後編
自分が気になっていることを、率直に相手に尋ねてしまうことは、必ずしも期待した返事が返ってくるわけじゃない。
白夜さんに分けてもらった力で、何を聞いても真実が分かるからと言って、聞いていいことと悪いことは絶対ある。
お父さんが私にひた隠しにしていたことは、お母さんがどうやって死んでしまった・・・という部分。
その事実は、子供に隠して当然な出来事で、お父さんにとって未だに痛ましい過去であり、誰かに話して楽になるような軽い話じゃない。
私はもうお父さんに何も尋ねないことに決めた。
少し離れた街までのドライブを終えて、お洒落なイタリアンに入ってランチをした。
「美味しい~~♪初めて来たけど、雰囲気もいいし広々しててゆっくり出来るし、いいお店だね。」
お父さんが適当にネットで調べたお店だけど、二人での外食ではずれを引いたことはなかった。
「そうだな。味も本格的だし、野菜も無農薬に限ってるみたいだし・・・地元の知る人ぞ知る名店って感じだな・・・。」
私は時折美味しいサラダも口に運びながら、咲夜くんや晶ちゃん、美咲くんに会ったらどんな風に正直な本音が聞こえてくるんだろうと考えていた。
「小夜香・・・もし起きてから半日以上経っても能力が消えないようであれば・・・今後体に悪影響があるかもしれんし、夜になったら確認させてくれ。」
「うん、わかった・・・。」
結局美味しくて止まらずたくさん食べてしまって、少し残ったピザはお父さんが平らげてくれた。
翌日私は、咲夜くんとおうちデートの予定だったので、彼の家に訪れた。
「いらっしゃい、小夜香ちゃん♡」
「ふふ、おじゃましま~す。」
いつもの優しい咲夜くんの笑顔に迎えられて、つられて顔が綻ぶ。
荷物をソファの隣に置くと、キッチンからチラリと私に視線を向けた咲夜くんは、またニッコリ微笑んだ。
そしてその瞬間、そこまで意識を向けたわけじゃないけど、咲夜くんの心の声が聞こえてきた。
(ああ~~やっと小夜香ちゃんに会えた。も~~可愛い・・・あのピンクのオフショル新しく買ったのかな・・・可愛いなぁ・・・・なんだかんだお互い忙しくて5日も会えなかったし・・・今日は外出じゃなくてずっと家でイチャイチャしていたいな・・・。)
結構たくさん聞こえてくる・・・
「はい、紅茶でよかった?」
「あ、ありがとう・・・」
二人して腰を落ち着けて、そっとカップに口をつける。
(ふふ・・・かんわい~~~♡はぁ・・・癒される)
咲夜くんは黙ってコーヒーを飲んでテーブルに置くまででも、声が止むことなく聞こえる。
「・・・勉強進んでる?」
「うん・・・最近はお父さんが仕事してる横で医学書読んだり、わかんないとこ教えてもらったりしてるよ。」
「そうなんだ、それは心強いね。(あああ~可愛い~~キスしたい。押し倒したい。)」
「んぐっ!」
同時に聞こえてきた声に、もう一口飲んだ紅茶を思わず吹き出しそうになってしまった。
「大丈夫?」
「ケホ・・・うん・・・」
咲夜くんは私の背中を撫でながら、また優しく微笑んだ。
も~咲夜くんってば・・・・
私がジトっと視線を向けると、彼は可愛く小首を傾げる。
「なあに~?・・・・今日も可愛いね。ホントは会いたくて仕方なかったんだよ。勉強の邪魔したくないから、あんまり連絡入れないようにしてるけど・・・」
「・・・・そっか・・・。ありが
私がお礼を言い終わらないうちに、咲夜くんは私の口をふさぐようにキスした。
激しく重なっていく最中、咲夜くんの声が聞こえ続ける。
(小夜香ちゃん・・・小夜香ちゃん・・・あ~可愛い・・・あ~もう可愛い無理・・・大好き。)
押し返すように咲夜くんの服を掴んでいたけど、力で勝てるはずもなくあっさりソファに押し倒されてしまう。
「小夜香ちゃん・・・」
何度も名前を呼びながら、キスしたり体に触れる手を恥ずかしがっていると、吐息を漏らして見下ろす彼から、尚も心の声が降りかかる。
(ああ・・・・もうここでしちゃお・・・我慢出来ないし・・・ゴム取ってこなきゃ・・・。でも・・・今日はそのまましちゃおうかなぁ・・・)
僅かな理性が咲夜くんの中で消えそうなのが分かった。
彼は獣の目をしてニヤリと口元をあげて、私のパンツに素早く手をかけた。
その後はずっと規制がかかるような心の声と、許しを請うように求める言葉に振り回されながら、抵抗虚しく何度も何度も食べられてしまった。
私が力尽きてしまうと、彼は裸のままさっと私をお姫様抱っこしてベッドに運んだ。
「動けないと思うから・・・先にシャワー浴びてくるね。」
彼はそう言って私の頬にキスを落として寝室を出る。
「・・・・・・・もう!!・・・もう!もう!咲夜くん・・・!もう~~!」
彼のいない少し余裕あるベッドでじたばたしながら悶えた。
行為中もずっと話してること以上に色々欲望が聞こえてくるし、そんなこと考えてたの!?って思うようなちょっと変態的なこと考えてるし!!
挙句毎日一緒にいて朝昼晩したいとか考えてるし!
大好きだけど!!それにしても!もう!
「・・・もう・・・それでも大好きだけど・・・」
咲夜くんがどんな欲望を抱えていようが、私のためにその全てをぶつけまいと堪えている彼が、尚のこと愛おしかったりする。
「んも~~・・・」
その後私もシャワーを浴びた後、お昼ごはんに咲夜くんの手料理をいただいた。
私が食べている間も、隣に座っている咲夜くんからず~っと可愛い可愛いと心の声が漏れ聞こえていた。
「休憩したら・・・どこか買い物にでも行く?」
テーブルの上を拭いていると、洗い物をしながら咲夜くんは尋ねた。
「え、今日はおうちがいいんじゃないの?」
私がそう言うと、彼はキョトンとして泡立ったスポンジを持つ手を止めた。
「・・・うちがいいって俺言ったっけ・・・?」
はっ!そうだ!それは勝手に私が聞こえてきたから知ってるだけだった!
「え・・・と・・・言ってないけど、そうかなぁって思って・・・。」
ぎこちなく笑って見せると、咲夜くんはふっと優しく笑ってまた手元に視線を戻した。
「そっか、お見通しだね。・・・別に小夜香ちゃんの行きたい所ならどこでも一緒に行くし、ついていきたいんだよ?でもさ・・・どこにいてもすぐイチャイチャしたくなっちゃうからさ、外だとねぇ・・・」
「・・・私も一緒ならどこにいても楽しいよ?まったりおうちで過ごすのも好きだし・・・」
咲夜くんは安堵した笑みを見せて、洗い物を終えた袖を元に戻した。
「そういえば、昨日は更夜さんとゆっくり出来た?」
「うん、もうすぐ春休みだから、お父さんもお休み取ってもらって、旅行でも行こうねって話してたの。」
「そうなんだね。・・・・俺は大学生だから春休みだいぶ長いけど・・・小夜香ちゃんは少ないもんねぇ・・・。そういえば・・・普通にお返し渡すだけになっちゃったけど、ホントはさ・・・ホワイトデーは今年こそ、二人っきりで温泉旅行行きたかったんだよねぇ・・・。俺の予定も小夜香ちゃんの予定も合わなかったけど・・・」
「あ~・・・そうだね・・・。じゃあさ、ゴールデンウィークにどこかにお泊り旅行しない?」
「いいね!それくらいなら今から予定空けられそうだし・・・よし、じゃあもう今から計画しちゃう?」
「うん♪」
咲夜くんは嬉しそうに紅茶を淹れなおしてくれて、また二人でソファに腰かけた。
持ってきたノートパソコンを開きながら、また彼から楽しそうな心の声が聞こえた。
(あ~~うれし!二人っきりで旅行とかテンションあがるな~。どこがいいかな、せっかくならテーマパークに泊りで行くとか?いやでも・・・GWはめちゃくちゃに混んでるか・・・ん~~)
その声が聞こえて私はふと思い出した。
「あ・・・」
「ん?」
「あのね、昨日お父さん言ってたんだけど、年末の焼肉みたいに、優待で遊園地のチケットもらえたりするんだって。」
「え!マジで?」
「うん、ほら・・・テレビでよくCMしてる東京の遊園地とかね、当主の時にあんまり金額気にせず融資してたみたいで、返してもらう時に利子を要求してないから、上の人に顔が利くし・・・何だったら貸し切りにしてもらうことも出来るって。」
「何だってぇ?」
咲夜くんはキリっとしながら返答して、口元に手を当てて考え込んだ。
「・・・更夜さんがそれ出来るなら・・・美咲に言えば他に行くところも融通利いたりすんのかな・・・」
「どうだろうね・・・お父さんは実業家だから経営もだけど、手広く投資とか融資してるみたいだけど・・・美咲くんはどうだろうね。」
咲夜くんはやっぱり大学卒業後は美咲くんの助けになりたいようで、彼がどんな風にお父さんの手伝いをしながら働いているのか興味があるようだった。
その後何となく遊びに行く先を二人で模索しながらも、彼からは少し前の美咲くんとの思い出や、話したことを少しずつ思い返していたようで、ふわふわと見える場面がいくつかあった。
そしてふと、白夜さんが狭間で、咲夜くんにも会ったことあると言っていたのを思い出した。
「ねぇねぇ・・・」
「ん?なあに~?」
私が彼の袖をつんつん引っ張ると、ニコニコしながらまた咲夜くんの脳内で考えてる『可愛い』が溢れて聞こえてきた。
それに気後れしながら、自分が会って話したことを悟られないように言葉を選んだ。
「咲夜くんはさ・・・夢の中で白夜さんや実様に会ったこととかある?」
すると彼はふっと火を消したように真顔になった。
「・・・どうして?」
いつもと変わらない優しくて柔らかい声が、私の質問の意図を計りかねているのだと分かる。
「えっと・・・私はね、夢の中でお母さんに会えたこととか一度もなくて・・・でもそれは私の中でハッキリお母さんの記憶がないからかもしれないんだけど、咲夜くんや美咲くんは、ちゃんと二人の思い出を持ってるだろうし、会えるとしたら自分が作り出す夢の中でしょ?咲夜くんはあるかなぁと思って。」
咲夜くんは尚も尋ねる理由がわからないのか、じっと黙って私の顔を見ていた。
「・・・父さんには会ったことあるよ。元々俺・・・あんまり夢を見ない方でさ。見たとしても起きた後にあんまり記憶に残らないんだ。」
「そうなんだ・・・。」
「ふふ・・・知りたい?どんな話したか・・・」
「うん。」
私が頷くと、ローテーブルに頬杖をついて、大きな黒い瞳を伏せて言った。
「ちょうど1年くらい前だよ。小夜香ちゃんと付き合うことになったあの日ね。夜桜を見に行く日の昼間、時間があったからちょっと昼寝したんだ。その時に・・・なんかこう・・・真っ白な空間に放り出されてさ・・・そこで着物姿の父さんがぽつんと佇んでた。」
私と同じだ・・・
「夢なのに何で今も鮮明に覚えてるのか疑問だけど・・・。父さんにさ、人の忠告を聞かない子だな・・・って苦言を呈されちゃったんだよね。」
「苦言?」
「うん、記憶の再生能力をあれほど使うなって色んな人から言われてるのに、俺さ・・・咄嗟に直近の記憶を思い返すときとか、去年くらいの記憶を思い出したいときとかさ、意識を集中させて力を使おうとしちゃう癖があって・・・それで怒られたんだよね。」
「そ・・・なんだ。それは怒られてください。」
「はは!ごめんなさい。」
咲夜くんは苦笑いしながら、見つめ返す私を窘めるように撫でた。
「まぁでもそれくらいだよ?ホント大した会話してないんだよ。皆元気にしてるから心配ないよ~とか言っといたかな。」
「そうなんだね。」
「・・・で?なんで急にそんなこと気になったの?」
「ん~と・・・お父さんもそういう夢を見たことあるって話してたから、咲夜くんはどうかなぁと思って。」
「ふぅん?」
流石に賢い咲夜くん相手に、誤魔化しはあんまり効かないのかもしれない・・・。
私が思案しながら紅茶を一口飲むと、咲夜くんは窓の先を眺めるように遠い目をした。
「ま・・・でも、ぶっちゃけさ・・・特に会いたいなぁとか思わないよね。」
「・・・そう?」
「うん・・・。母さんに対してもだけど、もう今は寂しいなぁって思うことがないからかも。小夜香ちゃんと一緒に居られるし、美咲も晶も幸せに暮らしてくれてるしさ。だって人が死ぬのって、会えなくなることは寂しいけど、それ自体は生き物だから自然のことだし、おかしなことじゃないでしょ?」
「うん。」
「寂しさとかお別れしなきゃいけない気持ちとかに、もう折り合いがついてるから。だからもう、どうか安らかに・・・って感じ。」
彼はニッコリ笑って、また愛おしそうに私の頬を撫でた。
咲夜くんはもう、失くした悲しみをちゃんと乗り越えたんだ。
「・・・私は今も会いたいなぁって思っちゃうなぁ・・・」
自分の中であまりにも記憶にない母の姿。
写真でしか見たことない笑顔。
声も覚えていないし、どういう人なのかも人づてに聞く程度の知識。
咲夜くんから何も聞こえてくることなく、私をじっと見つめていることに気付いて、私はまたパッと笑顔を作って見せた。
「そんなこと思ってもしょうがないよね!お盆とかは帰ってきてくれてるかもしれないし・・・。ごめんね?しんみりしちゃう話しちゃって・・・。お休みの日どこいこっか。」
私がスマホを取ってカレンダーアプリを開くと、ポツリとまた彼の心の声が聞こえた。
(そうだよなぁ・・・自分を産んでくれた人に会えないって寂しいよなぁ・・・。俺じゃあ埋めてあげられない寂しさだよなぁ・・・)
何か申し訳なくて咲夜くんの顔を見ると、彼は遊園地の名前を検索バーに打ち込みながら、また静かに付け足すように言った。
「今はまだ会いたいなぁって思う寂しさがあったとしてもさ、その気持ちは形を変えていくよ。俺がそうだったように。小夜香ちゃんが俺と結婚して、子供が産まれてお母さんになった時、また小百合様が恋しくなると思う。でも同時に・・・こんな風に面倒見ててくれたのかなって考える機会にもなると思うよ。小夜香ちゃんが産まれて、生きていてくれたら家族はきっと増えていくし、想像もしてなかった幸せを味わえたり、子育ての難しさに一緒に奮闘していけると思う。・・・長い歳月の中で、今の自分が抱えてる『寂しい』より、もっともっとたくさん得られる気持ちがあるはずだよ。だからさ・・・」
咲夜くんから他に何も聞こえてこなくて、心から私に向けての本音を話してくれているのだと分かった。
もう寂しいと思わなくていいよ、かな?
私が何となく彼の次の言葉を予想すると、咲夜くんは私の手をぎゅっと掴んだ。
「別に寂しいって思うことは悪くないし、いつでも思ってていいんだよ。」
意外な言葉に、咲夜くんを見つめ返すと、彼はまた柔らかく微笑んだ。
「大人っぽく振舞ってても小夜香ちゃんはまだ17歳じゃんか。会えなくなった家族を寂しいって思うのは当然だよ。ほら・・・いつか話さなかったかな・・・過去の出来事とか、自分のどうしようもない気持ちを抱えたらさ、一緒にいることは出来るし、寂しさを紛らわせてあげることは出来るよ。こうしなきゃとか、こういう自分にならなきゃとか、そういうのないからさ。俺は何も小夜香ちゃんに、こういう彼女であってほしいとか、こういう妻になってほしいなんて押し付けるつもりないよ。小夜香ちゃんは小夜香ちゃんでしょ?」
ああ・・・そっか・・・
「ふふ・・・ありがとう。咲夜くんお父さんと同じこと言ってる。」
「え、そなの?」
また二人で笑い合いながら、咲夜くんとこれから先の予定の話をたくさんした。
桜が咲く頃になったら、ちょうど付き合って1年になる。
心の声が聞こえていてもいなくても、咲夜くんは咲夜くんで・・・私を大事に思い続けてくれる大切な人。
その後二人で休みの予定をたくさん立てて、夕飯は私が手料理を振舞おうと思っていたけど、お父さんが一人でいると寂しいと思うからと、帰ることを勧めてくれた。
それでも咲夜くんは心の中で、『嬉しい。もっと一緒にいたい、帰らないで。ここにいて。ずっと一緒に居たいよ。』と我儘を言う子供のような本音をひた隠しにしていた。
咲夜くんの優しさと気遣いと、我儘を隠して笑う姿が愛おしくて、帰る前にたくさん抱きしめていっぱいキスした。
二人して家を後にして、まだ明るいうちまでの道のりを一緒に歩いてくれて、たった10分の帰り道を大事に手を握っていてくれた。
咲夜くんは時間を問わず、部屋を訪ねた時は必ず私を家まで送ってくれる。
「ありがとう、送ってくれて。」
「ううん・・・。ねぇ、寝る前にまた電話かけてもいい?」
「うん、日が変わる前くらいにまた連絡入れるね?」
私がそう言うと、咲夜くんは小さくため息をつきながら、優しい笑みを落とした。
「愛してるよ。」
その言葉と一緒に、私が返事を返すよりも早く、そっとキスしてくれた。
胸の中がぎゅっとなって、嬉しくて抱きしめた背中を強くつかんだ。
それから見えなくなるまで咲夜くんを見送って、何度か振り返る彼に手を振った。
それからお父さんと夕飯を拵えて食べて、お風呂を上がった後にリビングで寛いでいると、お父さんは書斎から戻って言った。
「小夜香、もう半日程経ったと思うし・・・確認していいか?」
「あ・・・うん。・・・じゃあね~なんか質問しちゃおっかなぁ・・・あ!そうだ、小百合さんと結婚したら、子供は男の子か女の子どっちがほしい?頭の中だけで答えてね。」
「ああ、わかった。・・・・・・・・」
向かいの椅子に腰かけて、じっと私を見つめ返すお父さんに集中した。
けど何も絵は見えないし、声も聞こえてこなかった。
「・・・・聞こえてこないし何も見えないや。ホントにもう無くなったみたいだね。」
「そうか・・・。」
お父さんは安堵のため息をついて、念のため体の不調がこれから起きたりしたら、すぐに言うようにと付け加えた。
自分のコーヒーを淡々と用意するお父さんの背中を見つめながら、今日咲夜くんと話したことを思い返していた。
「お父さん」
「ん?」
「さっきの質問・・・どっちって考えてたの?」
「ふ・・・小夜香の予想はどうだ?」
「ん~~・・・男の子かな?もう娘の子育てはしたもんね?」
「なるほど・・・。正解は・・・両方ほしい、だな。」
「うふふ!そうなんだ♪え~そっかぁ。でも嬉しい。弟も妹もほしいもん♪」
私がそう言うと、お父さんは目を細めて幸せそうな笑顔を見せた。
「私も~・・・男の子も女の子も・・・どっちも産みたいなぁ。」
お父さんとそれから、お互い結婚してから叶えたいことを色々話し合った。
咲夜くんは私に、寂しいと思う気持ちはこれから形を変えていくと教えてくれた。
大変なことも幸せなことも、自分が予想出来ないことが巻き起こっていくと思う。
白夜さんは私に、過去の真実を追求するより、これから家族と生きていく未来を、大事にしてほしいと思ってくれていたのかもしれない。
どういう人なのか、私もお父さんも本質的なところはわかってないかもしれないけど、でも私はきっと家族思いの良い人だったと思う。
だって白夜さんの子供である咲夜くんも美咲くんも、家族思いで優しい素敵な人だから。