9 雄飛の決意の巻 5
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
城の格納庫、そのシャッターが開いた。
奥の暗がりから巨大な亀が姿を現す。
「Cバエナガメラン、発進します!」
ティア姫の、いつもより心なしか勇ましい声。
防壁に設けられた城門の一つが開いた。
それを隙か好機だと思ったか、真魔怪大隊+シソウ国連合軍の青銅級機が殺到する。
だがそれらは次の瞬間、ホバリングして高速で突撃してきた戦艦Cバエナガメランに吹き飛ばされた!
「やっとか! シンディの安全は確保できたようだな」
サイシュウが声をあげると、通信機から艦の応えが届く。
「ま、多分ね。さーて、撃ちまくりますか」
男の声とともに、ガメランはプラズマ火球を吐き出した。甲虫型の敵砲撃機が爆発して吹き飛ぶ。
その声に驚くスフィル王子。
「貴方ですか!?」
声の主はキラーの同級生・兵士となった南丘秀だった。
「俺の乗ってた砲撃機が前の戦いでやられちゃったからなー」
砲撃を操作しながら溜息をつく秀。
「ソフィアはどうしたにゃ?」
「今来たよ」
シャンマウに秀が答えるや、上空からの射撃が敵機を次々と撃ち抜いて走った。
戦場にいる者達は見た。
鷲の頭もつ白銀級機Sゲイルイーグルが、両手に拳銃を構え、大きな翼を空で広げているのを。
各機のモニターにその操縦者が映る。
ゴーグル付きの飛行帽を被ったソフィアが——!
「あの娘がケイオス・ウォリアーに!?」
「王様の許可は貰ったわ!」
驚くサイシュウに叫んで答え、ソフィアはイーグルを急降下させる。
敵が迎え撃つ射撃を回転しながらかわし、同時に両手の引き金を交互に引いて銃弾のお返し。それが次々と敵を撃ち抜くのは、数が多い所に浴びせているからでもあろうが、加速に負けない動体視力がある事も証明している。
風のごとく、としか言いようがなく敵機の群れの頭上を通り抜け、止まる事なく急上昇。
高度をとった時、二丁の銃は腰に納められ、銃身の長いライフルを手にしていた。
弾を浴びずに生き残っていた巨人兵士型の一体、その頭が無慈悲にも撃ち抜かれた‥‥!
「うおっ? 強いにゃ!」
「え、でも、なんで操縦が‥‥」
驚くシャンマウ。スフィル王子などは眼前の光景が信じられないでいる。
そんな二人に、再度拳銃を機体に構えさせながらソフィアは叫ぶ。
「召喚された私達、操縦はできるもんなんでしょ! 種岩君の戦いを見て、どう使うかはずっと見て来たし!」
「それにしたって、なぁ‥‥」
やや拗ねたように、抗議気味に声を漏らすのは、艦のブリッジで敵に照準を合わせる秀だった。
同じ聖勇士でありながら圧倒的に彼女の方が強い事を、あっさり撃墜された彼がちょっと悲しく感じていたりしても、まぁ仕方が無いだろう。
そんな彼の後ろでイカ焼きを齧っているキャシャロット。
「一線で戦っている部隊にずっといたから、それだけ経験値が貯まっててレベルも上がっていたという事で。ウチのご主人も同じ理屈でレベルの底上げしてましたし」
一応、これは慰めらしい。
敵にも飛行戦力が無いわけではない。ソフィアのイーグルに数機の鳥人型青銅級機が向かう。
それを迎え撃つイーグルに通信が入った。
「ソフィアさん」
「種岩君?」
通信機に届いたのはキラーの声。
応えるソフィアに、キラーが言う事は‥‥
「俺はキラーだ」
自分への呼称の、訂正だった。
「こんな時に何言ってんのよ」
ソフィアの言い分は至極真っ当な物であろう。
だがキラーの声はあくまで真面目である。
「俺はそう名乗る。仲間にもそう呼んで欲しいんだ」
ほんの一瞬、間があくが‥‥
「‥‥私はソフィアよ。さんづけはいらないわ」
彼女から返って来たのも、自分への呼称の訂正だった。
「そうか。ソフィア、よろしく」
「よろしくね、キラー!」
あくまで冷静なキラーに弾んだ声でそう応えるソフィアの、敵へ向かって放った撃った銃弾が、先頭の敵機を二機同時に撃ち落とした。
この世界にきて割とすぐにソフィアは操縦を試してはみたが、その時はそれほど上手く操縦できなかったので「できる事はできるが大した事はない」と判断していた。
‥‥が、これは比較対象がキラーであった事、初操縦で練度が低かったためである。
実際は召喚された同級生の中では高い方、キラーが7~8とすれば5~6程度のポテンシャルはある。