあっちに言え』とつっぱねたそうだ」


 大広間が数秒、沈黙した。


「ちょっと!? 面倒事を押し付けられてない?」

 驚きで声が大きくなるソフィア。

「コリーンを強制占領したんだから当然だ!」

 青筋立てて怒鳴る女騎士アリン。

「え? え? いつ占領したんでしょう‥‥」

 おどおどと狼狽(うろた)えるティア姫。


 そんな女性達を他所に、キラーは王へ進言した。

「俺達は国境へ向かおうと思います」

「ああ。向こうはもう準備を終えているだろうしな」

 やる気のサイシュウ。

 無論、ここでいう国境とはニスケー国との物だ。

 王は頷き、二人の意を汲んだ。

「では我が軍も急いで編成を‥‥」


 キラーも頷くが、次の言葉は王の予想外だった。

「はい。その後、()()()()()()をお願いします」

 一方へ軍を動かした隙に、他所から攻撃される。よくある事だし、コリーン国がそれで敗戦したばかりだ。

 だからキラーの言い分もおかしいわけではない。

 しかし――

「で、ではニスケー軍の迎撃は?」

 困惑しながら大臣の一人がそう訊くのも当然ではあった。


 それはキラーも予想していたようだ。事もなげに答える。

「俺とサイシュウさんで」

 こちらへ攻める部隊をたった二機で迎え撃つ気である。

 一見、正気の沙汰ではない。


 しかしこの二人、現にそれをやって凱旋してきたのだ。

 コリーン国の侵攻部隊と、ニスケーの駐留部隊を相手に。十数機の敵軍に、二機だけで。


 ハイマウンテン国の軍を分割した時の、各部隊の戦闘力を考えると――

「お、お頼み申す‥‥」

 大臣はそう言うしかなかった。



※この世界の戦争にはケイオス・ウォリアーが主力兵器として使われるが、巨大ロボットなんて物は、当然、人間の兵士ほどの数を揃える事はできない。

 よって小国同士の戦争では、一度の合戦で出撃する機体は双方とも数機~十数機程度だ。



 しかしそこへ大きな声がかかる。

「私も行くぞ! 祖国を侵略した歴史上最も非道なニスケーの猿どもへ、私が天誅をくだしてやる!」

 鼻息も荒く、アリンが叫んだのだ。その目は闘志と使命感に燃えている。

 そんな彼女を見てソフィアがクソでかい溜息一つ。

「いちいち言葉がでかいわね‥‥」

「まぁこちらの傘下にあると言うのだから態度で示してもらおう」

 キラーは女騎士の申し出を受けるつもりだった。やはり二機と三機では、できる事が違ってくる故に。


 そんなキラーへ、ティア姫がいつになく必死に訴えた。

「あの、手に入れた艦ですけど、私が艦長を勤めてよろしいでしょうか?」

「‥‥?」

 わけがわからず何も言えないキラー。

 同じく驚きながらソフィアが訊く。

「え‥‥と、ティア姫が?」

「はい。初陣になりますが、頑張りますから!」

 すがりつくように頼み込む姫。

 必死でせつなげで、ともすれば泣いてしまいそうな彼女を前に、キラーも戸惑いながら頷いてしまった。

「あ、ああ‥‥まぁ、できるのなら‥‥」


 サイシュウは呆れていた。

「王族自らが兵を率いるのは、この世界ではよくある事らしいと知ってはいますがね‥‥」

 そう言って王を横目で見る。

 王は額を抑えて溜息をついた。

「ティアがいつのまにか軍艦指揮の教習を受けていたとはなぁ‥‥」

「普通は受けます。ウチの軍は艦なんて使わないじゃないか、と言ってサボっていたのは王自身ですぞ」

 大臣達が王を(いさ)めていた。

「そ、そうは言うがな。実際、ウチの軍は軍艦など持ってなかっただろ」

 王はそれなりに納得できる言い訳に走っていた。


 要するにこの国で軍艦を戦闘に使えるのはティア姫だけなのである。

 実技経験は皆無であるが。


(ま、やると決めたならやるしかないけどね‥‥)

 ハイマウンテンの貧弱な軍事力にちょっと呆れつつ、ソフィアは一人小さく溜息をついた。

設定解説


・ウチの軍は軍艦など持ってなかっただろ


 小国の王族は大概、実戦に出るかどうかはともかく操艦とその指揮を学びはする。

 だがハイマウンテンは一都市一国家の小国で、その軍事力は連合内でも底辺グループの一員だ。山地の国だった事もあり、この国の戦争とは他国からふっかけられる物で、関所付近か王都でひたすら防御に徹して相手が消耗して引き上げるのを待つ防衛で、別動隊が敵の補給路を叩く事が攻撃なのだ。

 この世界の軍艦がケイオス・ウォリアーの運搬機として使われる物だという事もあり、ハイマウンテン国が軍艦を手に入れて運用するなどここ百年ほど無かった事である。

 実はこういう国も探せばちょくちょくは有る。

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