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Toshidennsetu Kitan/トシデンセツキタン  作者: 影城 みゆき(怪奇作家)
都祠電説忌譚
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弐話:みこと開き 其弐

書くネタ尽きました。

作者 三毛猫

ー弐ー


 「金田一かねだもとさん、何であの子達は注意勧告だけにしたんですか!?スリはしてなかったとはいえ、札束を盗もうとしたことは事実なんですよ!」

『そう言われてもねぇ……霊能者が毎日毎日怪異を捕まえてたら前科無しの怪異なんていなくなっちゃうからね。それよりみことちゃん、霊能活動を積極的に行うのはいいけど節度は守ってくれないとさぁ……今回は結果的に問題なかったけど、下手したら一般の方々に見られてた可能性だってあるんだから』

 「……はい、反省してます。次からは連絡を優先します」

『それと、はるま君……だっけ?その子の事情聴取よろしくね。まー本当はする必要ないんだけど、これからの事も踏まえて、ね。じゃ、よろしくー』

 プツッ、ツー、ツー、そんな音を鳴らしてスマホの通信は切れた。

まだ報告したいことがあったんだけどなぁ。

あの人って相変わらず会話一方的だよなぁ、なんてことを思いながら、私は鳥居をくぐる。

「電話終わったの?相手はみことの上司か?」

 「うん、そう。金田一さんって人。私の事務所の所長さんだよ」

 私は投げかけられた質問にそう応えた。

質問者は賽銭箱の上に腰掛けていた。

彼ははるま、今から私が事情聴取をする相手……って、

 「なんてとこに座ってんの!?!はるま、早く、そこどけてよ!!」

「罰当たりってのは分かってるけど……座るとこないからさ、この神社」

 私達は今、霜降地区と盂蘭盆地区にまたがる【風間山かざまやま】の中腹【風間明神社かざまみょうじんしゃ】にいます。

此処は神社としての信仰の他、磐戸の北東の方角を見渡せる絶景スポットとして知られている。

北東には【霜降城跡しもふりじょうせき】や【神奈ケ山(かんながやま)】、【睦港むつみこう】といった磐戸の象徴的な地区が見える他、東の端の方には県庁所在地の【早苗さなえ地区】の近未来的(田舎から見て)な建造物郡がやや確認できる。

夜は満天の星空の下、磐戸の美しき夜景を眺めることが出来る、まさに名所。

正確には名所になるはずの場所だった……といったとこかな。

 数年前にはこの神社周辺は観光名所にするための整備が行われていた。

しかし、工事中のトラブルや財政難などでその計画はおしゃかになってしまったのだ。

そもそもの話、この神社に登るための登山道が不便なところにあり、もし観光計画が上手くいっていたとしてもそれほどの成果は出なかっただろう。

ま、私にとっては最高の名所に違いないんだけども。

 そしてはるまが言うように此処には座るとこがない。

境内はあまり人が訪れないせいか、落ち葉や枯れ枝などで荒れ果ててしまっている。

私は昼休憩の際、この神社のやたら段差の険しい階段に座って、一人ゆっくりと絶景を眺めるのが日課だ。

「それ僕のこと言えないじゃないか。神様の通り道塞ぐ方が失礼だろうに」

 「いやいや私ちゃんと端によけてるから。神様への信仰の証に座る方がよっぽど失礼だよ」

「投げ銭ならもうしたし、それに……もう神性の霊気もないから」

 この神社の土着信仰はとっくの昔に果てている。

今やただこの神社の名物の風車のみがカラカラと虚しく音を響かせるだけ。

そのもの寂しさがより一層景色の美しさをきわだたせてくれるわけだけどね。

 「にしても凄いね、はるまの【霊能探知】。【霊感】とかとは比べ物にならないね」

 なんやかんや言いつつも私は幽真の隣に座ってそう言った。

石段に座るのもお尻痛くなるし、多少の無礼ぐらい許されるよね?

「その呼び方止めてくれよ。そんな大層なものじゃないし」

 「いやいやぁ、そんな謙遜しなさんなって」

 門廻幽真は特別な霊感を持っている。

通常、人間は霊感の強さに応じて怪異が見えるか見えないかが異なってくる。

これは霊能と深く関われば関わるほど高まるが、幽真はレベルが違う。

ある程度本人の周辺の霊気を察知出来る他、一度感じた霊気を見分けることが出来るらしい。

今日私を見つけたのも昨日手を握った時に感じた霊気を追ってきたからだそう。

うーむ、羨ましい能力。

私にもあれば活動が楽なんだけどなぁ。

「謙遜はしてないさ。実際のところあまり使い勝手は良くないよ。正確な位置までは分からないし、霊気が高い場所だと身体の負担が大きいし……磐戸に着いてからはなんか調子悪いからね」

 「あー、それは【霊場】だからだよ。磐戸市内って何が要因なのか、日本の中でも相当霊力の高い地域なんだよね」

 平成の始めの頃、突如として磐戸市全域の霊能濃度が高まる事案が発生した。

それによって磐戸は他地域と比べて頻繁に怪異事件が発生するようになった。

『山に囲われているから霊力が溜まりやすい』だの、『名前が天岩戸あまのいわとと近しいことから怪異の集まるところとなっている』だのと霊能者や怪異の間で長らく議論が交わされてきたが、今でもそのはっきりとした原因は分かっていない。

自然の霊能の対処には忌み付けを理解することが最も有効であるから当然その調査が必要になってくる。

そのため、この磐戸市には多くの霊能者がやってきている。

私の所属する【金田一心霊探偵事務所】もその一つだ。

所長の金田一さんを始めとした個性豊かな面々が日々事件の調査や見回り等の活動を行っている。

……どーせ私は入りたてほやほやの新人なんですがね。

 「多分はるまの探してる尾尻って人もそういう調査で来てるんだと思うよ。ごめんね、何の力にもなれなくて」

「仕方ないよ。尾尻は陰に隠れがちだから。にしても二日間で何の成果も得られないってどんだけ表に出てきてないんだか。もう少しで高校生活始まるから探す時間も少なくなるしなぁ……」

 「そういやさ、はるまってどこの高校なの?」

「神奈ヶ山高校だよ。みことは?」

 「わぁお……偶然ってあるもんだねぇ。私も神奈ヶ山だよ。はるまと違って中等部勢だけど」

 こんな偶然があるとは驚きである。

いや、待て。

冷静に考えよう。

霊気探知持ちと同じ学校だと?

これは偶然というより運命なのでは?

今より親密な関係になればこれからの活動も楽になるのでは?

 よーし、落ち着け私。

まずは媚売ってくのが妥当かな。

 「……はるま君って、いつから霊能界に関わり始めたんですか?」

「突然どうしたんだよ。敬語なんか使ってさ」

 「特に意味なんて無いですよぉ。何となくです、何となく」

 丁寧な口調での質問は媚の常習手段。

その上での身の上話の強要というのは自分自身が求められているという感覚から相手に優越感を与えることの出来る必殺技!

そして私は聞き上手!!(だと私自身は思っている)

これで落とせない人間など居るはずがない!

「何となく、ねぇ……僕は幼い頃から怪異が見えてたから関わり始めは生まれた瞬間とも言えるだろうけど、本格的に霊能活動を始めたのは二年前になるかな」

 「……まじか」

 ここで幽真がそんな大先輩だなんて予想する人おる?

流れとしては『はるまは霊能界に入りたて→それでいて霊感が強いなんてと褒めちぎる→完璧に堕ちて完全勝利』を想定してただけに対応しようがないじゃないか!!

「みこと、多分協力を仰ぐ為に僕を持ち上げようとしてたんだろうけど……流れ下手くそすぎない?堕ちる人なんて居ないと思うよ」

 「……ばれてたんすね、私の作戦」

「ばれるとかそういう次元の話じゃなかったけどね。ちなみにみことはいつからなの?」

 「怪異を見たのが一年半前で霊能者デビューが数ヶ月の素人です、はい。まるで熟練者のように気取ってしまい、はるま大先輩には申し訳なく思っています」

 考えてみると気取れてもいなかった。

初っ端から捕まってるとこ助けられたんだった。

「そんなに縮こまらないでよ。霊能界の知識はみことの方が上だろうし」

 「二年も関わってるはるまの方が私は詳しいと思うけど」

「あくまで祓い屋だからね、あまり詳しくないんだよ。それに、みことの【祓詞はらいことば】は精密だったから、僕より霊能の扱いも上手いんじゃないかな?」

 「詳しくないって嘘じゃんか!祓詞知ってんじゃんか!」

「ほれほれ、逆ギレ止めなさいな。祓詞自体は霊能初歩ですぞ」

 「あやし言葉止めい!私は頑固なお婆さんじゃない!!」

「泣き喚く子供をあやしてるつもりだったんだけどな」

 「ぶふっ!!こ、降参、私の負け。はるま強すぎるよ」

 会話自体は下らないのだが、それを真顔で真剣に続ける幽真が面白すぎた。

途中からお笑いコントになった会話を本題に戻す。

 「はぁ、上手くいけると思ったのになぁ。はるまレーダーを使えば活動が楽になるからラッキーだと思ったのにな」

「僕はみことの道具か何かなのか?それでなんだけど、別に協力はしてもいいよ」

 「まじですか!?流石はるま大先生!私が予期しないことをやってのける!そこに痺れる!!憧れるぅ!!!」

「みこと、もう媚びなくていいよ。後地味に先輩から先生にランクアップさせるなって。で、何故にジョ〇ョ構文?」

 「私、ジ〇ジョ好きなもんでして」

「ジョ女子ってわけだね」

 「はるま、それスベってるから。……でどうして私の手助けをしてくれるわけで?」

「なんかギャグへの当たりが強い気がするけどまあいいや。その程度の協力なら大したことじゃないから喜んで手助けするさ。そのついでに尾尻の手掛かりを見つけられるかもなって思ってさ。それに昨日は親切にして貰ったわけだからね」

 幽真は親切すぎる。

出会って間もない私とこんなに親密な会話をし、それでいて手助けをしてくれるなんて普通そんなに気安い人間はそう居ないだろう。

確かに私は距離感近いだのと言われがちだが、ここまで馴れ合うのが早いのは初めてのことだ。

それも幽真の性格が大きく関わっているに違いない。

 それに幽真は私に恩がある体で話を進めていたが、昨日のあれがそれほどの価値を持っているとは私には思えない。

私は私を避けようとして壁にぶつかった少年を介抱しただけ。

それも祓詞を唱えるという直接的に何の効果すらないことを行ったまでだ。

だというのに、幽真は私をあの三人組から助け出し、大事なアレを返し、その上で私をこれからも助けてくれようとしている。

どれもこれも幽真が優しすぎるからだ。

 そして、私とどことなく似ているからだ。

性格も境遇も何もかも違うのにどこかに通っている、そんな気がしてならない。

会話が弾むのもきっと私達が似ているから、そう思えてならない。

 だというのに私は何だってんだ?

幽真に対して何も出来てないじゃないか。

それでいいのか、みこと。

どこか似ている優しい人を助けなくていいのか?

私に今出来ることはないのか?

いや、ある。

 私は賽銭箱から立って、階段前の鳥居に向かう。

鳥居の奥には磐戸の町並みと日常が広がっている。

「みこと?突然立ち上がってどうしたんだ?」

 「私に協力してくれるっていうのにお礼が無いなんておかしな話だよね」

「そんなことないさ。お礼なんて求めてないよ」

 「いや、私の精神が許さないんだよ。何かしてもらうなら、何かを返さなきゃって。だから……その尾尻っていう霊能者の代わりに私達が、金田一心霊探偵事務所が妹ちゃんと怪異の縁を切る手助けをする」

 結局私自身で出来ることは一つもない。

けど、私を通して助けられることなら確かにある。

尾尻って人を探す必要は幽真にはない。

私が、私達が幽真を助ければいいんだから。

「それってみことが勝手に決めていいことなのか?」

 「いいや。ほんとは許可とか手続きとか、色々な作業はあるんだけどね。決めるのは金田一さんなんだけど多分大丈夫。だって……これは借りを返すだけ、恩返しなんだもの!今日の分とこれからの分、私が出来るのはこれぐらいかな」

 お礼ではなく恩返し。

御恩と奉公、その関係性なら私だって用意できる。

 「だから、これからよろしくね!はるま!!」

 私は幽真の方を振り返ってそう言う。

私なりの満面の笑顔を幽真へ向けて。

 同じくして、幽真は私の方へと走り出す。

「みことっ!!手を掴んでっ!!」

 やけに焦った様子で荒々しく叫ぶ。

よろしくの握手かな?

そう思って私は呑気に右手を伸ばした。

 その時、私は後ろに引っ張られる。

背後は階段、ようやく私の身に起きている危険を認識し、私は体を立て直そうとした。

動かない、余程強い力で引っ張られているようだ。

幽真が私の右手を引っ張ったことにより、後ろの様子を確認することが出来た。

 鳥居の奥には《《扉があった》》。

観音開きの二枚扉がどこまでも続いていたのだ。

そして、そこから現れた手が私を引き込もうとしている。

手首までしか無い無数の青白い手。

切り口の部分は青紫のオーラによって隠されている。

 「離せよっ!!このっ!!」

 見える範囲の手を振り払おうとするが、手は動じる様子を見せない。

「ごめん!!耐えきれない!!」

 いつの間にか手は幽真にも絡みついていた。

私達は引力に抗えず、扉の中へと引き込まれる。

 私の目の前で、扉が閉じるのが見えた。

次々と過ぎた扉が閉じていく。

私はただ幽真の手を離さんと強く握ることしか出来なかった。

急いで書き上げたのでミス多いと思われます。

訂正などの指摘をよろしくお願いします。

作者 三毛猫

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