12 欲しがった想いがそこにあるなら‥‥の巻 5
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
タイキ:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
——数週間後。大陸最大の樹海、その奥地——
道なき道の最奥、山脈に囲まれた森の中。
そこに巨大な穴があった。城の一つや二つは楽に入る大きさ、昼間でも底など全く見えない深さの。
穴を発見したケイオス・ウォリアーの部隊が、縁から中を覗く。
「これ、何でしょう?」
「世界樹があった跡地だ」
スフィル王子に答えたのは、かつてのスターゲイザー‥‥タイキだった。
※世界樹ユグドラシル
この世界インタセクシルの全ての植物の祖とされていた神樹。
天を支えていると形容されるほどの大樹であり、様々な種類の葉をつけ、様々な種類の果実がなっている。
枝・葉・実には貴重な薬効や魔力を秘めた物も多く、それを求める冒険者や研究目的の魔術師などが目指す事も多かった。
だが樹の影響なのか、その周囲は最も大きな大陸の最も大きな森。
そこには無数の魔物も住まう。
さらに樹そのものにも、百頭の竜・鷲の王者・根に住む大毒蛇・知恵ある栗鼠・魔力ある牡鹿・逆さに吊られた愚者等々、無数の魑魅魍魎が住み着いており、目的を果たせた者は稀である。
「それを魔王は持ち去り、自分だけの居城として天に隠した。勇者達はそこで決戦を挑み、世界樹は粉々になってしまったんだ」
その情報は魔王軍壊滅後に独自調査して知った事なのだが。
「なーんだ。じゃあもうただの大きな穴だにゃー」
シャンマウはつまらなそうだが、マンドリオがそれを否定した。
「いや‥‥ここに来るまでに希少種の動植物が沢山いました。世界樹があった事で、特殊な生態系となっていたのでしょう。この穴も、探索すれば何が出てくるかわかりませぬ」
「さっき倒したモンスターがドロップした、貴重素材みたいな物もですか?」
スフィル王子が言っているのは、複数属性の魔力が混じった結晶である。
魔物の体内から採った結石の一種で様々なアイテムに加工できる——その一つがアイテム作成用の特殊な壺D・D・ガッシャーに入れる石だ。
腕組みして穴を見つめるキラー。
「ここにあった物が物だけに、その程度ではないだろう。良いか悪いかは調べてみないとわからないが‥‥」
その肩でストライクがじっと穴の底を覗いていた。
「危険な魔物がいれば倒さないと安心できないし、貴重品が採れるなら特産品になるかもしれない。このダンジョンは調べる必要がある」
進言するタイキ。キラーは頷く。
「一度戻ろう。次の探索隊を編成する」
——樹海の中、湖の辺にある村——
森の中の拓けた地に数十個の家屋がある。
大半は丸太小屋だ。林業と漁業を主軸に、田畑の開墾を進めている、ついこの間できたばかりの新しい村。
しかしこの村はとても小さな国なのである。
領土と国民と主権があるのだから、小さくても国なのだ。
樹海の外にある大国・ヘイゴー連合の要人を何人か食客として滞在させているのだから、なりの割には立派な物である。
その村に一機のケイオス・ウォリアーが急ぎやってきた。
村の入り口で、巨大な熊獣人とでもいうべきその機体が、外へ大きな音量で通信を飛ばす。
「キラー達が帰って来るぞ!」
村で一番大きな建物の中で、いくつも並ぶケイオス・ウォリアーの整備をしていた青少年——大映正一が顔をあげた。
すぐ側にいた木戸統児と顔を見合わせる。
「川の上流を調査にいっていた探検隊が戻って来るみたいだな?」
「結果次第じゃ、次は俺も行く事になるのかねぇ‥‥」
ひょい、と近くの機体の足元から南丘秀が顔を出した。
「艦が出ないなら、俺は留守番——じゃなくて防衛部隊でいいよな?」
キラーの同級生達の大半は、今はこの国で働いている。
今まで人の土地でなかったこの樹海。その理由は幾多の魔物も住処にしているからだ。
キラー達は村で暮らせるようになってからも、周辺地域の調査を絶え間なく続けている。
キラー本人を含む今回の調査隊が、この日、無事に戻って来た。
数週間後と書いたが、1週間なのか9週間なのかは決めていない。
ヘタに時間を決定したら建国ガチ勢警察みたいな人に説教されるかもしれんからな。
中世ヨーロッパで小国を一つ作るのにどれぐらいの時間がかかるのか、人口と援助額と立地を決めれば計算して正しい回答を出す事もできるのかもしれん。
だが「人口・少数」「援助額・沢山」「立地・この世界ではない」ぐらいしか設定していないのだ。
まぁ不都合なところは「魔法でなんとかした」「スキルでなんとかした」「ロボットでなんとかした」「忍者だからなんとかなる」でなんとかなるだろう。
なった。
ニンジャの世界では常識など一切通用しない——常識は通用しないのだ!