0 異世界漂流の巻 9
主人公の初ロボット戦闘だ。
モデルにしたゲームを基にリアリティ重視で書いておいたぞ!
(ええい! チクショウ!)
半ばヤケクソ、吉良はロボットの一つに乗り込んだ。
座席を設置し、そこに座る。さて、どのボタンを押せばいいのか、と思いきや――
機体に火が入った。キーやスイッチに触らずとも、ハッチが閉じてモニターと室内灯が点灯したのだ。
驚く吉良の前で、閉じたハッチがモニターとなり、何かが映った。
マスで区切られ、中央にある青く輝くロボットの顔アイコン。すぐ近くには青いアイコンがいくつも。離れた所には赤く輝くアイコンが10個近く点在している。
まるでゲームの、SLGの画面のようだ。
そして吉良には、同時に、外の光景が見えていた。
機体の正面が頭の中に映像として存在する。試しに右を見ると、機体の右側が頭の中に映った。それとともに機体の頭が右を向いたのが「感覚として」わかる。
左を見ると機体の頭が左へ回り、脳裏の視界も左へ‥‥。
己の首から上が機体と一体化し、それにより外が見えている!
(感覚を同化させて操縦するタイプ! それがこの世界のロボットか‥‥)
納得した吉良だが、右腕に鈍痛を感じてそこを見た。
この機体は古代ギリシャの重装歩兵みたいな外観なのだが、その右腕が付け根からもげている。まぁ仕方が無い。元々、撃墜された機体なのだ。
「これ、戦えるのか‥‥?」
心細い呟きに、サイシュウの声が答えた。
『一応YESだ。ま、勝つ事はできないだろうがな』
声が出たのは操縦席の片隅にある金網の奥。恐らくそこが通信機なのだろう。
そんな吉良は、モニターに何やらメッセージが流れている事に気づく。
『おい、了解をタップしな』
サイシュウに言われるがまま文字に触れる吉良。
すると機体の隅に、一際変わった機体が映り「僚機」と表示される。
「あの、何を?」
戸惑う吉良にサイシュウからの説明。
『ツインユニット設定だ。ケイオス・ウォリアーには小隊系のシステムがいくつかあってな‥‥チーム運用を補助してくれるんだが、制限も発生するんで、俺はあんま使わねーが。まぁ今日は特別だ。俺の側を離れるんじゃねーぞ』
そう言うと、一機のロボット――ケイオス・ウォリアーがずかずかと歩きだした。それがサイシュウの機体なのだろう。
和風の甲冑みたいな装甲で、手には大きな刀。
頭部はのっぺらぼうの球体で、後頭部には後光のような形の角が何本も出て後立になっている。
モニター上の、その機体であろう動いている青アイコンに触れてみると「Sサンライザー」と機体名が表示された。
慌ててついていく吉良。自分で歩くのと同じ感覚なので、初めての操縦だがそこは問題が無かった。
だが森から出ようとするとや、何本もの矢や投げ短剣、砲弾が飛んでくる!
吉良の物と同じ歩兵型、狼男のような物、大砲を担いだダンゴムシ‥‥鎧を纏った半獣人のような機体が何種類も、森の外で待ち構えていた。
しかしサイシュウに恐れる様子は無い。
『さて行くか。メインユニットは俺だ。お前は俺の狙った奴を適当に撃っとけ』
そう言ってずかずかと森から出て行く。
仕方なく吉良もその後に続くが――
「う、うわっ!?」
当然、射撃攻撃の雨に見舞われた!
しかしそれらの攻撃は、光のカーテンが生じて蒸発してしまう。
「これは‥‥バリア?」
吉良が呆然と呟くと、サイシュウが『ククク‥‥』と笑った。
『理解が早くて結構。俺は神獣、空亡の獣人。俺のユニークスキルで造りだしたバリアだ!』
なんとサイシュウ、人間ではなかったという。
バリアは彼のパワーによるものらしい。
『さあ、終わらせてやるぜぇ!』
サイシュウの叫びとともに、サンライザーの頭部が輝き、光線が放たれた。
それは歩兵型の敵機を容易く撃ぬく!
『オラァ! お前もやっちまえ!』
とても楽しそうに発破をかけてくるサイシュウ。
(そんな事言って、俺は初心者なんだよ?)
そう思いつつも、吉良は乗機の左腕に装備された弩を構え、同じ敵に撃った。
命中!
その矢がとどめとなり、敵機は倒れて動かなくなる。
脱出装置が働き、座席ごとオーク兵が飛び出して、無様に地面へ叩きつけられると、ほうほうのていで足をひきずり逃げていく。
(え? 当たったのか?)
驚く吉良に、サイシュウの上機嫌な声が届いた。
『初撃墜おめ! やったじゃねぇか』
そう激励しつつ、次々と光線を放つ。
バリアの陰から、吉良も必死に弩を撃ち続けた。見ればモニターに70%前後の予測命中率が表示されている。
(体感、5割ぐらいだけど‥‥?)
だいたいサイシュウに任せつつも、吉良は射撃を続けた。
しかしほどなく矢が尽きる。元々損耗している機体なのだ。
仕方なく周囲に落ちている投げナイフ――犬頭の、別の機体の武器だが――を拾って敵機に向かって投げた。
命中!
サイシュウ機の光線で破損した敵機にとどめとなり、相手は倒れて動かなくなる。
バリアの陰から、吉良は投擲を続けた。モニターに85%前後の予測命中率が表示されている。
(体感、6割ぐらいだけど‥‥?)
だいたい敵機に当てつつも、吉良は投擲を続けた。
しかしほどなくナイフも尽きる。元々落ちている物でのその場しのぎだ。
しかも射撃戦が不利と見て、残る敵は接近戦を挑んで来た。剣が、爪が、牙が、吉良の機体を襲う!
まぁバリアは近接戦闘にも有効だった。
それに弾が尽きているので、接近戦は吉良にもある意味好都合だった。
サンライザーは刀を振り回す。一閃ごとに敵機が斬り裂かれた!
吉良は武器が無いので使わない。カラテだ。突きと蹴りでバリア越しに敵を打つ。モニターには100%近い予測命中率が表示されている。
(でも100%以外、外れる時は外れるな‥‥?)
98%を外す快挙を為しながらも、吉良は次々と敵機にトドメをさした。
やがて魔王軍は全滅した。大半は撃ち抜かれ、何機かは斬られ、どちらでもない物はかなわぬと見て逃げてしまったのだ。
『どうだ? ケイオス・ウォリアーの操縦訓練には丁度よかっただろ?』
サイシュウは笑っていた。
「え、ええ‥‥ありがとうございます」
礼を言う吉良。その眼前で、サイシュウの機体はくるりと背を向ける。
『じゃ、行くか。どう身を振るにしても人里に向かう必要があるだろ。丁度いいから、俺の目的地までついて来い』
設定解説
・体感、5割ぐらいだけど‥‥?
モデルにしたとあるSRPGの話。
ちゃんと1000回ぐらい繰り返してトータルすれば、表示されてる数字どおりになるらしい。
前世紀の攻略本スタッフが検証していたのを始め、多くの人が確認したそうだ。
わざわざ検証した奴が一人ならずいるという事は、あやしく感じる奴がそれだけ多いという事だ。
そして今やゲーム内に「命中率80%以上なら攻撃が命中する」なんてアイテムまで出るしまつ。
テストプレイヤーに「おいこの命中率おかしくねーか!?」と何度も言われた制作スタッフも嫌気がさしたのかもしれん。




