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【番外編】ドゥーパント姉妹の末路 おまけ

短いです。

余談は妹の義母は共感力高め、読唇術使えます。

 


【ドゥーパント元夫人の場合】


 家族と引き離された元夫人は年が年だけに娼館でも扱いにくく早々に娼婦の召し使いになったが、気位が高く何もできないためランクを落とされ続け、一年もしないうちに国内の最低ランクの娼館にまで落とされた。


 そこでは年齢も見た目も関係なくなったので強制的に体を売らなくてはならなくなり、元夫人はどんどん心を病んでいった。

 耐えられなくなり何度も元夫や王妃様に救済を願う嘆願書のような手紙を送ったが返事はなく、失意の果てに流行り病を拗らせて呆気なく逝った。



 ◇◇◇



【エネレッタ・センダースの場合】


 一人センダース侯爵家に戻った妹は、結婚当初温かく迎え入れてくれていた義親達から冷たい仕打ちを受けることから始まった。

 当主夫人として用意された豪華な部屋は使用人未満の物置部屋に変わり、華やかなドレスは使用人よりも質素で肌触りが悪い服に変わり、夫とも離ればなれにされた。


 義母にはお前のせいで降爵されたと暴力付きで詰られた。

 義父にはお前が息子を誑かしたせいで誤った道を選ばされた。私が選んだ令嬢ならすべてうまくいったのに!とエネレッタよりも格下でブスの令嬢よりも下だと蔑まれた。


 最初はエネレッタも反抗していたし王妃様や家族に救助の手紙を送っていたが何回かに一回は義親に見つかり目の前で破られ踏みつけられた。

 それが自分の心に見えてしまい夫の名前を叫んで泣いたが夫が助けに来ることはなかった。


 ドゥーパント家から連れてきた使用人が手紙をこっそり送ってくれていたが使用人同士のいじめで心が折れてしまいある日突然邸からいなくなった。

 夜逃げと思われるがエネレッタに相談なく消えたため(相談されても何もできなかったが)行方不明のまま伯爵家は探しもしなかった。


 カイゼルにも手紙を送ったが手紙を送ってくれる使用人がいないことを知らなかったエネレッタは義母にその手紙を見られてしまい『この売女が!恥晒しが!』と何度も扇子で打たれ額や手の甲が傷だらけになった。


 そのうち食事も満足に食べさせてもらえなくなり、空腹に耐えきれずキッチンに向かうと知らない人達が邸を闊歩していた。


 どうやら彼らは親戚で本館に住むらしい。

 なぜ?と思っていたら夫が知らない女といかにも親しげに歩いていた。


 それを見た瞬間怒りが頭を支配し気づいた時には夫の隣にいた女を殴っていた。

 本能で女が夫の愛人だと見抜いたエネレッタは顔に傷がつけば価値がなくなる。わたくしの勝ちよ!夫は誰にも渡さないわ!!と顔を中心に殴り爪を立て引っ掻いた。

 いきなり始まった修羅場に大騒ぎになったが従者がエネレッタを気絶させたことで収束した。


 あの女はセンダース侯爵家の親戚筋で、夫の子供を生む道具として選ばれたらしい。

 義母に散々言われたので自分が子を生めないということは知っていた。だから後継者を生める女が必要なのは理解できる。できるが受け入れられるかどうかは別の話だ。


 わたくしはドゥーパント公爵家の娘。

 夫人であるわたくしに一言の相談もなく勝手に選ぶなんて許されるはずがない。それを抗議すれば義母に何を言ってるの?と冷たく見下された。


「阿婆擦れで石女のあなたに聞く価値も資格もあるわけないでしょう?」

「(ですが、わたくしは正妻ですわ!)」

「伯爵ならまだ価値がありましたけど今はもう子爵なんですのよ。あなたの家」


 そこで実家が更に降爵して子爵になっていたことを知った。ということは前の彼の婚約者よりも親戚筋のあの女よりも爵位が低いということになる。


 そこでエネレッタの心がパキン、と折れた気がした。



 物置部屋には明かり取り窓くらいしかなく外を見ることはできない。だがたとえできたとしても見ることはできなかっただろう。


 外からは楽しげにはしゃぐ子供の声が聞こえる。夫は廃嫡されたから当主にはなれない。だから一時的に親戚が当主になるのだと使用人達の噂話で知った。


 その夫婦が子供を生んだのかもしれないし、夫の愛人が子供を生んだのかもしれない。


 前に夫にお願いだから子供は作らないでとお願いしたことがある。子供ができてしまったら自分はもっと惨めな立場になるからこれ以上追い詰めないでほしいと。

 だが夫は『これはセンダース家の一員としての義務だから』と取り合ってくれなかった。


 あなたの愛人にわたくしの居場所を奪われるかもしれないのに。エネレッタよりも家の存続の方が大事だと切り捨てられた瞬間だった。


 あれ以降夫と会えていない。元々滅多に会えないから結婚したのは夢だったのかもしれないと思うくらいだ。


 使用人が今日の食事を投げ込む。固く石のような小さなパンと零れてほとんどなくなったスープだ。具は最初からない。

 唯一の味方だった使用人がいなくなってからターゲットをエネレッタに移したのは一目瞭然だった。


 ああ、これが夢だったらいいのに。

 わたくしはどこで間違ったのだろう。


 夢くらいは社交界で華々しくダンスを踊れないかしら。

 綺麗なドレスを着て理想の旦那様が隣にいて誰もが見惚れるようなダンスを踊るの。


 考えれば考えるほど自然と涙が零れ落ち、嗚咽が漏れた。


 どうして綺麗なドレスを纏い優雅に踊る姿がメイアになるのだろう。

 理想の夫でジュリアスディーン様を思い浮かべたせいだろうか。


 自分と同じことはされていないはずだが、メイアを思い出したら同じような酷いことをしてきたのだとふと理解してしまい、それが無性に悲しくて胸が苦しくてつらくて涙が止まらないほど申し訳なくて泣くことしかできなかった。







読んでいただきありがとうございました。

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