10 防衛線を突破せよの巻 3
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。
——ハイマウンテン城・格納庫——
作戦会議が終わり、出撃に備えて皆が機体のチェックと調整をしている、その最中。
ソフィアが各パラメータを確認しているSゲイルイーグルの操縦席に、キラーがひょいと顔を出した。
「ソフィア。頼みがある」
「え? 私に?」
戸惑いながら訊くソフィアにキラーは頷く。
「ああ。俺達だけで別行動をとりたい。王の許可は貰った」
「え!? あ、うん‥‥それなら別にいいけど」
「助かる」
キラーにそう言われても、ソフィアには当然疑問がわく。
(この状況で、二人だけで何をするの?)
ところがそこへ、キャシャロットもひょいと顔を出した。
「では行きましょうか」
(あ‥‥二人きりじゃないのね)
納得いくようないかないような。ちょっと複雑な気持ちになるソフィア。
しかしいよいよ大詰めなのだから、と、自分の心を切り替えようと努めた。
——数日後。シソウ国境にほど近い大河の辺——
「スフィル! 元気してたかい!」
「母さん、お久しぶりです!」
スフィル王子とその母・エウリュア女王がひしと抱き合う。やはり中高生の兄と小学生の妹が抱擁しているようにしか見えないが、まぁどうでもいい事だ。
そんな親子の側の川には、水陸両用の青銅級機、半魚人型の機体が何機も待機していた。
ハイマウンテン城へ集まった各国の軍は、途中の戦闘でボロボロに疲弊している部隊が大半だった。
よって各国は増援を呼び寄せ、道中で次々と合流していたのである。
その中には当然、アーマルベン国からの部隊もあった。
「いよいよ決戦か。今のヘイゴーはバラバラになっちまってるからね‥‥早いところ新帝王の下で統一して、大陸三大国家に返り咲こうじゃないか。ウチに土つけてくれた余所者どもを、ウチの参加した軍で叩きのめしてさ。腕が鳴るよ!」
言ってエウリュア女王は掌に拳を打ち付ける。やる気満々といった所だ。
それに驚くのは、他ならぬ息子のスフィル王子。
「え? ついてくるの?」
「当たり前だろ! ハイマウンテンに送った部隊に私がいれば、みすみすやられたりしなかったのに‥‥」
言って女王はギリリと歯軋り。幼く可愛らしい瞳に剣呑な光が灯る。
「やる気にゃー!」
「当然さね!」
シャンマウが歓声をあげると、一転、元気な笑顔で握り拳を空へ突き出したが。
そこへセファラス女王がやってきた。
「ではよろしく頼むぞ。岸壁についたら我らカパード軍が地上まで掘り進んでやるでな」
彼女の後ろにはモグラ獣人型の機体が整列している。
そして熊獣人型の機体を引き連れ、胸を張って声高に叫ぶアリン。
「それを通って他の部隊が攻め込むわけだな! 劣等な異界人と化け物だらけの魔王軍残党を征伐だ!」
Cバエナガメランのオペレーターになった秀が「はーあ」と溜息をつく。
「劣等な異界人ですんませんね‥‥」
——翌日、サウンター湖畔——
山に囲まれた巨大な湖。遥か遠くの対岸に絶壁が聳え立つ水辺に、ハイマウンテンと同盟国の軍は集結した。
「よーし、行くよ!」
エウリュア女王が号令をかけると、連合軍が次々と湖に乗り出す。
先頭を行くのは当然アーマルベンの水陸両用機。他の部隊は飛行できる物以外、各国の艦に収容されて湖上を進んだ。
湖の真ん中ほどまで来た時、アーマルベンのアメフラシ型母艦・Cパープルスモークから友軍へ通信が飛んだ。
「敵発見! 水中だ、奇襲をかけるつもりだった模様!」
「アーマルベン製ソナーをナメたね? そのバカ頭をしこたまブン殴ってやるよ」
エウリュア女王が息巻く——が、さらに通信は続く。
「空からも来ます!」
目指す崖の上から次々と、飛行型のケイオス・ウォリアーが飛び立つのが目視でさえ確認できた。
「流石に迎撃態勢は万全か。まぁわかっていた事ではあるが」
マンドリオが唸る。
そうしている間にも、先頭のアーマルベン軍が次々と水中に潜り、すぐに水柱が何本も立った。
水中で戦闘が開始されたのだ。
が‥‥そうしている間にも、敵の飛行部隊がぐんぐんと距離を詰めてくる。
「や、やっぱりアーマルベンの方々だけで突破するのは厳しそうですね‥‥」
ティア姫の表情にも声にも、ありありと不安が浮かんでいた。
だがその時、通信機から届く声が!
「間に合ったようだな」
設定解説
・Bトライデントギルマン
青銅級の水陸両用機。半魚人が鎧を着たような姿をしている。
水中でも地上でも対応可能という優秀な機体。三又槍と鱗型手裏剣が武器。
パワー・スピード・装甲強度、全てが平凡で何一つ優れた所は無いが、特に劣った所も無いので、水陸両対応という点もあわせてある意味高レベルな汎用機と言える。
陸で戦えば陸戦型に、水中で戦えば水中専用機に負ける戦闘力をどう活かすかが問われる機体。




