11 明日なき総力戦の巻 4
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
『うおぉぉオレの力を見ろやあぁァ!』
目を血走らせて怒鳴る、真魔怪大隊最後の聖勇士・四原修三。
その乗機・Sデルタポットが腰から二丁の拳銃を引き抜いた。
それを構える‥‥のだが、左手の銃口はすぐ側の地面へ向いている。
引き金がひかれた。放たれたのは七色の光球。それは地面に着弾し、光の柱を生み出した。
銀色の光が渦巻き、それが収まると——
剣と鎧で武装した女巨人が立っていた!
大きさは人の十倍ほど、ケイオス・ウォリアーと互角。
体格に比しても大きな両手剣と、やたら露出の多いビキニアーマー。鎧の下には何も着ていない。顔立ちは幼さの残る十代だが、半分以上はみ出た胸は妙に大きかった。
デルタポットは引き金を何度もひく。
次々と光の柱が生じ、そこから次々と巨大な姿が現れた。
斧戦士、侍、半獣人、大砲メカ‥‥全部が露出の大きい女巨人だ。
息遣いなのか何なのか、やたらリズミカルに一定規則で肩を上下させている。
キラーは現れた女巨人達に見覚えがあった。
「四原がサ終までプレイしていたソシャゲのキャラ達‥‥」
『オレはなあぁ! このデルタポットで、かつて回していたガチャをこの世界でも回せるうゥ!』
しかもサイズをケイオス・ウォリアーと同じにして、だ。
なんという強い能力か!
「クソッ、恐るべき機体だ。できれば鹵獲したいな」
唸るアリン。その後ろでマンドリオが呻いた。
「本音がバレバレなのだが‥‥」
一方、サイシュウは「はん」と鼻で笑う。
「なんて事はねぇ。要するに召喚魔法みたいなもんだろ。ガチャの再現とか言ってるあたり、石が溶けきったら打ち止めになるとか阿呆な弱点まで有るんじゃねぇのか」
『実はその通りだ』
頷くスターゲイザー。
「マジか!?」
自分が言っておいて驚愕するサイシュウ。
『言い換えれば、ENを消費しない弾数性召喚という特性をもつ。そして‥‥弾切れまでにはSSRも出る』
スターゲイザーが言うや、召喚軍団の一機が銛を構えた。
魚の頭型のヘルメットをかぶった美少女だ。大漁旗が描かれた長エプロンにゴムの長靴を装備。
キラーはそれを故郷のインターネットで見た事があり、存在は知っていた。
「食品会社とのコラボで実装された、味噌汁擬人化計画‥‥通称【汁娘】の一人、アラジル子か」
『いぃけぇよぉやぁ!』
四原が怒鳴ると、召喚キャラ達が雪崩のごとくハイマウンテン勢に襲い掛かった!
「笑わせるな! 召喚魔法の起源はコリーンだ! 文化泥棒には私が制裁を‥‥」
アリンのSクマーベアーが勢いよく先陣をきる――が、アラジル子が漁船型サーフボードで地面を疾走し、ベアーを撥ね飛ばした。
アリンが「ガギゴゴー!」と悲鳴をあげて吹っ飛び、召喚された敵群が勢いに乗って押し寄せる。
ハイマウンテン勢は戦艦の援護を受けながら対抗したが、明らかに圧されていた。
「いかん、押し返さねば」
呻きながらもマンドリオは半裸の巨大女神官にラリアートを叩きこむ。だがその直後、赤ら顔の美少女に酒瓶でブン殴られた。
やはり汁娘の一人、カスジル子‥‥これもSSRキャラだった。
キラーは敵陣の奥にいる四原のデルタポットを睨みつける。
(アリンと違って引き運が強い‥‥これは手強いぞ)
「チッ‥‥オレの反則能力で消しちまえれば楽なんだがな」
忌々し気に言いながら、サイシュウはサンライザーの刀で半裸の巨大美少女ガーゴイルを叩き斬った。
彼の【消去自在】を使えば召喚された敵を消すぐらい朝飯前だ。しかし実行しようとしても、スターゲイザーの【禁断の魔筆】で妨害される事はわかりきっていた。
「わかりました。兼ねてより練っていたスターゲイザー打倒の策、今こそ試してみます」
決意に満ちた声でそう言ったのはスフィル王子だった。
「えっ!? そんな事が?」
ティア姫が艦のブリッジで目を丸くするが、スフィル王子は――
「援護をお願いします」
そう言うと、乗機をスターゲイザーめがけて走らせた。
無論、その行く手を召喚された敵キャラクター達が阻もうとする。
だがそれを、ヒエイマルが手裏剣で、サンライザーがビームで、戦艦バエナガメランがプラズマ火球で、次々と撃って王子の邪魔をさせなかった。
『何をする気か知らんが‥‥』
スターゲイザーが呟き、ハンドレッドアイが杖を構える。
スフィル王子は獣人シュモクザメとして獣化すると、頭から敵機へ突っ込んだ。
「カブセカ・バッシャー!」
王子の声が轟く!
『効く筈もあるまい』
見下すように呟くスターゲイザー。彼に【禁断の魔筆】がある限り、どんな技も無力に消える。
しかし――その足元が崩れ、土中からドリルが突き出された!
「同時攻撃じゃー!」
Sモールラットの中からセファラス女王の声!
「それも三体にゃー!」
猛スピードで跳び込んでくるのはシャンマウのSマーシャルカラカル。
タイミング的にも速度的にも、スターゲイザーが宙に字を書き終えるよりも明らかに早かった。また万が一間に合っても、他の二方向には対処できない筈である。
彼らが必死に考えて編み出した対スターゲイザー用戦法。
それは【禁断の魔筆】で字を書くよりも早く攻撃をかける事だったのだ。
単純な連携ながら、それは確かに成功した、ように見えた――
——三機の白銀級機が、頭部に鎖鉄球を食らって打ち倒されるまでは!
「ど、どうなっているんだ?」
ブリッジで秀が泡を食らう。
跳びかかった三機が地面に倒された後なのに、ハンドレッドアイはまだ杖で宙に字を書いていたのだ。
急ぐ事なく杖で書き終えると、スターゲイザーは「フッ」と鼻で笑った。
『例え光速でも、もしそれを超える速さで攻撃をしかける事ができても、【禁断の魔筆】の効果を妨げる事はできない。この力は速度という概念そのものを超えているのだからな』
「正確には、時間の前後に囚われていない‥‥て事か?」
顔を顰めるサイシュウに、スターゲイザーは余裕をもって頷く。
『流石、反則能力を持つだけあって理解できるか』
「じ‥‥時間を遡って、効果を発揮できるとでも‥‥そんなバカな‥‥」
地に伏せた機体で呻くスフィル王子。
だがスターゲイザーは冷酷に告げる。
『こんな超常の能力が、普通の物理や自然の法則下にあるわけもない。なぜバカな話ではないなどと思い込んだ?』
設定解説
・かつて回していたガチャをこの世界でも回せる
サ終して久しくやってないソシャゲのガチャをいくらでも回せるとして、果たして回したいか。
ソシャゲを1つしかやってない・現時点でまだ継続中の自分には想像する事しかできない。
想像してみたが、どうにも否定的な回答しか思い浮かばないな‥‥。