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11 明日なき総力戦の巻 2

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。

シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。

——スリーク山脈、ハイマウンテン軍が陣取る場所の近くの森——



 森の中、闇に揺らめく陽炎のような淡い光が生じた。

 そこからゆっくりと出て来るのは――人の十倍ほどはある人造の巨人。

 ケイオス・ウォリアー、Sハンドレッドアイ‥‥ローブを纏った死神のような機体。真魔怪大隊首領・スターゲイザーの乗機。

 それは闇の中を慎重に歩き出した。


 だがすぐにその歩みは止まる。

『‥‥!』

 操縦者のスターゲイザーが、接近する異界流(ケイオス)を感じたからだ。しかもそれには覚えがある。

(この強大な異界流(ケイオス)は‥‥確か‥‥)

 そして彼は、己に近づく機影をレーダーで捉え、身構える。

 ほどなく、木々の間から予想通りの敵機が姿を現した。


「見つけたぜ」

 通信機から届くサイシュウの声。

 太陽を模した頭部を持つ武者・Sサンライザーが現れたのだ。


『よくわかったな』

 忌々しさを隠そうともしないスターゲイザーに、サイシュウは得意げに返す。

「使い方次第で万能になる、これぞ反則能力(チートスキル)の本領ってわけよ。その点じゃお前より優秀だぜ」



 サイシュウの反則能力(チートスキル)【消去自在】は望む物をピンポイントで消す事ができる。

 そこで夜警につく際、自分の()()()()()()()()を片っ端から消して歩けば、遠くから届く音は正確に拾える。

 これを集音系の索敵装置と組み合わせれば、レーダーの性能以上に敵を発見する事が可能になるのだ。



 一時でも敵の上を行ったと感じた故か、サイシュウは余裕をもって訊く。

「シンディを取り返しに来たんだな?」

 スターゲイザーは、そんな質問の相手をしない。

『貴様一人で僕を止められるとでも思ったか』

 そう言うや乗機ハンドレッドアイはマントを払いのけ、骨のような装甲を、その各所に輝く目のような結晶を露わにした。

 その全身に魔力が満ち、取り出した杖が輝く。


 サイシュウの乗機サンライザーも身構えた。

 前傾姿勢で突撃の体勢をとる。



 闇と光、超常の能力と超常の能力が交錯——!


 勝負は一瞬でついた。



 後ろによろめくハンドレッドアイ。

 上半身の左半分が文字通り消滅している。

 操縦席でスターゲイザーが「バカな‥‥!?」と呻いた。


 後ろによろめくサンライザー。

 全身に亀裂が走り、特に太陽を模した頭部はそれが酷い。

 操縦席でサイシュウが「いくらお前でも、分身じゃあな」と言って笑った。



 サンライザーとハンドレッドアイは同時に攻撃を仕掛けた。


 ハンドレッドアイの放った重力球に対し、サンライザーは光のカーテン‥‥バリアを発動させた。

 だが鉄球が落ちてきてサンライザーの頭部を直撃! スターゲイザーは反則能力(チートスキル)・【禁断の魔筆(アストラルフォージ)】でバリアに妨害を試みようとしたのだ。


 しかし‥‥光のカーテンは消えず、重力球を食い止めた。

 なぜならサイシュウもまた反則能力(チートスキル)【消去自在】で、ハンドレッドアイを消そうとしたのである。


 敵のバリアを消しても機体が消されては敗北する。

 よってスターゲイザーはサイシュウの【消去自在】を消した。

 それによりサンライザーは頭部を殴打され、反則能力(チートスキル)も不発に抑えられたが、バリアで重力球のダメージを軽減する事はできたのである。


 そしてサンライザーの攻撃‥‥原子分解の貫手【ディスインテグレーションフィンガー】が、ハンドレッドアイの上半身にヒットしたのだ。


「互いに反則能力(チートスキル)を相殺しあえば、結局は地力での勝負だわな」

 サイシュウが「ククク‥‥」と笑う。

「痛み分け‥‥に見えるだろうが、この場はオレの勝ちだな。そのダメージじゃ、キラーを含むこっちの白銀級機(シルバークラス)軍団からシンディは取り返せねーぞ」


 スターゲイザーが歯軋りする。

『二人がかりで調子に乗っていた分際で‥‥!』

 彼が言っているのは、昼間、サイシュウはソフィアと組んで戦っていた時の事だ。

 スターゲイザーの分身が劣勢ではあったが、サイシュウ一人で十分だったならあんな戦い方はしなかった筈である。


 その指摘に、サイシュウは‥‥余裕を失っていなかった。

「二人でなら勝ち確ってのは、タイマンじゃ勝てねーという意味じゃねーよ。それにそろそろ、お前は時間切れ‥‥お前が一人で来るか、部下どもを連れて来るかなんてわかんねーからよ。こっちの連中もいつでも動けるようにスタンバってたんだわ」

 二機のレーダーの端には、遠くから近づいてくる機影が映り始めていた。

 短時間とはいえ、巨大ロボットが攻撃を撃ちあえば、()()()()()()()()()()()が寄ってこないわけがない。


 多少能天気である事は否めないが、流石に敵地の近くで夜襲を警戒せず無防備になるほど、ハイマウンテンとその連合国もヌケていはいない。


『‥‥クズどもが! シンディを解放する気が無い時点で、お前らは薄汚れた人間の屑だ』

 シンディ奪還に失敗した事を悟り、スターゲイザーが罵る。

 サイシュウは、わざわざ機体に肩をすくめさせた。

「挑発には乗らねーよ。シンディがこっちにいれば、お前は逃げずに決戦へ踏み切るだろ? 悪く思うな‥‥つっても無理か。ま、悪く思ってくれ」


 つまりシンディを利用しているし、それに開き直っているという事だ。

『どこまでも、見下げ果てた野郎だ‥‥』

 スターゲイザーが呪詛のごとき罵倒を吐き、ハンドレッドアイの姿が揺らめく。幻が霧散するかのように、機体は姿を消した。

 転移の魔術である。


 撤退した敵首領の分身を見送り、サイシュウは「ふう」と溜息をつく。

「どうせ見下げられるなら、好き勝手にやるわな」



 実はシンディの身柄を引き受け、その扱いを決めているのは、今、キラーである。

 この(いくさ)が終わるまでスターゲイザーへ返さない事もキラーが決めたのだが、サイシュウはそれを口にしなかった。

 賛成したので同じ事‥‥というのが、彼の言い分なのだ。

設定解説


・レーダーの性能以上に敵を発見する事が可能になるのだ


なおこんな地味な使い方を編み出したのは、ハイマウンテン国に雇われた後の事である。

それ以前は敵が接近してもオレTUEEの機会だとしか考えず、全くの無頓着であった。

なまじ強い奴が格下を一方的に叩くような戦い方しかしないのでは、雑な戦闘方法しか身に付かないのは当然だったのだ。

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