表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/137

1 戦乱突入の巻 7

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

 一斉に突進してくるコリーン軍。

 それへサイシュウのSサンライザーは真向からぶつかり、キラーのSゲイルイーグルは上空へと飛ぶ。



 巨人兵士型の量産機どもがサンライザーへ斬りかかった!

 だがその刃はバリアで阻まれ、届かない。

 逆にサイシュウ機が刀で反撃すると、コリーン軍の機体は次々と斬り伏せられていく。

『ウギャアア!』

 無残な悲鳴をあげるコリーン兵。

『な、なんとかしろ!』

 熊頭の隊長機が叱咤するが、兵士は狼狽(うろた)えるだけだ。

『効きません! ば、バリアのせいで!』


 そこへ上空から手裏剣が飛んできて、哀れな兵士の機体の頭に刺さった。

 兵士の機体は倒れ、隊長機は慌てて上空を見上げる。


 ゲイルイーグルは縦横無尽に空を飛んでいた。

 大砲を担いだダンゴムシ頭の機体がそれを狙っているのだが、高速で自在に飛ぶキラー機相手に、弾はことごとく外れてしまう。

 手裏剣を投げ、刀を抜いて急降下するイーグルは、敵機を一機ずつ着実に撃破していった。


『ぐぬぬ‥‥う、撃ち落とせ!』

 熊頭の隊長機が部下を叱咤する。

 だが――

『あ、当たりません! 速い!』

 兵士からは泣き言が返って来る。


『ヘタクソ! バカモノ! 病身劣等兵士どもめ!』

 怒鳴り散らす敵隊長。

 そこへ呆れ半分、苛々半分、それでいて抑えた声で通信が入った。

「部下ばかり怒鳴ってないで、お前が本気を出せばどうだ」


 慌てるコリーン隊長機の、百メートルにも満たぬ先。

 キラーのゲイルイーグルが降り立っていた‥‥!



 兵士達が『うわっ!?』と悲鳴をあげて後ずさる。

 隊長機も思わず一緒に退いていたが、すぐに気を取り直して、前に踏み出し怒りの声を上げた。

『言ったな! 出してやるぞ!』


 イーグル操縦席のモニターに敵隊長が映る。

 長い髪を後ろで束ねた、目つきは少々キツいがなかなかの美女だ。頭には丸い小さな獣耳がある。パイロットスーツは騎士らしく西洋風の甲冑。

 女騎士は叫んだ。

『べあー!』


 途端に獣毛が肌を覆う。牙が伸び、つぶらな瞳が爛々と輝いた。

 一瞬にして、騎士の頭部は熊のそれになったのだ!


(熊の獣人‥‥変身するタイプか。それに何か重圧のような物が濃くなった‥‥?)

 敵の存在を色濃く感じさせる、ある種のエネルギー。一般の兵士からは微かに、熊獣人の女騎士からはかなりの濃度でそれを感じる。

 それこそが異界流(ケイオス)と呼ばれる次元のパワーである事。それを強大に有する熊騎士が並の使い手ではない事。それをキラーは、今、改めて認識していた。

 そんなキラーの機体へ、熊になった女騎士が乗る熊頭の機体が大剣を振り回した。



 刃とともに、旋風が吹き抜けた!

 一撃!

 だが熊騎士の剣は空を切り、それを掻い潜ったイーグルの鉄拳パンチが敵の胴を打っていた。

 接近戦での勝負はキラーに軍配が上がったのだ――


 ——と、見えたが。

 熊騎士が笑う!


『ウェハッハー! パワーがダンチだな。ケイオス・ウォリアーは操縦者と一体化して動かすが故に、今のこのSクマーベアーは私のパワーが乗り移った鉄の塊だ!』

 変な笑い声と勝ち誇った叫びをあげ、熊騎士の機体は至近距離にいるイーグルに掴みかかった。

 剣などあっさり離し、捨ててしまう!

 思わぬ攻撃に対処しきれずイーグルは捕らえられ、抱えられ、太い両腕で締めあげられた。


(こう来るとは! これは‥‥ベアハッグ!)

 やはり部隊長だけあり、熊騎士は強敵であった。その考えが正しかった事をキラーは知る。

 一方、熊騎士は操縦席で勝ち誇っていた。

『ウェハッハー‥‥スモウの起源は我がコリーン国だ。この必殺のベアハッグ、ブレイキングブリーカーで死ねェ!』



※熊騎士は混同しているが、ベアハッグは主にプロレスで使われる技であり、相撲のよく似た技は鯖折という厳密には異なる物である。



 とどめとばかり、熊騎士は両腕に力を籠める。

 だが次の瞬間——スルリというかスポンというか、イーグルはクマの締め付けから飛び出すように脱出した。


『えっ!?』

 思わずつんのめる熊騎士の上空で、イーグルの両肩の間接部分がガチャガチャと音を立てた。

「なるほど。操縦者と一体化する、か」

 己がやった事ながら、感心して呟くキラー。


 本人以外、どうやって脱出したか理解した者がどれほどこの場にいるだろうか。

 キラーは両肩の間接を外し、同じ事を機体にやらせる事で締め付けへの余裕を作った。そして上空に逃れて関節を元に戻したのである。

 ニンジャの術は己の五体全てを操る。

 ニンジャの世界では常識など一切通用しない——常識は通用しないのだ!



 呆気にとられていた熊騎士だが、すぐに我を取り戻して悔しさに吠える。

『よ、よくわからんが、逃げ回っても私は倒せないぞ!』

 そして後ろの部下達へと振り返った。

『お前ら! 見てないで撃ちまくれ! 地上に来た所を私が仕留めてやる!』


 言われた部下達、慌てて弓や大砲等の照準をイーグルに合わせる。

 それを見てサイシュウも動こうとした。

(タイマンやめるならこっちも加勢させてもらうぜ。ま、キラーも流石に敵の大将首を独力で獲るのはまだ難しいか‥‥)


 しかし、その時。


 キラーの肩で、ストライクが「シャー」と息を吐いた。

 直後、戦場に響き渡る音が!


 ヴォーヴォヴォー‥‥


「ん? 法螺貝?」

 その音を聞いて訝しむサイシュウ。



 突然、どこからともなく。

 黒い影が戦場を走った!


『ウギャアー! なんじゃー!?』

 悲鳴をあげて兵士達の機体が跳び上がった。

 その足には無数のマキビシが刺さっている!


 攻撃を邪魔された熊騎士が影を目で追った。

 風のように駆け抜け、山腹の岩に立つ、その姿は――

『に‥‥ニンジャ!?』


 そうとしか形容のできない紫カラーの機体が、マフラーを風になびかせて腕組みしながら立っていた。

【登場キャラ解説】

熊獣人の女騎士 アリン=カーム

 半万年の起源をもつ文化強国コリーンの女騎士。

 変身型のクマ獣人で、普段は獣耳をもつ女性だが、戦闘時には屈強なクマと化す。この時衣服は消えるが鎧はサイズを合わせて着用したまま。

 性格は勇猛にて獰猛。また勝率の低い勝負を恐れない豪胆さも併せ持ち、キラーの敵として立ちはだかる。

 そのパワーと接種するニンニクの量は作中でも上位に位置する猛者。

 乗機Sクマーベアーは攻撃特化型のパワー機体。



設定解説

・コリーン大王城壁画

コリーン国の古墳から出土した壁画。

男二人が組みあっている絵であり、推定35700年前の文化遺産。

王家に伝わっていた伝説に基づき、コリーン王家始祖の編み出した究極のフェイバリット・ホールドを描いた物だとされていた。

だが見る度に細部が変化するという特徴をもっており、同国学会において「50000万年の歴史を持つコリーン国の様々な古代文化も記録されていた」という説が提唱され、満場一致で可決された。

この説に従うと、インタセクシル最大の大陸における文化の大半はコリーン国が発祥となる。


※「50000万年」は誤字ではないのか、との指摘があり、事実その通りなのだが、コリーン的表現の一つとして存在するという設定にした。異文化の表現が一つ増えて喜ばしい限りである。

なおご指摘には感謝しています。ありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ