プロローグ
よろしくお願いいたします。
「メイア!一ヶ月後、いや半年後想い出のこの場所で、この時間に再び会ってくれ!俺は変わるから!絶対お前を幸せにしてみせる!!」
そこにいた人々は向かい合う若い二人を興味津々で見ている。メイアという令嬢も叫んだ令息もどちらも見目麗しい貴族だ。
もしやこれから恋愛劇でも始まるのか?と近くの者達は注目し、令嬢に年代が近い少女達が黄色い悲鳴をあげた。
誰もが令嬢の反応に注目した。頬を染め頷くのか、感情が昂って声高らかに応えるのか、はたまた怒り狂い半年など待てるかと令息を責めるのか。
自分に関係ない美男美女だからこそ、周りは演劇を見るかのようにハラハラと見守った。
じっと熱っぽく見つめる令息に固唾を呑んで見守っていれば、令嬢は最初は驚いた顔をしていたがみるみるうちに虚ろな目になり、そして溜め息で返して令息に背を向けた。
何も返さない令嬢に周りは肩透かしを食らい『つまんねぇの』と誰かが呟いた。黄色い悲鳴をあげた少女達も困惑の表情で固まっている。
もしかして令息が人違いでもしたのか?それとも令息が勝手に一目惚れして知り合いでもないのに叫んだとか?
どちらにせよ告白現場がちょっと恥ずかしい、なんとも言えない空気に変わった頃令息が勢いよく叫んだ。
「約束したぞ!半年後のこの時間に俺は再びここに戻ってくる!!そして一皮も二皮も剥けた素晴らしい俺を見て結婚してくれ!!」
そう叫び、令息は令嬢に背を向け颯爽と去っていった。その背中はとてもご機嫌で令嬢の顔など見ていないような素振りだ。
解散した二人を見て周りは結局何も始まらないのかとガッカリして去っていく。二人を見守るための静けさだったが再び活気を取り戻した。
再び動き出す人々の中、そこに紛れる形で令嬢は悲しそうに顔を歪めまた溜め息を吐く。
そこは街の中心で恋人達が多く集まる聖堂前広場だった。
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