1 戦乱突入の巻 8
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。
風のように戦場を駆け抜け、山腹の岩に。
紫カラーのニンジャ型機が、マフラーを風になびかせて腕組みしながら立っていた。
果たしてそれは敵か味方か‥‥。
熊騎士は叫んだ。
『ハイマウンテン国の増援には違いない。撃て、撃て!』
まぁマキビシを食らったのだからそう思うのが当然だろう。
熊騎士の号令で兵士達の機体はニンジャ型機に矢と砲弾の雨を降らせる!
だがしかし。
ニンジャ型機はその死の雨の中を機敏に走った。
走りながら最小限の動きで弾を避け、まったくもって掠りもしない!
『ぐぬぬ、なんという運動性だ!』
熊騎士が悔しさで唸る。
その感想は見ているキラーも同感だった。
(俺よりさらに上‥‥!)
Sゲイルイーグルも高運動性をほこる機体ではある。だがニンジャ型機はそれを明らかに上回っていたのだ。
弾の雨を振り切って走るニンジャ型機。
向かうは――キラーのいる方!
(俺に加勢するのか? それとも‥‥)
敵の敵が味方かどうか、それはわからない。
念のため身構えるキラー、その眼前で‥‥ニンジャ型機は跳んだ。
そして宙で、その五体がバラバラに分裂する!
「分離!?」
驚くキラーへ飛んでくる、ニンジャ型機だったパーツ。
それらは稼働し、形を変え、ゲイルイーグルを取り囲むと、不可視の力で引き寄せられるようにぶつかってきた!
だが激突したわけではない。
肩へ腕へ、踵へ靴底へ、胸部へ背中へ、そして頭へ――イーグルの五体にニンジャ型機のパーツが装着されたのだ!
ニンジャ型機は分離・変形し、イーグルの鎧となった。
「合体した!?」
驚愕するサイシュウ。
その声を聞きながら、キラーは戸惑いつつもモニターで状態をチェックする。
(問題無く動きそうだ。しかしこれは――)
一方、熊騎士は地上で怒鳴り声を上げ続けていた。
『やっぱりハイマウンテン国の機体じゃないか! 撃て、撃て!』
熊騎士の号令で、兵士達の機体は再び矢と砲弾を放った。上空にいるイーグルへ、今度こそはと逃げ場もないほど。
だがしかし。
結果から述べれば、ニンジャと合体したイーグルはそれだけの集中砲火を無傷で避けきってしまった!
翼を広げて急発進、初速から既に先刻までのトップスピードを上回り、稲妻のごとき鋭角な軌道を見せながら飛ぶ。重力や慣性など知らぬとばかりに縦横無尽、敵軍の弾などまったくもって掠りもしない。
『ぐぬぬぬぬ、どこまで速くなるんだ!』
熊騎士が悔しさで唸った。
それほどの速度で飛びながら、キラーは操縦席で驚嘆していた。
(この運動性‥‥! ニンジャ型機のスピードがイーグルに乗り移った、いや、上乗せされたかのようだ!)
モニターに表示されている数字もそれを裏付けていた。HP・装甲・運動性・EN‥‥全てのステータスが大きく上昇している!
そして武器に至っては――
(攻撃力の上昇‥‥だけじゃない? 新たな武器も追加されている!)
そのうちの一つ、属性表記に【MAP】と出ている武器。それにキラーは触れた。
「サンダーボルトダイバー‥‥?」
にわかに暗雲が立ち込めた。
稲妻が光り、イーグルへ落雷する!
だがそれは機体を傷つける事なく、両の翼に吸収されたのだ。
電光を眩く迸らせながら、イーグルは敵軍へ急降下を仕掛けた。
『く、来るか! 叩きのめしてやるぞ!』
熊騎士が吠え、乗機Sクマーベアーが両手の爪を鋭く伸ばした。
『ベアークロー!』
武器の名を叫んで太い腕を振り上げ、迎え撃つ準備は万全だ。
なまじ敵が高スピードを出しているぶん、剛腕で叩きのめせば一撃で粉々にできる自信があった。
そして電光と化して突っ込んで来るイーグルは!
急降下しながら急激に速度を増し続け!
コリーン軍へと、地上へと達する事無く急旋回・急上昇!
稲妻だけが分離し、雷火の球となって地上に着弾した!
そして爆発的に膨れ上がり、周囲一帯を高圧電流が荒れ狂い焼き払う!
『ウギャアァア!』
その中心で電撃をまともに食らい、悶え狂うベアーの操縦席で熊騎士が絶叫した。
周囲の兵士達、量産型機どもは哀れ爆発四散!
稲妻が散って収まった時、その一帯はブスブスと煙をあげて焼け焦げていた。
兵士どもの機体はことごとく破壊され、倒れている。
ただ隊長機のベアーだけが、あちこちから火花をあげつつもまだかろうじて立っていた。
操縦席で死にそうな呻き声を漏らす熊騎士。
『うおぉぉ‥‥卑怯なニンジャめ‥‥』
卑怯かどうかは意見の分かれる所だろうが、無慈悲ではある。
稲妻をぶつけた範囲攻撃も、そして——
「トドメだ」
キラーがそう言いつつ繰り出した次の攻撃も。
既に再度の急降下が行われていた。
キラーの肩でストライクが体色を虹色に変える。
するとイーグルも虹色の輝きを放った。そして次々と全く同じ姿を造りだす。
『分身した!?』
驚く熊騎士のベアーへ、何体ものイーグルが襲い掛かった!
驚いたのは戦闘を見ているサイシュウも同じだ。
(分身か。しかし残像や虚像の類じゃねぇ‥‥どのイーグルも個別に動いている!)
イーグル達はベアーを取り囲みながら、各自、鎖分銅を投げつけ、敵の五体を雁字搦めにして捕らえる。
『おいおい本当に卑怯‥‥ガギゴゴー!』
醜い断末魔をあげる熊騎士。縛られただけではなく、鎖に電撃まで流されたのだ。動けない全身を電撃が無慈悲に焼き、火花をあげる!
さらに刀が投げつけられ、ベアーは首を刎ねられた。
「邪道怨殺剣(けん・けん・けん)‥‥!」
印を結ぶイーグルからの、キラーの冷酷な声が木霊する(エコーは自前)。
そしてベアーは、爆発四散!
コリーン軍は全滅した。
残骸の間を冷たい風が吹き抜ける。
敵がいなくなると、イーグルのボディから鎧となっていたパーツがいっせいに外れた。
それは宙で再合体し、ニンジャ機に戻り、そして――小さな竜巻が一つ起こると、その中へ掻き消すように消えた。
残るはキラーのイーグルとサイシュウのサンライザーのみ。
「何だったんだ、ありゃあ?」
首を傾げるサイシュウ。
キラーは己の肩に停まっているカメレオンを見つめた。
「ストライク‥‥お前が呼んだのか?」
カメレオンは何も答えず、ただ目玉をぐりぐりと回すのみ。
キラーは合体寸前に表示されていた、ニンジャ型機の名前を思い出していた。
(確か――HIEIMARU‥‥ヒエイマル、というのか。あれは)
謎のニンジャロボが勝手にやってきて頼まれもしないのに合体する。
実はこれが一番やりたかった部分。
よってこの作品はあと全部消化試合。ヘイゴー連合統一まで思いついた事から順番に並べて終了まで行きます。
この主人公でやりたい事が思いつかなくなったら最終回になります。