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11 明日なき総力戦の巻 1

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。

セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。

シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。

シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。

「あれがスターゲイザーの根城か」

 山岳の間に(そび)え立つ、物々しい砦。

 月明りに照らされた()()をキラーが睨む。

「いよいよ最後の戦いだな」

 砦の周囲には守りを固める敵部隊が配置されているのだろう、森の中には灯りがいくつも見えた。

 闇夜に輝く光をサイシュウが睨む。

「とりあえず今は休息をとりましょう」

 攻撃は早朝と既に決まっていた。

 その時を思い緊張しながらもティア姫が促す。


「このお風呂で、ですか‥‥」

 湯煙と湯舟の中、スフィル王子が居心地悪そうに呟いた。


 相変わらず軍艦の風呂は狭い。

 気合を入れてモニターを睨もうと、全員でぎゅう詰めになっている事は変わらないのだ。


「いい加減なれりゃどうだ。大した事ねーカラダの方が多いんだからよ」

 サイシュウが王子に慰めなのか何なのかわからない言葉をかけるが、それに押し付けられるような体勢のキャシャロットがギザ歯をギリギリと噛む。

「本当に人間としてはどこまでも評価点の無いHAGEですね」

「神獣の獣人だから人間じゃねーし。聖人君子を目指す気もねーし」

 屁理屈を返しながらも、サイシュウは正しい批判をされて露骨に不機嫌だった。

 まぁこの浴槽の中に機嫌の良い奴はいないが。


 というわけで機嫌の良くないアリンが怒鳴る。

「ええい、空いている所へ行け! 私は腕を伸ばしたいんだ!」

 そう言ってスフィル王子を肩でグイグイと押すが、狭い所で動かれてマンドリオが顔を(しか)める。

「だったら外に出ろ」

「一番場所をとっとるお前が言うと、なんだか腑に落ちんのう」

 彼の脇の下でセファラス女王が嫌そうに呻いた。

「いい加減に邪魔にゃー!」

 ド真ん中で身動きのとれないシャンマウがついに喚きだした。体を捩って周りの者達を押しのけようと足掻く。



 というわけでにわかにおしくらまんじゅうが始まった。マナーも何もあったものではない。

「きゃあ!?」

 巻き添えをくって、端にいてはみ出し気味だったソフィアが浴槽の外に転がり出た。

 背中から床に叩きつけられる——


——が、間一髪、寸前でその体が受け止められた。

 そのまま抱き上げられて‥‥ソフィアは、自分を受け止めたのがキラーである事を知る。


 彼はソフィアが転がり出た途端に素早く浴槽の外に出て、両腕で受け止めたのだ。

 そして今は、いわゆるお姫様抱っこの状態である。

 互いに全裸で。


「——!!!」

 声も出せず、ソフィアの顔が真っ赤に染まった。

 一糸纏わぬ彼女の体は、人種的な事もあって白く健康的な、それでいて豊かで‥‥


‥‥と、それ以上の詳しい描写をする前にキラーが大きめのタオルで覆った。

 浴室の中とはいえ裸のままでは寒いし風邪をひく。

 忍者は体調の管理も怠らないのだ。


 ソフィアを床に立たせるキラー。

「ケガはないな?」

「な、ななな、無い、けど!」

 真っ赤な顔でどもりながら必死に答えるソフィア。

 タオルで体の前面を隠しはしているが、なにせ浴室内にあった濡れタオルだ。体にぴったりと貼りつき、その柔らかなラインはくっきりと浮き出ている。

 それを前に、キラーは——

「なら良かった」

 頷いて背を向けた。


 ニンジャの世界では恋愛喜劇的幸運助兵衛ラブコメチックラッキースケベ展開の常識など一切通用しない——常識は通用しないのだ!



「ソフィアもなかなか良い体をしておるのに、ちっとも反応せんのう」

「されても困るわよ!」

 呆れるセファラス女王にソフィアが紅い顔で怒鳴る。

「ちょっと残念だったりしないかにゃー?」

「しない!」

 ニヤニヤと笑うシャンマウにソフィアが紅い顔で怒鳴る。

「‥‥ならば本当に私やキャシャロットなのか?」

「マジそうならそろそろ転職ですね」

「そういう心配も無いから! 多分!」

 一転して不安そうなセファラス女王にキャシャロットが嫌そうなツラで応えたが、ソフィアがやっぱり紅い顔で怒鳴る。


 と、そこにキラーの声が。

「キャシャロット。こっちに来てくれ」

「なんだと? マジでコイツなのか?」

 たまげるサイシュウ。

「転職しますのでこれにて」

 キャシャロットは浴室から出ていこうとした。

「駄目だ。ソフィアも頼む」

「はいぃ?」

 制止をかけるキラーに、今度はソフィアが目を剝く。


 そんなキラーを見てみれば‥‥

 浴槽の外、シンディと二人、互いに椅子に座って向かい合っていた。

 無論、二人ともタオルで大事な所は隠している。

 いつの間にか、二人で何やら相談していたようだ。


 サイシュウは愉快そうに笑った。

「そうそう、女全取りぐらいしねーとな!」

「そういう風には見えませんが‥‥」

 疑問を覚えるスフィル王子。


 事実、キラーが彼女達に相談している事は、次の決戦についてだった‥‥。

設定解説


・マジそうならそろそろ転職ですね


幼形成熟する種族がいて、人間の子供みたいな見た目で「成人」する奴らがごろごろいる世界なら、人間の成人男性と幼形成熟種族の女性が恋愛・結婚する事も普通にあるだろう。

だがだからといって「見た目が幼いところに興奮する性癖です」という人間の男性を幼形成熟種族の女性が喜ぶわけではないのだ。

どんな感情をもたれるかは、まぁ我々と大差ないとするのが自然であろう。

「どこに惹かれたのか」という話は大切なのが当然なのだ。

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