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1 戦乱突入の巻 9

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

 モニターに表示される戦闘用MAPには、もはや敵を示すアイコンは見当たらない。

 サイシュウは通信を送る。

「とりあえず戻って王に報告すっか。お前さんの大勝利をな!」

「俺の力で、と言うにはまだまだですが‥‥一歩進んだとは思いたいですね」

 そう通信を返したキラーだったが——敵機の残骸が転がる中で、動く者を見た。



 コリーン軍隊長の熊騎士は焦げた大地をよたよたと歩いていた。

 鎧はあちこち破損し、毛は所々で焦げて縮れていたが。

 危うい所で脱出し、獣人のタフネスでなんとか気を失わずに耐えた。命からがら故国へ逃げ帰ろうとしながら、一人毒づく。

「く、くそぅ。ニンジャめ、汚い‥‥」


「貴様に言う資格は無い」

 そう言ったのは、斜面の上、少し離れた所に立つキラー。

 熊騎士を見つけ、機体から降りたのである。


 ぎょっと目を剥いた後——恐れが滲んでいたものの——熊騎士は剣を抜く。

「おのれ! 我が魔剣・ハイスラーでボコッてやるわ!」


 そう叫んだ熊騎士の額に手裏剣が刺さった。

「ガギゴゴ‥‥」

 呻きながら倒れる熊騎士。

 無残。クマナイトはニンジャに倒された。



 これがこの物語冒頭の、地獄のような戦場跡である。



——その日の夜。ハイマウンテン城——



「なんと‥‥! コリーンの攻撃部隊を、見つけた途端に撃破してしまったのか! たった二機で‥‥」

 報告を受けたサンタナ王は呆気にとられていた。周囲の大臣達も信じられないといった表情で互いに顔を見合わせている。

 だが確かな証拠をつきつけられては否定などできない。


「おのれおのれ、ハイマウンテンの劣等人民め! 貴様等が黄金の栄光ある騎士を虜囚とする事自体が人権の蹂躙だ! このレイシストども、恨みは五千年忘れないからな!」

 顔を真っ赤にして怒鳴り散らす、コリーンの女騎士を捕虜にして、王座の前に引きずり出しているのだから。


「で、このうるせー女はどうしますか。斬首か磔か、今やるか五分後にやるか、早いところ決めるべきだと思いますぜ」

 クソマジメな顔で王に進言するサイシュウ。

「そ、そうだな。私としてはコリーン国の動向を、その騎士から情報提供してもらいたいと思うのだが‥‥」

 遠慮がちに王は言う。

 しかしその態度を見て女騎士は吠えた。

「教えてやる! 我が国はこの国を蹴散らし征伐して植民地にしてやるのだ! 大した力も無い後進国のハイマウンテンが帝位に手を伸ばすなどとのぼせたのが悪い! コリーンに降伏しろ! 土下座だ! 三度の土下座を三回繰り返せ! 無条件降伏すれば命だけは助けてやる!」


 なぜ捕虜なのにこんなに強気なのか? それは王が戸惑っているのを、弱腰で恐れていると思い込んだからである。

 弱っている相手は棒で叩くべしという強気交渉はコリーン国の優秀な文化の一つだ。



 女騎士の後ろには、上手く脱出して生き延びた敵兵士達も捕虜として連行されている。半分近くは人間だが、他は熊の頭をもつ獣人だった。

 キラーは彼らへ近づき、冷たい声で訊いた。

「このままでは処刑という事になるな。お前達も同じ態度か?」

 兵士達、全員いっせいに首をブンブン横にふる。

「NOです! NOです!」「隊長が無理に戦わせました! 俺達は被害者です!」「何でも訊いてください! 何でも答えますぜ!」


 全員綺麗に意見は一致。

 女騎士独りが頭から湯気を吹いて吠える。

「うううおおお! 裏切ったなキサマらー!」

 そのすぐ側でサイシュウがダンビラを担いだ。

「死ぬまで意地を貫くなら、それは尊重してやる。無駄に苦しまねぇよう、一発で叩き斬ってやるからな」


 途端に女騎士が床に転がり、手足をじたばたさせて今まで以上の大声で泣き叫んだ。

「ひどいひどい虐待だ! 攻撃命令を出した王が無理に戦わせたんだ! 私は被害者だぁー!」



 この場にはキラーの同級生達のうち、城で働く事を考えている者が数人、見学に来ていたのだが‥‥その中にいたソフィアが、駄々をこねて泣きじゃくる女騎士を見て呆れる。

「この世界の騎士って、ああいうモノなんだ‥‥」

「断じて違います」

 側にいたハイマウンテンの騎士の一人が即座に否定した。


 ハイマウンテンの他の者達も概ね呆れるか嫌気がさしていたが、一人、ティア姫だけはほっと胸を撫で下ろした。

「でもこれで、コリーン国との和平への道も見えてきましたね」

「ど、どこに‥‥?」

 耳を疑いながら目を丸くするソフィア。

 女騎士の(やかま)しい泣き声が延々響く中、姫は嬉しそうに父王へ提案する。


「停戦交渉の使者をコリーン国へ派遣しましょう!」

「うむ。今が好機だな」

 王は娘と頷きあう。そして二人、同時に同じ方向へふり向いた。


 キラーとサイシュウの方へ。

設定解説


・Sサンライザー


 サイシュウの乗る白銀級ケイオス・ウォリアー。

 和風の甲冑みたいな装甲で、手には大きな刀。頭部はのっぺらぼうの球体で、後頭部には後光のような形の角が何本も出て後立になっている。この独特な頭は太陽をイメージして造られた物。

 装甲と出力を重視した機体であり、攻守両面において高性能を誇る。

 消去光膜イレイザーレースを展開し、敵の攻撃の威力を大きく軽減できるが、この能力は空亡の獣人であるサイシュウ個人のユニークスキル。

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