10 防衛線を突破せよの巻 9
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
だがキラーは冷静に呟いた。
「目には目を、といくか」
ヒエイマルがマフラーを風になびかせて跳んだ。
そして宙で、その五体がバラバラに分裂する!
ニンジャ型機だったパーツは稼働し、形を変え、キャシャロットの変身したアーマードマッコウクジラを取り囲むと、不可視の力で引き寄せられるようにぶつかった。
でかい頭へ、胴体へ、次も胴体へ、さらに胴体へ——クジラのボディにパーツが装着され、ヒエイマルは分離・変形し、鎧というには面積的に厳しいがとにかく装備となった。
それを見た魁は「フッ」と嘲る。
『無力になったデカブツとくっついた所で‥‥なにィ!?』
しかし、合体アーマードマッコウクジラが地面をのし歩くのを見て驚愕!
当然のように言うキラー。
「合体すれば、当然両機の強化パーツが有効となる。よってデバフは無効となった。戦わずして勝つような力はもう通じんぞ」
「ご主人もそういう戦い方、たまにしますよね」
キャシャロットはそう言うが、キラーは冷静なままだった。
「俺に通じないという事は、俺がやらないという意味ではない」
合体クジラは地を蹴って走る。短足の巨体でありながら、その速度はヒエイマルとほとんど変わらない。
操縦席にいるキラーの肩で、ストライクが舌を伸ばした。
すると地響きを立てて走る巨体が虹色に輝き、分身する!
「あの巨体で分身したァー!?」
「視界が塞がれて見難いにゃー」
動けないまま驚愕するアリン。モニターを埋め尽くすクジラにちょっと困るシャンマウ。
そんな彼女たちの反応を他所に、スターゲイザーは全く動じていなかった。
『そのサイズで分身した所で、この攻撃を避けられると思うのか!』
合体ガーディアンの杖が再び輝く。杖の先に、またもや重力球が発生した。
だがさっきと違う点がある——球は複数、いくつも生じたのだ!
重力球が放たれ、互いの重力圏を重ね合わせながら飛び、合体ガーディアンの前方一面を余す所なくその威力で覆う。
機敏であろうと巨体、合体クジラの分身は一つ残らず重力球の範囲から逃れる事はできなかった。
範囲内の物全てを砕く重圧の渦が、分身全てを粉々に砕いた。
分身全てを。
『奴が‥‥いない?』
荒れ狂う重力嵐の中、合体クジラが一つ残らず消滅した事に、スターゲイザーは疑いの視線を向ける。
だがいくら睨もうとそこにはもはや何もいない。
合体クジラの本体は——上にいたのだ。
それに気づき見上げた時、頭を下にして落ちる合体マッコウクジラが眼前に迫っていた。
『回避じゃない、さっきのは目晦ましだ!』
魁の叫びは悲鳴そのもの。
分身が視界を塞ぐための遮蔽物にして注意をひくための囮だった事に気づいた彼の耳に、通信機からキラーの呟きが届く。
「メテオストライク‥‥ダイバー!」
合体マッコウクジラの頭が、全重量が、合体ガーディアンを押し潰した‥‥!
だがしかし。
合体ガーディアンはまだ撃墜されてはいなかった。
『ぐっ! 際どいところだが耐えたぞ‥‥』
スターゲイザーの呻きとともに、押し潰されて半ば土中に埋まりながらも、合体ガーディアンはその杖先に再び魔力を収束させる。
ゼロ距離で放たれる最大の威力を、巨体で密着している合体クジラに避ける術は無い。
が、別に避けようとはしなかった。
合体クジラはその頭から白い粘液を噴き出す!
密着して放たれた粘液状の油はその高圧で合体ガーディアンの腹を穿ち、周囲一帯を粘液の海に沈めた。
そして合体クジラからヒエイマルが跳ぶ!
分離し、ニンジャロボへ再合体。元の形態になるや、火のついたトーチをクジラに投げつけた。
引火!
『ウギャアー!』
火柱となったクジラの下であがる断末魔!
そしてクジラは大爆発!
炎の中で合体ターボガーディアンは砕け散った。
しばし呆然と眺めていたソフィア‥‥だが、やがてハッと我に返って叫ぶ。
「え!? キャシャロットも吹っ飛んだの!?」
しかしモニターにヒエイマルの操縦席が映る。
キラーが座る操縦席の後ろスペースで、裸のキャシャロットがもぞもぞとメイド服を着ている最中だった。
アーマードマッコウクジラの外皮を吹き飛ばす直前、キャシャロット本人は回収されていたのだ!
冷静に呟くキラー。
「ガワだけ残して意図的に爆発させるのは戦闘の初歩だ」
「いつの時代の初歩ですか」
キャシャロットはメイド服を着終わるとジト目で睨んでそう呟いた。
設定解説
・俺に通じないという事は、俺がやらないという意味ではない
炎無効のモンスターが炎ブレスを吐く事など、ファンタジーの世界ではよくある事だ。
だから即死耐性もちの敵が即死魔法をかましてきても‥‥いや、やっぱインチキくせーわ。
そもそも即死耐性って何だ。内臓と血流が表裏逆の帝王体質でももってんのか。ハエかお前は。
ファンタジーとか異世界とかいう言い訳が万能だと思ってバリアはってる奴が多くて困る。