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1 戦乱突入の巻 5

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

 庭に面した渡り廊下を歩きながら、キラーとサイシュウは午後の打ち合わせをしていた。

 国境線までSゲイルイーグルの試し乗りを、Sサンライザーを同伴して行う事になっている。

「完熟訓練も兼ねての偵察だ。どこかで野良のLサイズモンスターを見つけて、戦闘の練習もしたい所だな」

 そのサイシュウの意見にキラーは頷き――


 二人は庭の池から、亀がのそのそ出て来るのを見た。


 人ほどの大きさがある巨大な亀だ。

 それは緩慢な動きで、明らかに二人の方を目指していた。


 戸惑いながらも亀が来るのを待つキラー。

 目前にきた亀は、首を伸ばして彼を見上げた。

「この亀は?」

 キラーが訊いても、サイシュウは「さあ?」と首を傾げるだけだ。

 そうしていると、亀が甲羅の中に引っ込んだ。


 そして甲羅の中から、頭を抱えたティア姫が恐々と顔を出す。

「‥‥キラー様、サイシュウ様。出撃されるのは、(いくさ)が始まるからですか? 他国の軍が攻めてきているのですか?」

 泣きそうな顔で、姫はそう訊いた。


 数秒、沈黙。

 ストライクが目玉をぐるぐる回す。


 見ている物への理解がまだちょっと追いつかないが、それでもニンジャらしく平静を装うキラー。

「それを確認しに行きます。今の所、そんな報告はありませんが‥‥」

 姫は安堵してほっと一息。

「よ、よかった」


 亀の甲羅が上下に分割された。

 甲羅は見る見る縮み、姫の頭の両サイドで円形の装飾品になる。

 しずしずと立ち上がるティア姫。

「お見苦しい所をごめんなさい。情けない事ですが、私、根が臆病なので‥‥」


 性格はともかくとして、さっき見た物は何なのか。

「あの‥‥なぜ亀に変身していたんです?」

 キラーの質問への、姫の返答は――

「変身型の亀獣人(ワータートル)ですから」


「おっと、まだ言ってなかったか。ヘイゴーに属する国は全部、獣人の国だぞ。連合内の人口は過半数が獣人だ」

 目を丸くするキラーへ、なんとか気を取り直したサイシュウが説明した。

「で、このハイマウンテン国の国王は亀の獣人な。子供は男女ともに何人かいるが、亀の獣人はこの姫さんだけなんだと。だからこの姫さんが正統な後継者で、次の王はこの子の旦那が就くそうだ」


「兄弟で種族が変わるんですか!?」

 驚き再び。

 頷くサイシュウ。

「この世界、子供は両親どっちかと同じ種族になるからな。正妻は亀獣人だからこの姫さんも亀獣人。だが他は妾腹の子で、ご丁寧に全部違う種族で、ご丁寧に全部母親と同じ種族だったんだと」


 まぁそこには納得した。

 しかしキラーは姫の頭の二つの円盤をまじまじと見つめる。

「頭の横にあるのは甲羅だったんですか‥‥」

 頷くサイシュウ。

「人間の頭に獣耳がついてる獣人種も多いからな。亀の獣人が同じような位置に甲羅がついていたっておかしくはあるめぇ」


(いや、おかしいような‥‥?)

 キラーはそう思ったが、口には出さなかった。



——数時間後。国境線近く——



 山林を歩くSサンライザー。その遥か上空には、翼を広げたSゲイルイーグルが飛んでいる。

 予定通り、二人は国境線を偵察に来ていた。

 最も不穏な動きを見せているというコリーン国への関所が、今日の目的地だ。


(これが空か‥‥!)

 ケイオス・ウォリアーは操縦者が一体化して動かす。今、キラーは翼をもつ鳥人として、気流に乗って大地を見下ろし、風と一つになっていた。

 以前の吉良(きら)ならすぐにバランスを崩して墜落していただろう。

 だが今のキラーは、その平衡感覚と敏捷性で、自在に空を飛んでいた。

 上にも左右にも前方にも、無限に広がる空間——そこに束縛は無い。速度と高度が与える怖ささえも心地よい。


(ハングライダーやウイングスーツに魅了される人がいるのもわかるな‥‥)

 

 全てから解き放たれたかのように錯覚していたキラーだが、それをサイシュウからの通信が現実へと引き戻した。

「もうすぐ国境だ。何か見えるか」

 キラーは我に返り、前方へ意識を集中する。

 機体の目を通じて、キラーへ地上の様子が伝わった。



「‥‥はい。関所が燃えています」

 その報告をした時、キラーの中に先程までの高揚感は無くなっていた。

 声は金属のような冷たい鋭ささえ帯びている。



「おいおい! マジか!」

 驚くサイシュウ。

 キラーは見える物を正直に告げた。

「マジです。初飛行、初偵察で‥‥敵の軍と遭遇しましたね。ケイオス・ウォリアーが十機以上いますよ。境界を‥‥今、超えました」

 魔王軍も使い、ハイマウンテン城にもあった、様々なケイオス・ウォリアー。巨人兵士、犬頭の獣人型、ダンゴムシの頭で大砲を担いだ物‥‥量産型の機体で編成された部隊。

 それを率いる先頭の機体は、無骨で頑丈そうな鎧を纏った騎士で、熊の頭部を持っている。

 それらは関所を破壊し、そこを守るハイマウンテン国のケイオス・ウォリアーを倒し、国境線を乗り越えて侵入した。


 キラーは、敵軍の侵攻に丁度衝突してしまったのだ。

設定解説


・連合内の人口は過半数が獣人だ


ファンタジー世界の獣人といえば、獣が二足歩行しているようなタイプと、獣に変身するタイプとがあるが、この世界・インタクシルにはその両方が混在している。

変身できるタイプでも、人間の姿の時から獣の部位(耳や角など)は持っている事が多いので、それで何種の獣人なのか大抵は判別できる。

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