10 防衛線を突破せよの巻 8
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
首領スターゲイザーが苦戦しているその時。
部下の聖勇士・魁は、キラーと戦っていた。
水中戦機体でもないのに海中を目まぐるしく泳ぎ回り、水の抵抗を不自然なほど無視してカラテと剣道で激突する。
だがはやり機動性で優る、キラーのヒエイマルが有利だった。
魁のSターボガーディアンにローキックを叩き込んで膝をつかせ、ヒエイマルは後ろに跳ぶ。
「教えてやろう。俺が造ったこの地形が、水ではなく海の理由をな」
キラーはヒエイマルに棒手裏剣を投げさせる。それは膝をつくガーディアンのすぐ側、海底に突き刺さった。
「邪道焚出攻(こう・こう・こう)‥‥!」
ヒエイマルが印を結ぶと同時に、手裏剣の刺さった地点から雲が猛烈に噴き出した!
逃げる暇もなく雲に全身を包まれるガーディアン。
『熱い!? ウギャァー!』
魁が苦悶の声をあげる!
機体の表面は、そして操縦席の中は、恐るべき高温に熱せられていた。
キラーが忍術で生み出したのは熱水噴出孔、煙は高温のブラックスモーカーなのだ。
水棲の魔物や水中用機は水属性に耐性のある敵が多い——だが逆に火属性への耐性は穴である事も多い。よってキラーは水中で活用できる火属性の技を準備していたのである。
火属性の技は水中では使い難いのが常識である。
だがニンジャの世界では常識など一切通用しない——常識は通用しないのだ!
まぁSターボガーディアンが火属性に弱いかというと別にそんな事もないので、属性に関してはあまり意味が無かったが、結果的には勝利したので良しとされるのだ。
チューブワームにたかられながら、瀕死で地上へ這い出すターボガーディアン。
地面へ無様に伏せる部下を見て、スターゲイザーは戦況が不利な事を悟る。
『いかんな‥‥ならば!』
そう言うと彼の乗機Sハンドレッドアイは姿を消した。
だが一瞬にしてガーディアンの側に現れる。
「てめぇ!」
サイシュウが叫び、刀で斬りかかろうとするが、そこへ真魔怪大隊の量産型機が割り込んで邪魔をした。
部下が斬られるのを他所に、ハンドレッドアイは杖をガーディアンに突き刺した。
黒と白のストライプに彩られた光が二機を覆う。
その光が膨れ、歪み——そして消えた。
ハンドレッドアイは分離し、変形し、ターボガーディアンに鎧のように纏わりついている!
そして半壊していたターボガーディアンは、損傷も無く、その人造の目を爛々と光らせていた。
『さあ、受けろ!』
スタイゲイザーが叫ぶと、合体ターボガーディアンが剣を大地に突き刺す。
そこから波動が輪のように広がった——合体前より遥かに大きな範囲へ。
それはハイマウンテン勢を一機も残さず全て吞み込んだ。
「う、動けない‥‥!」
ソフィアが呻く。高機動を誇る空中戦機のSゲイルイーグルさえ波動から逃れられず、【行動不能】のデバフを食らう。なんとか地面に不時着はしたが、それが精一杯で戦闘などとてもできない。
焦りながらキラーの方を見たが——
分身したヒエイマルが、全ての分身ごと頭にカナヅチを食らい、波動の中へ叩き落とされる光景を見る事になった。
スターゲイザーの反則能力は特殊能力での回避を許さなかったのだ。
だがしかし。
【行動不能】波動の中で、ヒエイマルは身軽に体勢を立て直すと軽やかに着地する。
動きを封じられている様子は全く無い。
『なんだと! なぜ?』
驚愕するスターゲイザー。
キラーは涼しい顔で言ってのけた。
「知らんわけではあるまい。この世界にはデバフを無効化する強化パーツが存在する事を」
次に驚愕したのは敵聖勇士の魁だ。
『俺が行動禁止デバフの反則能力を持っている事を、先に予測していたというのか? バカな!』
キラーは涼しい顔で言ってのけた。
「否定した所で、俺が既に対策アイテムを装備している事は変わらん」
戦場に来る前に、いかにしてキラーは敵の情報を得て装備を整えたのだろうか?
実は‥‥別に予測していたわけではないのだ。
本当はスターゲイザーの反則能力【禁断の魔筆】に対抗できないとかと期待して、デバフ無効のアイテム【フルコーティングアーマー】を装備したのだ。
結果は――残念ながらスターゲイザーには通じなかった。技の割り込みキャンセルはデバフと微妙に違う判定らしい。
だがたまたま偶然、魁の反則能力には有効だった。よって敵の勘違いに乗じて精神的優位をとったのである。
敵にわざわざ親切な解説をしてやる必要は無い。心理戦も戦場では重要な要素だ。
合体ターボガーディアンの中で慄く魁。
一方、スターゲイザーはすぐに気を取り直した。
『ならば単純に力の差で押すか』
合体ガーディアンが持つ杖の先に重力球が生じ、放たれる。同時にヒエイマルは手裏剣を投げた。
重力球はヒエイマルを吸い付け、まともに命中し、大ダメージを与える!
合体ガーディアンは手裏剣を食らいはしたものの、多少よろめいただけだ。刺さった手裏剣を引き抜いて無造作に地面へ捨てた。
明らかなパワーの差。
だがキラーは冷静に呟いた。
「目には目を、といくか」
設定解説
・敵にわざわざ親切な解説をしてやる必要は無い
たまに「俺の弱点は~だ」とか言う奴もいるが、そのパターンの逆張りで全くのデタラメを主人公に吹き込む奴とかいないかな。
世の中に無数の作品がある以上、探せばあるような気がしてきた。
面倒なので探しはしないが。