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2 状勢激動の巻 1

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。

 翌日。

 キラーはSゲイルイーグルに、サイシュウはSサンライザーに、それぞれ乗って旅立った。

 目指すはコリーン国の王都ソウヤン。そこまでの案内兼説明係兼人質として、量産型機の巨人兵士機にコリーン軍の女騎士を乗せ、先頭を歩かせている。


『ううう、酷い虐待だ。なぜカマセイル隊がハイマウンテン国を贔屓するんだ。こんなの差別だ。ヘイゴー連合最強部隊がいると知ってたら攻撃命令なんて従わなかったのに‥‥』

 ハイマウンテン城を()ってから途切れる事なく、女騎士は愚痴を吐き続けていた。

 サイシュウの苛々した通信が飛ぶ。

「オメーの口が文句を無限に吐けるのはわかったから、王サマにはっきり伝えろよ。お前らがボロ負けて勝ち目無しって事をな」



 一方、女騎士の愚痴を聞いて、キラーは改めてサイシュウが高名な歴戦の戦士である事を思い出していた。

 サイシュウを含めた三人の聖勇士(パラディン)が前のヘイゴー帝王に仕え、最強の戦士団・カマセイル隊を結成していたという。

 だが長い戦いの末、魔王軍の誇る四大隊長、その中でも最強の将が軍勢を率いてヘイゴー連合に侵攻し、帝王は戦死。王を守りきれなかったカマセイル隊も敗走を余儀なくされ、一時は潜伏していた。

 だが勇者パーティと交友関係を築き、彼らに加勢する形で復活。魔王軍が滅びる最終決戦にも参加し、勇者パーティでも特に実力者と目される男とともに旧敵の将を討ち取った。

 人類の勝利に多大な貢献をした後、カマセイル隊は解散したという。


 それがキラーがこの世界への転移する直前、ほんの一~二カ月前の事だというのだ。


(生ける伝説という事か。俺と同じ側の人間だった人が、俺と同じような成り行きで、そこまで行ったんだ)

 キラーは一人思う。

 何かと上手くいっていない者が、異なる環境に行ったから大逆転して大成功‥‥そんな事はしょせん願望で夢を見ているだけだ。普通に考えて、ある事ではない。

 しかし普通に考えて、だ。例外は常に少数有る。極稀に為す者がいる。皆無ではない。


 無ではないのだと。ゼロでは無いのだと。キラーは強く思っていた。

 その肩ではストライクが体色を明るい黄色に変えていた。



――破壊された関所を通り、一行は荒れた山間部を進む――



 コリーン国は都市が一つしかなかったハイマウンテンよりも大きい国だ。なんと二つある。

 その一つが大きな流通路の上にあるカマサンだ‥‥が、一行はあえてそこを避けた。理由は簡単、停戦協定を結ぶまではコリーンは「敵国」なので、その手の中に飛び込むような真似をしたくなかったからだ。


 しかし迂回はしても自由勝手に通行できるわけではない。当然、関所に行く手を阻まれる。

 岩山の山間部にあるその一つを前にし、キラーは女騎士に命じた。

「通すよう伝えろ」

 ぐずぐずと泣き言を愚痴りながらも、女騎士は前に出て、関所へ通信を送る。

『コリーン第二騎士団隊長のアリン=カームだ。ハイマウンテン国の使者を王城まで案内するから、ここを通せ』


 次の瞬間。

 砦から放たれた何発もの砲撃が、女騎士――アリンの乗る量産機を焼いた!

『ガギゴゴー!』

 響く絶叫! 煙をあげて量産機は無残に半壊し、倒れる。


 砲撃は後ろの二人をも襲っていた。

 しかしサンライザーを襲った砲弾は、光のカーテンに遮られて消滅する。

 操縦席で涼しい顔のサイシュウ。

「負け犬を切り捨てるのはよくあるとして、えらく問答無用じゃねぇか」


 ゲイルイーグルを襲った砲弾は地面を撃って爆発した。

 それを空から見下ろすイーグル。一瞬で上空へ避け、一発もかすりさえしていない。操縦席でキラーは砦に冷めた目を向けた。

「仕方ない。通りましょう」



 関所にも数体の量産機は配置されていた、が——それらが全機撃破されるのに、十分とかからなかった。



——翌日。一行は荒野の城塞都市を遠くから眺める——



「あれがコリーン国の王城か」

 キラーの目には、家屋も城もどこか安っぽく見える。豊かに栄えている様子ではない。

 サイシュウも呆れているようだ。

「見るのはオレも初めてだが、酷いボロさだな。まるで(いくさ)でもあったみたいだぜ?」


 なにせ防壁の半分は壊れ、中を晒している。

 倒壊した家屋も多い。城も半分が崩れて瓦礫だ。

 防衛部隊なのだろうが、ケイオス・ウォリアーもあちこちで残骸と化していた。


 叫ぶアリン。

『みたいじゃなくて! どう見ても(いくさ)の後だろー! なんでだ? どうしてだ!』


 そう、コリーンの都は既に攻め落とされていたのだ。



 突如、キラーは叫んだ。

「来る!」

 直後、降り注ぐ矢と弾丸の雨!


 イーグルは一瞬で宙を移動し、サンライザーは飛来する弾をバリアで防ぐ。

『ガギゴゴー!』

 アリンはまともに弾の雨を食らい、火を吹く機体の中で絶叫した。


 着地したイーグルの目で、キラーは山肌の岩陰を睨む。

「よくよく不意打ちが好きとみえるな」

 あちこちの岩陰から、何機ものケイオス・ウォリアーが現れたのだ。

 いずれも量産機だが‥‥そのうちの一機、ありふれた巨人型戦士から通信が飛ぶ。

『我らの植民地に外国の軍が無断で入ったのだ。文句も言えまい!』


『しょくみんちい!?』

 煙を吹いて倒れた機体の中で、アリンは悲鳴のような声で叫んだ。

 何があったか察しつつ、サイシュウは敵に訊く。

「て事は‥‥第二騎士団とやらが出て行った隙に、他の国が別方面から攻め落としたって事かい」

『よくわかったな。もはやコリーン国は存在しない。我らニスケー国がこれよりヘイゴー連合の帝王となる、その第一歩として撃破されたのだ!』

 敵兵士の高らかな宣言。


 ヘイゴー連合内のあちこちで既に(いくさ)は起きている。

 キラーはまさにその状況に直面したのだ。

設定解説


・Sクマーベアー


熊の頭をもつ猛獣型の白銀級ケイオス・ウォリアー。

その強大なパワーと、それにより繰り出される爪は量産型機を容易に粉砕し、同級の機体でも圧倒する事ができる。

半面、それなりにタフではあるが、装甲強度はそれほどではなく、運動性能は白銀級においては低い方。防御性能にはやや難があるといえる。

また独自兵装の射撃武器も持っておらず、汎用の換装武器に頼るしかない。


この回ではとりあげられてハイマウンテン国の格納庫に接収されており、本来の操縦者は量産機に乗せられている。

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