漫才「関西で遭難した自称山ガール」
大学祭の一環として開催されている漫才コンテストに応募した、関西の女子大生二人による漫才という想定です。
ボケ役は酒豪の台湾人女子留学生で、ツッコミ役はそのゼミ友の日本人女子大生です。
漫才コンテストの開催されている大学のキャンパスも、関西にあるという想定です。
二人「どうも!『国際交流』というコンビ名でやらせて頂いています!」
ボケ「御覧の通り、女子大生二人でやっているんですけどね。コンビ名でもお分かりかと思いますが、私達って国籍が違うんです。」
ツッコミ「そうそう!真っ赤なチャイナドレスでお気付きかも知れませんが、この子って台湾生まれの留学生なんですよ〜。」
ボケ「はいっ!メイドイン台南で御座います。」
ツッコミ「そして私が、『国際交流』の日本担当で…」
ボケ「大寒生まれの休学生!」
ツッコミ「同じように言わなくって良いから!そもそも、どういう事?大寒生まれの休学生って?」
ボケ「だって貴女、一月二十日生まれじゃない。二十四節気だと、一月二十日は大寒になるんだよ。」
ツッコミ「それは分かったけど、私の誕生日を大々的にバラさないでよ。」
ボケ「これだけお客さんがいたら、一人位は誕生日プレゼントを贈ってくれるかも知れないよ。」
ツッコミ「そういう問題じゃないの!最近は個人情報の取り扱いも厳しくなっているんだから…」
ボケ「だったら誕生日も変動相場制にしちゃったら?気分次第で誕生日を変えちゃうの。そうしたら、アプリの誕生月特典を毎月使えちゃうね!」
ツッコミ「それってトラブルになりそうだから、よしなよ。それはそうと、休学はやめてくれない?休学なんてしていたら、こんな所へノコノコと顔なんて出せないし。」
ボケ「じゃあ、大寒生まれの留年生!」
ツッコミ「留年もしてないって!貴女と同じで順当に進級しているよ。」
ボケ「だけど日本の大学生って、わざと休学や留年する人が多いって聞くよ。学生生活が楽し過ぎて、単位落としちゃうんだって。貴女もやってみたら?」
ツッコミ「そんな理由で留年したら、親に怒られるよ。そう言えば貴女、こないだ実家の親御さんにこっぴどく叱られたんだって?」
ボケ「そうなんだよね。物凄く心配かけちゃった。」
ツッコミ「一体何をやらかしたの?大酒飲みな貴女の事だから、どうせ酒の席の失敗だと思うけど。」
ボケ「恥ずかしい話だけど、遭難しちゃったんだよね。」
ツッコミ「なぁんだ、遭難か…えっ、何それ?私、聞いてない。貴女、本当に遭難したの?」
ボケ「はい、そうなんです!」
ツッコミ「そんな使い古されたボケ方しなくて良いから…とにかく、遭難した時の様子を詳しく聞かせて。」
ボケ「登っている途中でフラフラになっちゃってね。頂上が見つからなくて困っているうちに、頭がグルグル回ってバタンキュー。」
ツッコミ「疲労と高山病が原因かな。割と本格的な遭難じゃない。」
ボケ「それで意識が半ば朦朧とした私に、親切な登山客が肩を貸してくれてね。その人がいたから、何とか下山出来たんだ。」
ツッコミ「その登山客に感謝しなきゃね。それより私は、貴女に登山の趣味がある事に驚いたわよ。」
ボケ「私って、こう見えても山ガールなんですよ。」
ツッコミ「山ガールって事は、アウトドアジャケットとかトレッキングシューズとかを完全装備したんでしょ。今のチャイナドレス姿からは、とても想像もつかないなあ…」
ボケ「ううん、この格好で登ったよ。」
ツッコミ「はあ?じゃあ、ピッケルは?アイゼンは?」
ボケ「そんな嵩張る物なんか持ってないよ。お財布とスマホだけ持って登ったんだ。」
ツッコミ「山を舐めてるの、貴女?そりゃ遭難するわ!」
ボケ「ここから近くの山だからって、つい油断しちゃったんだよね。」
ツッコミ「近くの山でも舐めたら駄目だって…それで、どこの山に登ったの?高野山?それとも生駒山?」
ボケ「もっと近くだよ。」
ツッコミ「じゃあ、金剛山とか岩湧山とか?」
ボケ「そんな遠くじゃ交通費が掛かっちゃう。もっと近い山だよ。」
ツッコミ「えっ、もっと近い山?一体何処で遭難したの?」
ボケ「堺市堺区の大浜公園にある蘇鉄山。」
ツッコミ「蘇鉄山って…七メートルもない築山じゃない。あんな所でどうやって遭難出来るの?」
ボケ「大浜公園で桜を見ながらお酒を飲んでいたら、飲み過ぎちゃったんだ。酔いを覚まそうとして散歩していたら、蘇鉄山に登っていたの。それで道が分からなくなってフラフラしているうちに、頭にアルコールが回ってバタンキュー。」
ツッコミ「ただ単に酔い潰れただけじゃないの!そりゃピッケルもアイゼンもなしで登れるはずだわ!」
ボケ「でも私、ちゃんと遭難認定証を発行して貰ったよ。蘇鉄山で貰える登山認定証と同じフォーマットなんだね。」
ツッコミ「本当だ、『登山』がボールペンで『遭難』に書き直されている…」
ボケ「係の人も笑顔で褒めてくれたよ。『こんなの初めてですよ。』って。」
ツッコミ「それは呆れているんだって!」
二人「どうも、ありがとうございました!」