9 雄飛の決意の巻 8
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
ヒエイマルと合体したSゲイルイーグル。二つある操縦席の一つで、キラーはその特性を理解した。
(なるほど。操縦の主導権を選択できるのか。途中切替も可能、と)
そして選択の主導権はヒエイマルにある。
それが以前、アリン機や戦艦がヒエイマルに操られていた原因だったのだ。
「ソフィア。先ずそちらに任せる」
「了解!」
キラーに威勢よく応え、ソフィアが合体イーグルに武器を構えさせる。
両手持ちの機関銃を。
「ガトリング、バーストォ!」
ソフィアの掛け声とともに、無数の弾丸が戦場にばら撒かれた!
アリンが壺でひいたSSR武器は、ちゃんとイーグルに装備されていたのである——キラーの指示で。
二機のパワーを得た掃射により、次々と爆発するゾンビ機体たち。
しかも弾丸の雨は合体リーガーバードをも巻き込み、その装甲表面で無数の火花をあげた。
ダメージとともに合体バードが揺れる。
『うわぁ! な、なんとかしろよ!』
敵聖勇士・球十が情けない悲鳴をあげ、スターゲイザーが怒りに呻く。
『クッ‥‥調子に乗るな!』
合体バードの杖に光が灯り、そこから幾条もの光線が放たれた。
光線が合体イーグルを襲う。
当然、合体イーグルは回避に移るが、光線は軌道を曲げてホーミングし、敵機をつけ狙う!
だが合体イーグルの速度と運動性は、元のイーグルを、さらにヒエイマルをも上回っていた。
光線の束に自ら突っ込み、追尾されるよりも早くその間を縫ってしまう。
追尾の限界角度を大きく超えられ、光線はことごとく明後日の方に飛んでいった。
『こうも当たらんとは!? なんという運動性だ‥‥』
珍しく舌を巻くスターゲイザー。
一方、キラーは当然のように言う。
「そちらは一人で戦っているも同然。こちらは二人だ」
ケイオス・ウォリアーは搭乗者の生命力や精神力をその性能に反映する。
今、合体イーグルは、操縦を担当している者をもう片方の搭乗者の精神力が補助しているのだ。
『馬鹿な男だ。そこまでの力を得て小国ごときの雇われ兵か。真魔怪大隊にいれば、自分の国さえ与えられるというのに』
スターゲイザーは苛立っていた。
自分の側近になる者のために用意した力を得た男を前に。
その男——キラーが応える。
「お前に貰わずとも自分で得られるのではないか。そう思うのだがな」
「え?」
キラーが何を言っているのか、スターゲイザーは理解できなかった。
「スターゲイザー。お前がヘイゴー連合を占領し自分の国を建てると言った時、俺は思った」
キラーの、その思いとは——
「面白いと。見上げた物だと。せっかく環境が変わり、何らかのゲタを履く事ができたのなら‥‥やる気と熱意と野心を持つ事は大いに結構なのではないか、と。世の中、チャンスのある奴ばかりじゃないからな。なら‥‥運と巡りあわせで何か掴めた奴は、その瞬間ぐらい全力で走った方がいい」
敵首領の目的への、肯定だった。
「俺もそうしようと思っていた。ただ具体的な目標があったわけじゃないから、とりあえずハイマウンテン国で手柄を立てて認められようと思った。だけど、もっと強烈にはっきりと、形を見せてくれたのが——お前だ」
『‥‥では、どうする?』
問うスターゲイザー。
キラーははっきりと宣言する。
「この世界に新たな国を建てるのは、お前じゃない。俺だ」
「「「な、なんだってー!?」」」
ハイマウンテン勢から驚愕の声があがる。
『ほう。俺にとって代わるのか』
そう言いながらも、スターゲイザーもまた驚いていた。
しかしキラーは——
「いいや違う‥‥俺のやり方はな。この世界に来てから今日まで、俺もそれなりに調べてきた。この世界にはどこの国にも属さない土地がかなりある。このヘイゴー連合の周囲にもだ」
特に大きいのが、この大陸最大の樹海だ。
この世界の大半の国より広く、かつては世界に一本しかない貴重な大樹さえあった。
「この連合国の、最大の危機を俺が救う。そして相応の報酬を貰い、連合の新帝王に協力をとりつける。それを使って、俺は俺の望む俺の場所を作る」
それが今のキラーの、最大の目標だった。
スターゲイザーの声が、驚きから怒りの物に代わる。
『異世界スローライフ物を、延々と戦った後でやると?‥‥馬鹿か!』
「マイホームを持つのが夢、なんてのは古き良き庶民の目標にはよくある事だ。お前も俺も、それが少々でかいだけだろう。それを馬鹿とは、昭和から石が飛んでくるぞ」
キラーはそう言うが、規模がケタ違いなのは確かだ。
とはいえ当人は、もう完全にやる気になっているのだが。
『お前が古臭い時代へ飛んで行け! あの世を通ってな!』
話はここまでとばかり、スターゲイザーは渾身の攻撃魔法を放った。
合体バードが魔法の力場を発生させると、杖をバットにしてそれを打つ。
力場は散弾のように弾け、合体イーグルを襲った。
だが合体イーグルは分身しながら空中を超高速でバックステップ!
散弾より速くその場から離れ、しかもライフルを取り出して構えている。
にわかに黒雲が立ちこめると、ライフルが一条の落雷を浴びた。
だが稲妻は合体イーグルを焼く事は無く——
「ライトニング・スナイパー!」
ソフィアの声とともに稲妻を帯びた弾丸が放たれ、合体リーガーバードの頭を撃ち抜いた。
合体イーグルの操縦権を巧みに切り替え、回避をキラーが受け持ち、射撃はソフィアが。
その連携でもって引き撃ちで放った超遠距離狙撃は、敵に急所を見事に貫いたのだ。
合体バードは爆発四散!
それを上空から眺め、キラーは呟く。
「俺が飛ぶのは俺の未来へのみ、だ」
設定解説
・操縦を担当している者をもう片方の搭乗者の精神力が補助しているのだ
どっちを操縦者にしても、両者の精神COマンドが使える理論。