9 雄飛の決意の巻 9
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
——ハイマウンテン城・格納庫——
凱旋したキラーは機体から降りる。
そんな彼の周囲に、同じく帰還した皆が集まって来た。
しかし誰もが困惑しており、どう声をかけた物かわからないようだ。
キラーはそんな周囲を見渡した。
「どうした? さすキラーを連呼してくれ、とは言わないが。何やら妙な雰囲気だな」
「そ、そりゃそうだろ! 新国家建設とか、急に何を言い出すんだ!?」
秀の言葉に周囲が頷く。
しかしキラーは平然としたものだ。
「問題があるか? 別にどこかの国をくれとは言っていない」
しかし皆の戸惑いは消えはしない。突飛な話である事は間違いないからだ。
そんな中、サイシュウには疑問があるようだ。
「俺は問題あるとは思わんが‥‥けど、貰う方が簡単だろうぜ。スターゲイザーに勝てれば連合統一は余裕だろ。その後、ティア姫と結婚してハイマウンテンに婿入りすれば新帝王はお前だ。姫も嫌とは言わないんじゃねぇか?」
そう言って姫を横目で見る。
一瞬驚き、けれどすぐに、姫は頬を染めて俯いた。
「あ、は、はい! わ、私でよろしければ‥‥」
ソフィアが「え!?」と目を丸くして姫を見る。
だがキラーは冷静に頭をふった。
「いや、駄目だろう。俺は獣人じゃない。この国の王だか王子だかにしてもらっても、連合の帝王とは認められない筈だ」
一転、しゅんと肩を落とすティア姫。
一応キラーにもそれは見えている筈だが、全く反応しない。
そんなキラーをまじまじと見ながら、セファラス女王が別の疑問を口にする。
「だがのう‥‥外に新国家を興しても、最初は小さな村からの出発になるぞ?」
しかし、それにもキラーははっきりと頷いて見せた。
「半端な状態で妥協するなら、ゼロから一つずつの出発を選びたい」
と、格納庫に大きな笑い声が響いた。
一同は何事かとそちらへ振り返る。
そこには大勢の獣人達がいた。大半は武装した兵士だが、装備も種族もハイマウンテン国の物では無く複数の国が入り混じっていた。
先頭にいるのはこの国のサンタナ王。そのすぐ隣にいるのは、ウェスパレス国の虎獣人・マックス国王!
同盟各国からの部隊が、ハイマウンテン国に到着したのである。
笑っているのはマックス王だ。
だがその笑いは、嘲りや嫌味は全く無い、若者の大志への心地よさ故のものだ。
「残念でしたな、サンタナ王! 無敵の国になり損ねましたぞ」
「なりたいと思った事はありませんが、残念なのは確かです」
そうは良いつつも、サンタナ王も微笑んでいる。キラーの目標を否定的に感じている様子は無い。
マックス王は大股でキラーへ寄ると、その肩を力強く叩いた。
「キラー。連合の騒動が終われば、君に全面的な協力をする事を、今ここで約束しよう」
「お願いします」
一礼するキラー。
周囲の皆はいまだに困惑してはいる。
だがその中に、どこか暖かく、微かに高揚した物が混じり出してはいた‥‥。
設定解説
・同盟各国からの部隊が、ハイマウンテン国に到着したのである
大半はスターゲイザーに蹴散らされた部隊だが、すごすご本国に帰っても怒られるだけなので一応ハイマウンテン国に来てみたのだ。
多分帰国したら「最終的には敵を追い返しました」と報告するのであろう。