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1 戦乱突入の巻 10

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

——ハイマウンテン城・中庭の隅——



 キラーは遠巻きに木製の小屋を眺めていた。

 やや古ぼけた一軒家。このコテージはキラーの物である。

 彼の手柄が認められ、城内の離れを報酬の一つとして貰えたのだ。


(ただの食客以上の待遇‥‥これが、俺が昇った成果の第一歩というわけか)

 物自体よりも己が評価された事の喜びを噛みしめながら、キラーはコテージに入った。



——キラーの家の中——



「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 キラーを出迎えたのは一人のメイド。

 抜けるような白い肌、青灰色の瞳と白く長い髪。その髪の中、赤いリボンが頭の両サイドに一見生えているよいに見えた——それが彼女の器官の一部だと、知らぬ者にはなかなかわかるまいが。

 彼女はにっこり笑顔を見せてから、丁寧に一礼した。

「キラー様のお世話をさせていただきます、メイドのディナルです。ふつつか者ですが、よろしくお願いしますね」


 彼女を前に、キラーは‥‥じっと値踏みするような目を剥けていた。

 物音も人の気配もした。誰かがいるのはわかっていた。

 それが専属の使用人だった事が、今、わかったわけだが——

(俺の一人暮らしじゃないのか‥‥)

 あまり喜んでいなかった。


 頭を上げたディナルは、そんなキラーの視線を前に、笑顔のまま「?」が頭の上に浮いていた。

 一歩踏み出そうとし——

「きゃっ! はわわ!」

 何もない所で前につんのめってしまう。

 そのままキラーへしがみつくような恰好になった。

 密着しながら上目遣いでキラーの顔を覗き、苦笑半分、舌を出す。

「テヘ、恥ずかしい所をお見せしました」


 キラーは——冷ややかな目で見ていた。


「あの、キラー様? な、何かご不満でも‥‥」

 流石に気まずいか、ディナルが戸惑う。

「いや。俺の働きを評価しての報酬なら、喜んで受け取る。ただ‥‥俺が一人で住むと思っていたからな」

 そう言ってキラーはディナルを優しく、しかし躊躇なく引き離した。

 一転、彼女は大慌て。

「そ、そんな! 救国の英雄なんです、お世話をさせていたいだいて当然、私も光栄の至りです! せいいっぱい頑張ります、お側に置いてください」



 小さく溜息をつくキラー。

「まぁ君も仕事だろうから、断りはしない。じゃあさっそく頼む」

「はい! いかがいたしましょう?」

 元気よく訊くディナルに、キラーは淡々と告げた。

「晩飯を頼む。日が暮れる頃には戻ってくるから」

 そう言ってくるりと背を向けてしまう。

 半ば慌てて声をかけるディナル。

「え、え? 出かけられるんですか?」

「出かけるというか、訓練があるからな。サイシュウさんを待たせているから。じゃ」

 次の瞬間、キラーの姿はそこに無かった。

 いつどうやって出て行ったのか、ディナルには皆目見当もつかない。



 一人残されたディナルは——がらりと声の調子を変えた。

「‥‥見に来ただけなんかい」

 そして「チッ!」と舌打ち一つ。

「最初が肝心なのに、微妙か。私の愛想の何が不満だってんだ。ちょいドジ娘路線はあかんかったか?」

 自分のスカートをつまみ上げ、真剣に考える。

「もっと短くしたら鼻の下伸ばしてくれねーかなー。でも股を開くのは最後の手段にしねーと‥‥後がねーのに遊びに使われてポイとかされたらマジ終わるしなー」

 低い声で「ぬうう‥‥」と唸り、ディナルは家具のほとんど無いコテージ内を見渡した。

「次の作戦を考えておくかー」



 戦っているのも成り上がりたいのもキラーだけではない。

 様々な場所で、様々な者達が、日々上の生活を目指しているのだ。

【登場キャラ解説】

ハウスキーパー ディナル

 ワーホライモリのメイド。頭の左右にある赤いリボンは実は呼吸器の一種。

 外見は十七歳前後の少女だが、これは幼形成熟する種族なので若く見えるため。本当の年齢は三十路まで余裕無し。

 「まだ二十代だからメチャ若い」とは本人の弁。

 インタセクシルは十台中~後半での結婚もそれほど珍しくない世界であり、彼女はそれぐらいの年齢から「できれば素敵な人を見つけたい」と普通の事を考えていた。

 だが「できれば」のハードルが結構高く、地位・収入・容姿・身長・家柄・実家の資産と多岐に渡っていたため、気が付けば十数年の時が流れていた。

 「結婚だけが女の幸せじゃねー」と正論を吐くようになり、仕える主人で生活レベルを上げる建設的な要望へ思考がシフトする。

 そんな彼女の前に高名な英雄の連れて来た見所のある(出世しそう、の意)若者が現れたため、イチバチ勝負に出るべく、キラーの専属メイドへ必死に志願した。

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