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12 欲しがった想いがそこにあるなら‥‥の巻 1

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。

アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。

セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。

シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。

シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。

 Sゲイルイーグルから降りたシンディはスターゲイザーに駆け寄った。

「ご主人さま。お迎えにあがりました」

 スターゲイザーは‥‥力なく目を背け、俯いた。

「ありがとう、シンディ。こんな僕でも、君は大事にしてくれるんだな‥‥」

 笑顔で頷くシンディ。

「はい。私はご主人さまの物ですから」

「うん、君はそう言う。わかっていた。それこそ僕がただ息をしているだけでも、面倒を見て世話をしてくれるんだろう」

 スターゲイザーの声は、落ち込み、暗い。


「そんな君に甘えたら、僕は誘惑に絶対に勝てなくて、際限なく甘えてしまうんだ」

 それが、シンディの元を去った、唯一にして最大の理由なのだ。


「私はそうしていただけたら嬉しいです」

 そう訴えるシンディは寂しさを隠せないでいる。

 彼女にとって、主人が弱い事も情けない事も、何も問題ではない。

 だが彼女の主人は——

「でも、僕はそうなったらもうずっとそのままなんだ。僕が僕のなりたかった強い僕になってからでないと、君の優しさと甘さには絶対に勝てない。君に手に入れられるんじゃなくて、君を手に入れるに相応しい僕に、僕はなりたかった‥‥」

 ——弱く情けない男を、大好きな人に一方的に面倒を見させる事が、我慢ならなかったのだ。



 サイシュウが「はぁ?」と呆れた。

「アイツが大帝国を潰して新しい王になろうとしたのは、女のヒモに甘んじるのが嫌だったからかよ」

「そこで口を挟みますか。心底しょうもないHAGEですね」

 キャシャロットがジト目で呟いた。

 そこでマンドリオが「ふうむ?」と首を傾げる。

「普通の仕事で普通にシンディさんを養うんじゃ駄目だったんですかな?」


 しかしシンディがスターゲイザーを庇った。

「ご主人さまには、魔王軍での心残りがありましたから‥‥」

「流石にそれは迷惑過ぎない?」

 ソフィアは顔を(しか)める。が——


「仕方ないのかもしれません。新帝王誕生の政権交代時期は、ヘイゴー連合では大きな働きをして出世する大チャンスでもあります。野心のある若者に大人しくしていろと言う者は、この連合内にはあまりいないでしょう」

 そう言うのはスフィル王子。

 かつてスターゲイザーに国を侵略され、恨みがある筈の彼がそう言うのだ。

「むしろデカい野望をもつのは、青年としてあるべきじゃしのう」

 セファラス女王も頷いた。

 スターゲイザーと手を組みながらあっさり離反した彼女だが、相手の志は認めている。

「そ、そうなんだ‥‥」

 異文化を前に、ソフィアはたじろぎながらもそういう物なのだと納得するしかなかった。



 いつの間にやらヒエイマルを降りたキラーが、スターゲイザーとソフィアの前に立つ。

「どうやら問題は無い土地らしいな。タイキ。今後は俺に力を貸してもらおう」

 シンディもスターゲイザー‥‥三河(みかわ)大樹(たいき)に、微笑みながらも縋るように訴えた。

「ご主人さま、そうしましょう?」

 しかし大樹(たいき)は——

「僕は‥‥でも‥‥」

 ——まだ、受け入れられないでいた。


「面倒なヤローだぜ」

 そこへかかる、喧嘩腰の声。

 サイシュウがSサンライザーを降り、三人の方へ大股で近づいていたのだ。

「さっきからデモデモダッテばっかで、肝心の結論がどこにもねーぞ。強い男とやらのする事じゃねぇ」

 サイシュウは抜刀する。

「ハンパなフニャチンぶりも気に入らねぇ。野望を諦められないで女を置いて行ったくせに未練はありまくり。いざ女が捕まったと思ったら放っておけないくせに、やる事は周りに訴えるだの相手の仲間の命で脅すだの。やっと自分で動いたかと思えば分身で、本体はあくまで大将の椅子の上ときた。はっ!‥‥スターゲイザーなんて名乗ってるイキリヘタレは、今日、ここで消してやんよ」

 大樹(たいき)の前に迫ると、刀を大上段に振り上げた。


「おいサイシュウ、何する気です!?」

 珍しくキャシャロットが焦った声をあげる。

 ソフィアは慌ててイーグルから跳び下りた。シンディのため、大切な人を助けようと走る。止めようにも間に合うわけがないタイミングではあるが、動かずにはいられなかったのだ。


 そして、周りにはいっさい構わず‥‥サイシュウは刀を振り下ろし、スターゲイザーを叩き斬った!

設定解説


・ご主人さまには、魔王軍での心残りがありましたから‥‥


そこがどうでもいいなら、そもそも魔王軍に与せずさっさと出て行っていただろう。

じゃあ侵略軍で幹部やってたコイツはやっぱ邪悪なんじゃねーのか、と思わなくもない。

まぁ恋人に優しければそれだけで悪行はだいたい許されるみたいだしな。

罪を憎んで人を憎まずの気高い精神を持ちたいものだ。気高くないワシは全く持っておらんが。

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