その頃、別の場所にて 2
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
――人里離れた山中の塔、その前にひらけた広場——
地響きとともに人造の巨人が倒れた。量産型のケイオス・ウォリアーが。
それを打ち倒したのは、やはり量産型のケイオス・ウォリアー。どちらもこの世界で最もありふれた機体、剣と弩で武装した巨人・Bソードアーミー‥‥全く同じ機体である。
だが片方はほぼ無傷、倒れた方はあちこちを破損。一方的な戦いであった。
倒れた機体からふらふらとゴブリン兵が這い出して来る。
それを操縦席で見て笑うのは勝った機体に乗る、金髪に染めた髪をオールバックにした少年‥‥ゴブリン兵と同じような革鎧を着ているが、れっきとした人間である。
彼は倒した相手を嘲り笑った。
「ははっ、全然弱いっての」
「元魔王軍とやらも大した事ねーな。まぁ負けちまった連中なら当然か」
同調して笑うのは、側で同種の機体に乗る少年。
その側にもまた同種の機体があり、それにも少年が乗ってニヤニヤと性悪な笑みを浮かべていた。
彼ら三人は皆、キラーの同級生である。
武器を手に他の生徒を見捨て、塔の外に出て魔王軍残党に付いてきた。
そしてしばらく訓練を積まされたのである。武器、魔法、ケイオス・ウォリアーを使った戦闘の訓練を。
この世界の原住民達より高レベルの異界流を有する彼らは、既にいっぱしの技量を身に着けていた。
魔王軍残党の、並の兵士を上回るレベルを‥‥。
「お前達、あまり調子に乗っていると‥‥」
重装甲砲撃機に乗るオーガー兵が苛立ってつめよった。
だが三人は全く恐れたりしない。
「乗っていると、なんだよ?」
「あのな、オッサン。お前らは強い味方が欲しくて俺らをこんな世界に呼んだんだよな?」
「それはお前らが弱くて俺らが強いって事だろうが」
口々にオーガー兵を小馬鹿にする少年達。
「で、乗ってるとなんだって? 異界流を持つ聖勇士の俺らによ」
「このロボットで戦うか? 生身でもいいぜ」
「ほら、言えよ。調子に乗っていると何だってんだよ」
彼らには自信があるのだ。
オーガー兵に確実に勝つ自信が。
そしてオーガー兵は口籠り、思わず一歩退いた。
それは少年達の自信が正しいと知っているからだ。
だがそこへ声がかかる。
穏やかに、落ち着いた声が。
『調子に乗っていると痛い目を見る。足元をすくわれる。己の弱さを思い知らされる』
ケイオス・ウォリアーの足音。
そちらを見た少年の一人が思わず口にする。
「スターゲイザー‥‥!」
漆黒のフードローブを纏った、魔術師のような、死神のようなケイオス・ウォリアー。
その操縦者がこの残党——真魔怪大隊を率いる者である事を、少年達は相手の声から悟った。
漆黒の機体が片腕を持ち上げる。
『答えてやったぞ。次は教えてやろう』
その手の先にエネルギーが収束した。
膨大で圧倒的なパワー、そして自分達を束にしてもなお数段上回る強大な異界流‥‥それを感じ、三人の少年たちは咄嗟に動いた。
身を縮めて守ろうとする者、避けようとする者、反射的に弩を射る者とに。
光線が炸裂した!
矢は消され、射た機体は一撃で吹き飛ばされた。
避けようとした機体も呑み込まれ、火花を吹いて倒れた。
身を守った機体のみ、全身から煙をあげつつも、なんとか持ち堪える事ができた。
だがそれで終わりではなかった。
『教えてやったぞ。次は‥‥思い知らせてやろう』
スターゲイザーがそう言うと、再び機体の指先にエネルギーが収束する!
「ま、まて! わかった、もういい!」
持ち堪えたただ一機から少年が必死に叫んだ。が――
光線は矢を射た機体を撃った。
「ぎゃああ!」
中からの悲鳴。その機体は派手な爆発を起こし、粉々になった。
「わ、わかったって言ってんだろ!」
持ち堪えた機体からの声はもはや泣きそうだった。
しかし‥‥
『その口の利き方でか?』
スターゲイザーの声は冷たい。
機体の指先に、三度、光が集まり出していた。
少年は「はっ!」と気づき、絶叫する。
「わかり、ましたぁ! 許してください!」
スターゲイザーの機体が指先を下ろした。
少年が「ほっ‥‥」と安堵の息を吐く。
だがそんな彼に、スターゲイザーはなお声をかけるのだ。
『生身で続きをやってもいいが、どうする?』
と。
少年は再び叫んだ。
「す、すいませんしたァ!」
くるり、とスターゲイザーの機体が背を向ける。
『生きていたら手当をしてやれ。嫌なら無理にとは言わん』
そう通信をオーガー兵に送った。
爆発した機体から、間一髪、脱出装置で操縦者の少年が飛び出していたのだ。
だが爆風により地面に叩きつけられ、身を起さずに痙攣している。
それを見てオーガー兵は慌てて答えた。
「あ、や、やっておきます」
恐怖に震える声で。
詫びた少年へ、スターゲイザーは静かに声をかける。
『お前達が力を揮う相手はこちらが決める。従い、結果を出したなら、それに応じた報酬を与える。金でも酒でも女でも。ゆくゆくは町や国さえも。勝ち組、という奴に‥‥なりたいだろう?』
「は‥‥はい‥‥」
そう少年は応えたが、声には恐怖しかなかった。
『お前達が力を持て余している事はよくわかった。明日から現場に出てもらう。はりきれよ、将来の王ども』
そう言うと、スターゲイザーはもはや一瞥もせず、少年達をその場に残して塔へと引き返した‥‥。
今回の作品では、ケイオス強度を数値化して、バトル漫画でいうところの戦力値的な表記にしようかと思っている。
とりあえず主人公を100万パワー、当面のボスを1000万パワーにでもしておけば王道になるか。
もちろん新章になる度に敵は1500万パワー・5000万パワー・一億パワーと上がっていくのだ。
主人公は「こいつはケイオス強度を激しく変化させやがる!」という事にしておけば、まぁどんな敵に勝っても問題は無いだろう。