その頃、別の場所にて 12
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
地上の様子を確認しつつ、ソフィアは乗機Sゲイルイーグルを降下させた。
「やっと終わったみたいね。上から見てて、どうなる事かと思ったけど」
それを聞いて、座席の後ろからひょいと顔を出す者が一人。
シンディだ。彼女は出撃前からこの座席後部へ隠れていたのである。
もちろん、これはキラーの指示だ。
この戦が始まってからずっと、イーグルは空中戦闘の端の方で回避に徹し、敵から逃げながら牽制の弾を撃つだけの消極的な戦いに専念していた。
戦闘が終わるまでシンディを守るために。
「ご主人さまは、キラーさんのお願いをきいてくださるでしょうか‥‥」
不安でいっぱいのシンディ。
キラー達の会話は、通信機を通して二人にも届いていた。
ソフィアも「うーん」と難しい顔をする。
「それは貴女が勧めてくれれば、望みはあると思うんだけど」
「もしダメだったらどうしましょう?」
その時、スターゲイザーはどんな処分を受けるのか。
それがシンディには心配でならなかった。
ソフィアは一転、悪戯っぽく微笑む。
「その時は、ご主人様を連れて逃げちゃえ」
「いいんですか!?」
目を丸くするシンディ。
ソフィアの笑顔に、ほんのちょっぴり、陰がさした。
「本当は良くないかも? 同級生が殺されてる事、正直、無かった事にして欲しくないし‥‥」
キラーと違って友達も多かった彼女にとっては、親しい人達が苦しめられた事を水に流して忘れろというのは難しい話だ。
シンディが肩を落した。
「ごめんなさい‥‥」
「シンディは謝らないで。貴女がやったわけじゃないでしょう?」
そう言ってシンディを宥めると、ソフィアは努めて――ほんの少しだけわざとらしく――明るく陽気に申し出る。
「もしご主人様が言う事をきかなかったら、貴女と彼は、私が連れてどこかへ逃げるから。ヘイゴー連合以外の土地は何も知らないから、逃亡先の案内はよろしく」
シンディは慌てふためいた。
「そ、それだとソフィアさんが‥‥」
くすくすと茶目っ気を見せて笑うソフィア。
「大丈夫。貴方達を逃がしたらキラーの所へ戻るわ。二人のお邪魔虫にはなりたくないもの。戻った後でちゃんと謝れば、キラーなら許してくれるでしょ。多分、ね」
ゆっくりと、ゲイルイーグルは地上に降りた。
ソフィアはハッチを開け、縄梯子を地面に降ろす。
呆然と立ち尽くし、こちらを見上げるスターゲイザーを一瞥すると、くるりとシンディへ振り返った。
「よーし、ご主人様を捕まえてきなさい。もう離しちゃ駄目よ?」
「はい!」
笑顔で明るく頷き、元気な声で応えると、シンディは縄梯子を降りて行った。
彼女の一番大切な人のもとへと。
設定解説
・親しい人達が苦しめられた事を水に流して忘れろというのは難しい話だ
じゃあなぜソフィアはシンディの味方をするような事を申し出ているのか?
キラーの意に反する事を承知で。スターゲイザーが味方にならなくても助けるなどと。
ソファイアにとって、シンディもまた友達だからである。
それが客観的に正しいのかどうかはわからない‥‥というより怪しい所だが、この作品の登場人物の大半は「信賞必罰」が生きる基準の中に無い奴ばかりなのだ。
まったく、ロクでもない話だ。