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1 戦乱突入の巻 6

キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

「練習中に敵と遭遇か。実戦てのはままならんもんだなぁ」

 ぼやくサイシュウに、しかしキラーが言ったのは――


「でも幸運でしたね」


「ほう?」

 訝しむサイシュウ。

 しかしキラーは確信をもって言う。

「ちゃんと敵を発見できたのですから。そうでなければ街での戦いになっていました。今ならここで食い止められます」

 サイシュウは「ほう‥‥」と、少し感心した。


 ハイマウンテンは一城とその城下町だけの、極めて小さな国だ。これ以上進まれたら首都での防衛戦をやるしかない。

 だから可能な限り国境で敵を止めたいのは確かだ。が‥‥

「この状況で食い止めるなら、俺らだけで戦う事になるな」


 その厳しい状況を、キラーはこう見ていた。

「サイシュウさんなら勝てますよね?」


「まぁな」

 肯定しつつも、サイシュウは小さく溜息。

(流石にまだオレ頼りかよ。まぁ仕方ねーが)


 だが、その考えは違った。

 キラーの言い分は、こうだ。

「ならば場数を踏むため、ここで戦わせてもらいます。いつまでも面倒を見てもらう訳にもいきませんから」


 驚くサイシュウ。

(万が一自分が倒されても保険があるから、か。こりゃあオレと肩を並べて戦う気だな)

 そう考えると笑いがこみあげて来た。

()()()の判断も考えも、傭兵としては失格だぜ? 今の正解は帰還して雇主に報告、次の指示を待つ‥‥だ。敵を獲物としてしか見ない、場数こなすための踏み台扱い、明らかに軽んじている。これが駄目な事はわかるな?」

「はい。わかります。頭では」

 承知しているかのようにキラーは言うが‥‥


「でも、やるんだな?」

 その確認には即答だった。

「はい」

 と。



——見晴らしの良い緩やかな山肌の斜面をコリーン国の部隊は進む——



 前方に立つ二機のケイオス・ウォリアーを発見し、コリーンの部隊は止まった。

 手に手に武器を構えるが、そんな彼らへと、立ちはだかる機体から通信が入る。


「アーアー、警告、警告。そちらはハイマウンテン国の領土を侵犯している。すみやかに退去されたし。コリーン国には後ほど被害の賠償を請求する。これ以上の侵攻には武力を行使して防衛にあたる」

 しかしどこか気の入っていない、緊迫感の無い警告だ。

 それもあって、部隊を率いる隊長は鼻で笑いとばした。

『フン、無識な後進国のハイマウンテンが思い上がったものだ。スイデン国に王子を差し出し、魔王討伐の手柄のおこぼれで帝王の座を目論む卑怯な国め!』



(女か)

 相手からの通信で、キラーにはその性別がわかった。相当に穿った物の見方をこの国へ向けている事も。

 女騎士の声は通信機から威勢よく流れ続ける。

『次の帝王は我らコリーンだ! 他国の頭を後ろから殴る卑劣な貴様らを成敗してやる! 三度の土下座を三度繰り返して降伏しろ!』


「魔王との決戦に兵の一人も送らなかった連中がよく言うもんだ」

 呆れるサイシュウ。それでキラーはなんとなく気づく。

「だからこそハイマウンテンを討ちたいのかも」

「まぁそうだろうな。ぶっちゃけハイマウンテンの軍事力は、ヘイゴー内でも下から数えた方が早い筈だし。なまじ魔王討伐に尽力した経緯があるせいで、次期帝王を狙う国から見ればボーナスキャラなのかもな」

 サイシュウもその意見を肯定した。


 つまりコリーン国の思惑としては――

(魔王を討った実績をもつ国を倒し、傘下においたという‥‥その結果が欲しいからか)

 現状で最も大きい手柄を持つ奴を倒せば、その上を行く事を証明できるというわけだ。

 弱小国が消耗までしている今が、まさにその絶好のチャンス。


 キラーの胸に嫌悪感が湧いた。

(汚え)



 一方、敵の女騎士は自軍へ声高に指令を出す。

『劣等征伐だ! 我らの手でハイマウンテンを落すのだ!』

 配下の各機から(とき)の声があがる。

 得物を構え、照準を合わせ、コリーン軍はキラーとサイシュウへ雪崩かかった。

 戦法もへったくれもない。数は数倍なのだ。力の差で一気に推し潰す事しか考えていない。


(いくさ)に参加する事になってしまったけど、初陣がこれで良かった)

 キラーは押し寄せる敵を睨みつけた。

(遠慮も躊躇(ためら)いもなく、全力でやれる‥‥!)

設定解説


・Sゲイルイーグル


ハイマウンテン国が有する唯一の白銀級機。

同国最強を誇る機体であり、高い空適応と高機動・高移動力をもつスピードに優れる機体。

だが強力な固定武装がなく、機体そのものの火力には乏しい。

ケイオス・ウォリアーは操縦者と一体化して動かすため、威力のある闘技や魔術を習得している者が乗ればこの弱点は補える‥‥逆に言えばそこを補えない操縦者でなければ決定打を持つ事ができない。

そういうわけで操縦者に頼る部分の大きい機体であり、これが空席のまま放置されていた理由でもある。

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